成功の秘訣は場づくり…インテリジェンス社が手がけるコンテンツ開発の極意!

2015年6月に公開後から好調にアクセス数を伸ばしている、株式会社インテリジェンスが運営するオウンドメディア「“未来を変える”プロジェクト 」。配信するコンテンツに対してTwitterやFacebook、はてなブックマークなどのSNSを中心に数百、時には数千もの拡散が起きることも珍しくない。CONTENT MARKETING LABの読者の中にもご存知の方は多いのではないだろうか。

今回紹介するインテリジェンス社が手がけるオウンドメディア「“未来を変える”プロジェクト 」TOPページ

変化する社会のなかで、働き方も大きく変わろうとしている。「“未来を変える”プロジェクト 」とは、そんななかで「これからの変化を楽しむための議論ならびに情報発信をしていく」サイトだ。「議論」という言葉を用いていることからわかるように、このサイトで情報発信されるのはよくあるノウハウやTipsのようなすぐに役立つ情報ではない。変化の時代に働くビジネスパーソンが直面する本質的な課題に対して考えを深めるための情報だ。

本気で考えるパートナーの壁:時代の変化に『乗れる』予見性を育もう 」と題したコンテンツページ。たとえばビジネスパーソンにとって向き合わなければならないもののひとつに「家庭」がある。そこでこのコンテンツでは「パートナーの壁」というテーマを設定し、何があるとパートナーとの関係が崩れるのか、良好な関係構築の背景に何があるのか、「予見性」という補助線を読者に提供しながら解き明かしていく。非常に濃いコンテンツでFacebookによる「いいね」も1,600を超える。

このようにビジネスパーソンが直面する課題に対して深い示唆を与え、注目されるオウンドメディア「“未来を変える”プロジェクト 」。今回このサイトをプロデュースする、インテリジェンス社の三石氏から、サイト運営の裏側について聞く機会に恵まれた。たくさんの拡散を起こすコンテンツ開発の裏側には、人材サービスを主幹とする企業らしい、「ひと」というリソースを存分に発揮した、独自のコンテンツづくりのしくみがあった。

転職後もユーザーとの関係を継続させるために…コンテンツを通じてライフタイムバリューの最大化を目指す

“未来を変える”プロジェクト 」の目的は、まだ転職を考えていない層に対してDODAの認知向上にあるという。三石氏曰く「DODAは新卒向けナビサイト等のサービスがないため他社に認知では劣る。20~30代の潜在層にDODAを知ってもらうことが一番の目的だった」。

DODAは登録制サービスだが、ユーザーの一部は転職が決まると退会し、関係がきれてしまう。実際には、転職1年後のヒアリングなどのキャリアサポートも行い、関係は続いているにもかかわらずだ。これは事業課題のひとつだった。

「“いい転職が、未来を変える。”というブランドスローガン通り、DODAから有益な情報を発信し続け、転職後のキャリアにも貢献したい。転職前後もユーザーと関係を継続し、転職だけに留まらない価値を提供し続ける。そんな関係構築が狙いだった」と語る株式会社インテリジェンスDODA編集部のメディアディレクターの三石原士氏。

起案の背景には、2012年に公開したオウンドメディア「キャリアコンパス 」の影響も大きいと三石氏は言う。「キャリアコンパスの運用が始まった頃、広告以外の集客方法を模索していた。そのためいかに広告でない形でサービスを訴求するかが課題だった。その状況で、キャリアコンパスは成功を収めつつあった」。

新卒・20代ビジネスパーソンを対象としたオウンドメディア「キャリアコンパス 」。コンセプトを「20代の“はたらき”データベース」とし、実際に働く20代の声から役立つノウハウなどいろいろな情報が詰まったサイトだ。

このオウンドメディアの成功ノウハウを活かして“異なるターゲット”に“異なる仕掛け”で生まれたのが『“未来を変える”プロジェクト』だったのだ。実は「“未来を変える”プロジェクト」には前身となるコンテンツがあったが、活性化していなかった。「“未来を変える”プロジェクト」は新規の企画でなくこの既存コンテンツのリプレイスという形でスタートした。これは社内承認が得やすく、プロジェクトをスムーズに進めるため、という理由でもある。

