コンテンツマーケッターが知っておきたいCMS入門(1)CMSの基本

執筆者紹介

1972年生まれ。1990年代前半に都内のDTP系デザイン会社にてアルバイトをはじめる。大学卒業後そのまま正社員となり、入出力業務、デザイン業務、ネットワーク関連業務に並行して従事。2001年会社を退職後フリーランス。案件ごとに業務内容などが異なるため、職域的な肩書きはなし。HTML5Experts(http://html5experts.jp/)エキスパートNo.20

CMSとはコンテンツを管理するシステムのことであり、その主な仕事はWebサイトのコンテンツを管理画面から追加や更新をしたり、公開するコンテンツをコントロールすることだ。CMSを利用したWebサイトのコンテンツ配信は、事業規模の大小や事業形態を問わず、この10年あまりで増加傾向にある。

しかし、旧来の制作ワークフローでのコンテンツの追加や更新を続けていては、時間や費用面での負荷が大きく、なかなかうまくいかないこともあると考えている。

こういった問題を解決するためやコンテンツ配信のフローを効率化するためにCMSを導入するのは、全体的なサイトの運用コストを下げる意味では理にかなっている。そこにきてこの数年は、デバイスの多様化にともなう利用者の行動変化、SNSなどの流行による流入経路の複雑化が進んでいるのが現状だ。既にCMSが導入済みで運用中のサイトであっても、現状に満足しきるのではなく、このような新しい流れを注視する必要があるといえる。

本連載では全3回に渡り、CMSの基本から導入、運用における注意点、またデバイスの多様化にともなう配信対象の複雑化を視野に入れた未来のコンテンツ管理について取りあげていく予定だ。まだCMSを未導入の企業の方だけでなく、すでにCMSを導入している企業の方にも是非読んでいただきたい。

CMSは、コンテンツ制作などの流れを効率化・負荷軽減し、戦略的なコンテンツマーケティングの実践をしやすくする。

CMSは正式にはコンテンツ・マネージメント・システムといい、Webサイトのコンテンツの制作・管理・配信を円滑におこなうためのコンテンツ管理システムである。テンプレートをベースに設計されたWebサイトに専用の管理画面からコンテンツを挿入し、コンテンツを管理・配信する。

従来型のWebコンテンツの制作から配信にいたるワークフローでは、配信側が提供したいコンテンツを企画・構成し、コンテンツの制作工程はWeb制作会社に依頼し納品されたデータをWebサイトに登録して配信する、という流れが一般的である。しかし、この従来型のワークフローは、サイトの更新のたびに時間と費用面での負荷が発生する。コンテンツマーケティングをいざ実践しようとしても、更新のたびに発生する負荷があるとなれば、なかなか踏み込めないこともある。

そのような従来型のコンテンツ制作や配信にいたる流れを効率化し、負荷を抑えながら自社内で意図したタイミングでコンテンツを投下したいのであれば、Webサイトの運用にCMSを導入すれば、Webサイトを使ったマーケティング計画を立てやすくなる。

一般的なWebサイトにおけるコンテンツの追加・更新のワークフローはこのようなものだ。インハウスでない場合は、外部委託先への依頼と制作期間、それにかかる金銭的なコストがかかってくる。CMSを導入すれば、ワークフローを改善でき、よりスムーズなコンテンツの追加や更新が可能になる。

最初にCMSのシステムを導入する時には多かれ少なかれコストがかかるが、従来型のコンテンツの管理・更新・配信といった部分にかかるコストは大幅に削減可能だ。大量のコンテンツを有し長期に渡って運用することが求められるWebサイト、サイト運用に関わる関係者が多く公開までに承認フローが必要なWebサイトなどでは、CMSを用いてサイトを運用する方のメリットが大きいと言えるだろう。もちろん、小規模なWebサイトであってもCMSを使えば自社以外のスケジュールなどに左右されることなくコンテンツを追加できるなどのメリットがある。

CMSは無料から始められるオンラインサービス型、既存のWebサイトに導入するインストール型など、コンテンツの配信・運用の仕方によって採用するシステムのタイプが異なる。初期導入にかかるコストも、無料から数万円、数千万円とその規模やCMSが持つ機能などによってさまざまだ。どのようなCMSが向いているかは、運用されるWebサイトのコンテンツによっても変わってくる。「コストをかけられないから無料で…」と始めるのは構わないが、最新の技術動向にあわせたコンテンツ配信をしたくとも、その導入したシステムの自由度の低さがゆえに実現できないという可能性もゼロではない。導入の際は先を見据えたコンテンツ配信設計が重要になってくる。

CMSを導入する最大のメリット、それは更新時のコスト削減。

CMSは前述のようにWebサイトのコンテンツを制作・管理・配信するためのシステムである。これまでWebサイトへ追加するコンテンツ制作を外部に依頼していた場合は、CMSの導入以降は自社内のスタッフがコンテンツを制作し、適切なタイミングで公開するといったことが可能になる。

現在コンテンツの新規追加や既存のコンテンツを修正する際に、制作会社やフリーランスなどの外部のリソースに依存している場合は、そこに多かれ少なかれ時間と費用というコストがかかっているはずだ。費用面はともかく、時間的なコストは自社内でコンテンツを追加(更新)して公開するというスピードでは対応できない。単純なページの追加や既存のページの一部を更新することであっても、少なく見積もっても1日~数日はかかる。CMSを導入することによる一番のメリットは、この部分を最適化しコストを抑えて任意のタイミングで公開・更新できるところにある。

