刺さるコンテンツを洗い出す、カスタマージャーニーマップ活用方法

適切なコンテンツを作る上で、まず必要になるのがターゲット像。彼らの属性や生活スタイル、情報ニーズなどを詳細に理解することは、コンテンツを作るために欠かせない。

しかしそれだけでは十分でない。彼らが求める情報やコンテンツは、購買までの間に移り変わるため、それらを時系列で把握しないと必要なコンテンツを洗い出せないからだ。

そこで必要になってくるのがカスタマージャーニーマップ(CJM)。目的達成に向けて、見込み客がどのような行動をたどるのか?その間の課題は何か?といったことを、CJMによって整理する。

購買行動の全体像と課題が明確になれば、購買に導くために必要なコンテンツを明らかにできるはずだ。

今回はスターバックスを題材にしてCJMを設定したというワークショップの内容を参考にしながら、コンテンツマーケティングにおけるCJM活用の方法を紹介していく。

今回のペルソナ

ここでは、2人のペルソナを想定した上で、それぞれに対して必要なコンテンツを洗い出すためのCJMを作成していく。ペルソナは、フェイ・ウィーバーという46歳の女性と、リラ・チャンという20歳の女性だ。

フェイは2人の子供を抱えるワーキングマザー。仕事が忙しく、出張で頻繁に移動している。今回CJMで設定する彼女のゴールは、「手軽においしいコーヒーを買うこと」。

フェイのペルソナ

リラは学生で、社会活動やサステナビリティ、人権への関心が非常に高いという。彼女のゴールは、生活費の足しにするために「バイトを見つけること」だ。

リラのペルソナ

以下が今回埋めるCJMのひな型となる。ユーザー行動を詳細に洗い出すUX向けのCJMと異なり、コンテンツを洗い出すことを目的としたコンテンツマーケティングのCJMは、非常にシンプルなのが特徴だ。

CJM入力欄1:ユーザーの識別

まずペルソナに続く列には、「ユーザーの識別」欄(User State)がある。これは企業がそのユーザーを個人として識別できる状態かどうかを示す。

たとえば会員サイトにログインするなどして、企業側が個人を識別できる状態であれば「Known」、そうでなければ「Unknown」となる。

仮に「Known」であれば、ユーザーごとにコンテンツを出しわける余地が広がるだけでなく、ユーザーの行動情報を収集することも可能になるだろう。

ただ今回の2人のペルソナについては、ジャーニーの中に個人特定につながる行動は含まれていないため「Unknown」とされていた。

CJM入力欄2:ジャーニー

次の「ジャーニー」欄には、ユーザーがゴール達成までにたどり得る道筋を入力する。道筋の区切り方は、売り手目線の購買ファネルごとでも、ユーザーのタスクごとでも構わない。コンテンツの洗い出しに向けて、最適なものを選ぶべきだ。

今回は2人のゴール達成までの道筋を、タスクベースで区切ってみよう。フェイのゴールは「コーヒーを買うこと」、リラのゴールは「バイト先を見つけること」とした場合、それぞれを複数のタスクに分けると以下のようになる。

CJM入力欄3:チャネル

次の「チャネル」欄には、ゴール達成までのジャーニーで触れるチャネルを挙げていく。ブログやSNSといったありがちなチャネルにとらわれず、パンフレットやクーポン、包装、ポスターといった印刷物や、イベントや電話なども含め、あらゆる可能性を検討する必要がある。

フェイとリラが触れ得るチャネルの一例は以下になる。

CJM入力欄4:コンテンツ

最後に埋める列が「コンテンツ」欄だ。これもブログ記事やSNSの投稿といったありがちな形式にとらわれず、ユーザーの情報ニーズをベースに柔軟に発想したほうが良いだろう。今回の場合は、「従業員教育」までコンテンツの範疇として含めている点が目につく。

今回紹介したCJMは非常にシンプルな作りだったが、扱いに慣れていけばコンテンツフォーマットや評価指標、各アクションを起こす動機(「喉が渇いた」「生活費を稼がなくては」等)といった他の項目を付け加えても良いだろう。

  1. ターゲットとなるペルソナもしくはセグメントを決める
  2. パーソナライゼーションと、それによるユーザーデータ取得の可能性を見極める
  3. コンテンツによって解決できるユーザーゴールを決め、複数のタスクに分ける
  4. ユーザーが接触するチャネルを洗い出す
  5. 各タスクを解決するコンテンツのアイデアをブレストする

ペルソナによって顧客像を明確にしつつ、CJMによって彼らのゴールとタスクを可視化することで、ユーザーに刺さるコンテンツを抽出しやすくなる。しかし、いたずらに複雑なCJMを作成したために結局どんなコンテンツが必要なのかが分からなくなるというのでは本末転倒だ。その意味で今回紹介したCJMは、必要なコンテンツを抽出するという目的に対して非常に使いやすいものだ。

CJMを作成する際に間違いやすいポイントの一つは、可視化する対象のユーザーのゴールを全て実現しようとしてしまうことだ。企業によるビジネスゴールの達成にもつながるユーザーゴールを選ぶ必要がある。そうしないとユーザーに刺さりはするものの、ビジネスゴールの達成に貢献しないコンテンツが出てきてしまうだろう。

執筆者:三友直樹(日本SPセンター)

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