三石氏はまず2014年夏、フィジビリティスタディ(実現の可能性の検討)の一環として2つのコンテンツ制作に取りかかる。考えていたのは、イベントを実施し、集まった人たちの議論を基にコンテンツを創り出すこと。リアルイベント開催を制作フローに組み込むのは、工数負担が大きい。批判もあった。でも、「そこから効果的なコンテンツが生まれるのではないか」と考えた。三石氏はそのフローに実現性があるか試したかったという。

これは見事にヒットした。1本目のコンテンツはFacebookで2500の“いいね”を獲得。2本目は5000を越えた。PVもUUもついてきた。 制作コストに見合う充分な効果がある、オウンドメディアとして成立すると社内承認を得、その秋から全体構想に入り、2015年6月に正式に「“未来を変える”プロジェクト」としてリリースされた。

フィジビリティスタディの段階で2,500いいねを獲得したコンテンツ「インフルエンサーだけが知っている:情報発信4つの誤解 」(左)。5,000のいいねを獲得した「『レジリエンス』~ビジネスパーソンが押さえておくべきキーワード~ 」(右)(リプレイスによってURLが変更になりソーシャルシグナル数がリセットされている)

集客したいターゲットに近い身近なロールモデルを発信者に組み込み、共感を生むコンテンツを作り出す

このDODAが集客したいのは、どんな潜在層なのだろうか。前述のキャリアコンパスの対象が新卒・20代のビジネスパーソンだとすると、「“未来を変える”プロジェクト」は、むしろ年齢層は20~30代をメインとし40代まで幅広く捉えている。

集客したい潜在層を一言でいうなら「ビジネススクールに通っている人 」。その心は「志が高く、今まさに変わろうとしている人たち」。そういったターゲットの“実際に”役に立ち、働くことについて示唆を与えることができるようなコンテンツ開発を狙っている。根底にあるのは、「これからは今までと違う働き方が求められる時代に変わってくる。だから、その“変化を楽しむ”というコンセプトで、宣伝や広告ではなく、納得度が高い普遍的なテーマを発信したい」という思いだという。

“未来を変える”プロジェクトのポジショニングマップ。

重要視したのは、発信者は誰か、という点。「DODAが発信すると、どうしても宣伝広告的になる。それよりターゲットに近しい方の意見の方がより納得度が高い。考える示唆を与えることもできる。“未来を変える”プロジェクトを主体とした方が拡散する要素にもなる」。そこで考えたのは、ターゲットの周りに存在していそうな “変化を楽しむ”志向をもつ一般の社会人だという。

メディアに頻繁に登場するような著名な経営者では、ターゲットとの間に距離があるため、「あの人は特別だから」「自分には関係のない話」となってしまいかねない。そういう“レジェンド”のような遠い存在ではなく、もっと身近な人物のノウハウや考え方を発信することを大切にしている、という。

三石氏がこだわったのは「自分にもやれる、やってみたいと思える情報」であることだ。そして、そんな情報を吸い出す場が“変化を楽しむ”志向をもつ方々が集まるイベントなのだ。こうしてまとめられたコンテンツはターゲットにとって有益であることはもちろん共感も生む。そしてこの共感は、SNS経由でコンテンツへの流入に寄与させるという集客戦略に繋がる。つまり、発信者である“変化を楽しむ”志向をもつ社会人を起点に拡散を起こしながらターゲットに届け、共感を生みさらなる流入を増やす、という流れだ。疑問解決型コンテンツを多く配置し、基本的に検索流入がメインのキャリアコンパスとはサイト流入に対する考え方が異なる。

