企業発信でも愛着を持ってもらえるFacebook施策とは?トイレットペーパーブランドによる好事例

ますます活用が進むコンテンツマーケティング。しかしあらゆる商材と相性が良いかといえばそうではない。

そもそもコンテンツによって見込み客を購買に導こうとする施策であるため、商品検討の時にコンテンツが求められやすいジャンルであるほど、一般的には相性が良いといえる。

たとえば家電のような耐久消費財や住宅であれば、ブランド認知の後にも事例や機能、他の商品との違いなど、さまざまな情報が求められる。従来の広告だけでは満たしづらい情報ニーズであるため、コンテンツマーケティングが必要とされる領域だ。

反対に一筋縄ではいかないのが、清涼飲料水や生活用品のように、コンテンツによって説明する余地が比較的少ない商材だ。

こういった商品をブログ記事や商品サイトなどを読み込んだ上で買うという人は多くないだろう。店頭で見つけて初めて検討する場合が多いはずだ。だから日用品メーカーのFacebook施策は、クイズやエンタメコンテンツなど、とりあえず「いいね」を獲得することだけを目的とし、顧客の態度変容につながるのかどうか疑問が残るものが多い。

ただこうした中で、2016年のContent Marketing World(米オハイオ州で開催)で評価された施策の一つが、トイレットペーパー向けのFacebook施策だった。

Selpak社というトルコの大手トイレットペーパーブランドが、コンテンツマーケティングアワードのFacebook施策部門にノミネートされていたのだ。見込み客によるブランド認知やロイヤリティーを著しく高めたのだという。

コンテンツによる検討の余地が少ないトイレットペーパーという商材に関して、同社はどのようなFacebook施策を行ったのか?詳細を紹介する。

企業発信の情報でも嫌がられないために

一般的なユーザーがFacebookを使う主な目的は、友人や知人とのコミュニケーションだ。企業発信の情報を閲覧する優先順位は、相当低いだろう。

そういった状況の中で、「トイレットペーパーブランドがFacebookに投稿する意味は何か?」という点を突き詰めて考えたことが、Selpak社による成功要因の一つといえそうだ。

もちろん自社のトイレットペーパーに関する情報を発信したわけではない。自社のトイレットペーパーを買うであろう人たちが抱える課題にフォーカスしたのだ。

まずはターゲット層の明確化。

同社は、女性を主なターゲット層としている。それは生活用品の購買決定権を持つのが女性であることが多いため。

またその中でも特に購買決定権を持つと判断したジェネレーションYとZの年代に狙いを定めたという(YとZがどの年代を指すかは国や時期などによって分かれる。この場合どの年代を指しているか不明だが、子持ち世代である20~30代以降を指していると思われる)。

情報発信のプラットフォームとしては、彼女たちが積極的に活用するFacebookを選んだ。しかしただの商品情報ではうっとうしがられるだけだ。そこで子育て世代である彼女たちによる関心事や悩みをメイントピックにしたという。

それが子供のトイレトレーニング。

トイレトレーニングを始めるのに最適な時期や、子供によるトレーニング方法の違いといった投稿をFacebookで発信したのだ。小さな子供を持つ母親であれば、誰もが知りたい情報だろう。しかも同社が提供している、お尻ふきとも関連している。その結果、「見込み客によるブランドへの愛着が深まった」と言うにふさわしい成果が出たようだ。

見込み客にアドバイス、コンテンツ発信にとどまらない工夫

Selpak社は、子供のトイレトレーニングに関する情報を発信するFacebookページ「Tuvalete Merhaba」を2015年2月にローンチした。

ファン数は順調に増えており、2016年4月に約9万8,000人、2017年3月には約13万人に上っている。またそれぞれの投稿には、平均して数十から数百もの「いいね」が付いているようだ。

ただこれらは広告を出せば増やせる数値ではある。本当に重要な点は、Facebookで接触したファンとのコミュニケーションが発生していることだ。

Facebookの投稿を閲覧したファンから、トイレトレーニングに関する質問が数多く寄せられたのだ。その数はこれまでに2,000件以上に上るという。

Selpak社は、こうして集まった質問に全て答えられたかどうかをKPIとして評価している。また回答は素人ではなく児童心理学者などの専門家が返すことで、本質的かつ詳細なアドバイスになるよう気を配っているという。

同社は、2017年にこの施策をさらにスケールアップさせる方針だとしている。

語るべき商品情報が少ない場合でも、「お客様の関心事」と「商品が解決できる課題」が交わる領域にフォーカスしたコンテンツによって、見込み客との接点を作ることができる。Selpak社による取り組みは、そんな施策の好例と言えるだろう。

しかし単なるFacebookでのコンテンツ発信だけでは、見込み客のロイヤリティーまでは至らなかったかもしれない。トイレトレーニングに関するコンテンツは他にもあるからだ。

さらに実際に集まった母親たちからの質問に答えるために、専門家まで用意するほど徹底した点が非常に優れていると言える。ウェブ上に同種のコンテンツが乱立する中で、専門家が提供する情報は見込み客からの信頼を獲得できるし、そのことがブランディングにつながるだろう。

一つ気を付けるべき点は、この施策で集まってきている人は、あくまで「トイレットペーパーに近いジャンルで悩みを抱える人」であって、「トイレットペーパーを今すぐ買いたい人」ではない、ということ。この施策だけで満足してはいけない。彼女たちをいかに購買までつなげるかが、コンテンツマーケティング戦略の肝であることを忘れてはいけない。

執筆:三友直樹(コンテンツマーケティングラボ編集長)

NEWS LETTERをお届けします!

コンテンツマーケティングラボの最新情報を、
定期的にEメールでまとめて、お知らせします

当月の更新情報を翌月初にお届けします。

(購読すると弊社の書籍発売イベントの特典資料をダウンロードできます)

関連する記事