プロジェクトメンバーも“変化を楽しむ”志向性を共有!“無駄がない”プロジェクト体制

そんなコンセプトでコンテンツを生み出すにあたっての体制はどのようなものだろうか。

プロジェクトオーナーは、インテリジェンス社の三石氏、人材業界の専門家だ。そして、このプロジェクト運営に深く関与するのがインクルージョン・ジャパン株式会社。人材業界に深い造詣があり、ビジネスマンやベンチャー経営者だけでなく、NPO、官僚、学生等々が参加する多様性あふれるコミュニティやイベントの運営実績のあるコンサルティング会社だ。そして、コンテンツの編集を担当するのは実際に大企業を飛び出し、現在はシンガポールに拠点を構え、アジアマーケットを見据え活躍している編集・ライター陣だ。ターゲットにとっては、新しい働き方を実現しているいわばロールモデルといえるだろう。

三石氏が語る体制図。それぞれに専門分野を持ち、その分野で深いナレッジをもつ人材による座組になっている。

プロジェクトに携わる全員が、ある意味ターゲットと近しい存在でもありながら未来の働き方へシフトしていくことの必要性を感じ、時代の空気を読みながら、かつ楽しみながらその変化を実現しようとしている、そんな雰囲気が感じられた。だからこそ、ターゲットたちのツボをおさえた必要とされるコンテンツをつくれると言えるのではないだろうか。

コンテンツのタネは生の対話から。対話の場からコンテンツの完成まで、丁寧に設計された開発プロセス

コンテンツ開発のプロセスの中で重要な役割を果たすのは、三石氏もいうように、定期的に開催されるインテリジェンス社主催のイベントだ。招待制だというこのイベントには、一般の会社員に加え、有名企業の役員、国家公務員、ベンチャー企業の社長など立場は違えど問題意識の高い人々が集まる。肩書きも年齢も関係なく同じテーブルに座って喧々諤々の議論を行う。この場での対話の内容がそのままコンテンツの品質に影響を与えるため、集客の際、属性や年齢などについて、きめ細かい配慮がなされるという。

このイベントの最後には、参加者にオープン形式のアンケートを記入してもらう。これがコンテンツのタネになる。参加者は当事者意識が高いから、アンケート回答は密度が濃い。

実際のアンケート用紙。質問項目の一節には「今回のやりとりを通して、どのような学びや発見がありましたか?ぜひ詳しく教えてください。※本内容は、みなさんの回答内容を集約し、サイト内コンテンツ記事などの形に取りまとめさせていただきます」とある。このようにアンケート内容がコンテンツ記事に反映されることを明示しているのが特徴的だ。内容によっては後日参加者に原稿チェック等の協力も依頼する。

その後、アンケートを基に三石氏を始めとする制作チームとイベント参加者の中から数名の協力者を得て計6~7名の少人数検討会を行い、特集コンテンツを決めていく。1つの特集コンテンツを深掘りするサブコンテンツもここから拾い上げる。すべてがイベントで語られた生の対話の中から生まれている。だから、決してターゲットの興味関心から外れることはない。

コンテンツの内容が決まったら、徹底的に構成案を推敲した後、ドラフトとなる原稿を書き上げる。ドラフト原稿は、さらに十数名のイベント参加者に読んでもらいフィードバックを受ける。「構成案は決してぶれないが、このプロセスを繰り返し、最終的に完成稿は初稿とまったく違うものになることも多い。何度でも、納得がいくまで徹底的に書き直す」と三石氏。リリース時には総勢50名近くの手を経ていることになる。この中には、“社外編集長”と呼んでいる、それぞれ企業で役職をもつ方たちがいる。前述した、ターゲットたちが身近に憧れる成功者。みなボランティアで編集会議に参加してくれている。

イベントについて 」ページより。このようにイベントの位置付けおよびコンテンツ開発のプロセスはWeb上でも公開している。

ではここで、今回は9月に開催された「若手×シニア」をテーマとしたイベントの模様についてレポートしよう。

イベント開始前の様子。週明け早々月曜の夜にも関わらず、約30名の参加者が集まった。あちこちで挨拶や名刺交換が行われ、すでに会場には熱気が漂い始めている。それだけ興味関心の高い人たちが集まっているということのようだ。

イベントの開始を宣言するインクルージョン・ジャパン株式会社の陶山氏。ファシリテーターを務める。

続いて登場する三石氏。開口一番「ここは“未来を変える”プロジェクトの編集会議の場です」。そう宣言したうえで、このイベントとコンテンツの関係を説明していく。こうして参加者はコンテンツ開発に巻き込まれていく。

再びインクルージョン・ジャパン株式会社の陶山氏より、「若手×シニア」の議論のモチベーションに繋がるような情報提供がなされた。「新しいアイデアは対話の中から生まれる」をテーマにカフェを引き合いに出しながら解説した。

続いてこの日のテーマ「若手×シニア」に対して、シニアと若手という立場の異なるふたりのプレゼンターによるインスピレーショントークで課題を共有した。「シニアとは何歳くらいからか、若手とは入社何年目までか」、「経験・見識の違いを超えてリスペクトしあうにはどうしたら良いか」といった問題提起や、それに対する見解を披露し合った。こうして場が温まってきたところで満を持して「世代間 GAP を活かすにはどうすれば良いか」をテーマに全体での議論が始まる。

議論の手法として、ワールドカフェ方式を採用している。ワールドカフェとは、議論のファシリテーション手法のひとつだ。まず 4人1組でテーブルに分かれて議論する。1 ラウンドにつき20 分かけて話した内容をどんどん模造紙に記入。1名がテーブルに残り、その他のメンバーは別のグループに移動して、先のアイデアを共有しながら新たに議論をし、最終ラウンドで最初のテーブルに戻ってくる。議論の中で他者からインプットされるさまざまなアイデアをもとに自身のアイデアがより深まる仕組みだ。イベントでは 4ラウンド=約1時間半も徹底的に議論と対話をくり返す。三石氏、プレゼンター、ファシリテーターも全員が参加する。

月曜の夜からヘビーな対話だが、熱は最後まで冷めることはない。

こうして出来上がったコンテンツは、ネタ自体をターゲットの参加者たちと議論して「ここが面白い」「興味深いポイント」と選んでいるから外れることがない。また、関わった全員が深く読み込んでいる原稿だから、リリース時には、例えば「この記事のここが響くので読んでください」という熱いメッセージなどとともに、どんどんSNSで拡散される。中にはインフルエンサー的な方も多く、より拡散されやすい。こうして“未来を変える”のコミュニティは大きくなっていく。

「議論と対話を楽しんでください」。イベントで最後に必ず三石氏が言う言葉。コンテンツが創出されるこの“場”づくりを重要視し、この“場”の重要性を参加者たちに徹底的に刷りこんでいく。

“未来を変える”のイベントは、三石氏もいうように、参加者全員が楽しんでいる様子を強く感じた。確実に拡散するコンテンツ、何よりこの場づくりの成功にあるのかもしれない。

取材を進める中で感じたのは重厚なコンテンツ開発プロセス、端的にいうと「コンテンツを生み出す源泉は人であり、それ故に人が集まる場づくりに腐心する」姿勢だ。

サイトの目的および位置づけを明確にしたうえでペルソナを明確にする。ここまでは通常のコンテンツマーケティングにおいても「コンテンツ戦略」で行うプロセスである。しかしインテリジェンス社はそこで終わらない。そのあとのプロジェクト体制構築についてペルソナと同じベクトルを向いているメンバーを意図的にアサインしていることから、座組の構築にも強いこだわりを感じる。三石氏も「このプロジェクトメンバーでなくてはこのサイトは存在し得なかった」と語っていた姿が印象的であった。

加えて、ペルソナと同じベクトルを向いている身近なロールモデルを発信者として巻き込んでいる点も見逃せない。イベントを通じて有益な情報を提供しながらインテリジェンス社としても欲しい情報を提供してもらっている。このwinwinな関係を築きながらペルソナにとって有益なコンテンツを生み出し、結果も出している。

この、コンテンツを生み出すための適切な座組自体を考え抜く視点は「効くコンテンツマーケティング」を実践する上で外せないものになるだろう。

執筆:新川五月編集:野口聖晃(日本SPセンター)

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