また、この数年のインターネット界隈の動向の変化も大きい。検索ポータルはリアルタイムにサイトのコンテンツ追加や更新を追い、その結果として表示するようになった。スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの流行によって、利用者がコンテンツを閲覧する状況も変化の一途である。アクセス解析も何かの更新タイミングや日ごとにチェックしている場合ではない。たとえば、SNSなどで自社の商品が話題になりアクセスが増えているといったことですらリアルタイムに手元で確認できる時代だ。

リアルタイム・ウェブサイト解析サービスの「Chartbeat」のダッシュボード画面。現在、Google Analyticsも含む様々なアクセス解析サービスでは、リアルタイムでのアクセス状況も取得できるようになっている。

リアルタイムにサイトの状況を知り、必要に応じて補足情報を追加する、別の動線を設定して最終的な売上に繋げる、といったことは従来型の制作・公開のフローでは実現不可能だった。しかしWebサイトへのアクセスがリアルタイムで取得できるのであれば、状況に合わせて必要なコンテンツを追加・補足したり、別の動線を追加するといった施策の実行がしやすくなる。従来のSEOに頼り切った施策だけでなく、コンテンツマーケティングという視点から考えて、利用者が求めるものを適切なタイミングで適切なコンテンツ投下をサポートするメリットは大きい。

デバイスの多様化が進み、利用者のコンテンツ取得にいたる行動が変化すれば、今後求められるコンテンツの形態も変わっていくことが予想される。それに対応できるようにしておくか否かも考えておく必要があるだろう。これについては本連載の次回以降で改めてお伝えしよう。

CMSの利便性の裏にある注意点にも着目しよう

CMSの導入は最初の設計が肝心だ。CMSには無償で利用できるオンラインサービスから、自社内のサーバにインストールするタイプのソフトウェア型まで色々なタイプがある。

無償で利用できるオンラインサービス

無償で利用できるオンラインサービスを使う場合は、制限があることも多いため注意が必要だ。例えば、ビジュアルデザインの変更ができない(決まったテンプレートを利用することしかできない)、そのシステムにある機能しか使えない、ドメインの変更ができないなどの制限がある可能性が高い。しかし、無償のサービスであっても、既に自社サイトがあってひとつのチャンネルを作るという意味合いで利用する分には問題ないだろう。例えば欧米のブランドなどでは、既存の自社サイトとは別に「Tumblr(https://tumblr.com)」を使って新たにコンテンツを運用している事例もある。

Tumblr」は、日本ではマイクロブログサービスとしてジャンル分けされることが多いが、欧米のブランドなどではコンテンツマーケティングにおいての顧客との接点のひとつとして「Tumblr」を活用する事例も多い

ファッションブランドの「J.Crew」は、早期からTumblrを使っていることで有名。このサイトでは新商品や着こなしなどの事例を取扱って、本体サイトへの流入を促すような仕組みになっている

Starbucks Coffee」も例外ではない。Tumblrでは、写真を中心としたメディアを展開している。新しいソーシャルメディアを使いこなす会社らしい取り組み方だ

自社内のサーバにインストールするタイプのソフトウェア型

自社サイトのソフトウェア型のCMSを導入する際は、無償で利用可能なオープンソースで開発されているものから、数万円~数千万円クラスのものまでの幅広い選択肢から選ぶことになる。注意すべきなのは、Webサーバにインストールするタイプになると、CMSのソフトウェアによっては既存のサーバの仕様上インストールできないこともある点だ。新規にサーバを立ち上げる場合は、どのようなホスティングサービスを契約するかという問題も出てくる。運用コストを下げれば自由度は低くなり、自由度を上げれば運用コストは上がってしまうが、将来にわたって長く運用する可能性があるならば、長期的な視点でメリットデメリットを検討し、慎重に選択したい。

情報漏えいなどのトラブルを防ぐために重要なのは、最初に設計と運用体制の整備をしておくこと。

CMSを使ってパブリックに公開されるWebサイトは、常日頃さまざまな脅威にさらされている。WebサーバやCMSなどのソフトウェアは半ば生き物のようなもので、時には重大な欠陥が発見されることもある。欠陥があった場合はその修正をおこなう必要があり、多くの場合は開発側からアップデートという形で解決方法が提供される。こういった管理を怠ってしまうと、悪意ある攻撃の対象になってしまい、情報漏洩などといったトラブルに巻き込まれることにもなりかねない。その対応のためにかかるコストを考えれば、あらかじめ最初に安全な運用を意識した設計と運用体制を決めておいたほうがいいだろう。

Webサイトのコンテンツ管理のためのCMSは大変便利なものである。しかしこの利便性ばかりに目が向いてしまうことにも注意が必要だ。実は、CMSの仕組みを知らないがゆえに陥りがちな罠も存在する。次回このあたりのCMSの種類や導入時の注意点などについては詳しく取りあげよう。

今回の連載は、コンテンツマーケティングの事例や最新情報、戦略立案に役立つ情報などを主にお届けしてきた当コンテンツマーケティングラボの通常記事とは少し異なるため、戸惑われる読者の方もいるかもしれない。

ではなぜCMSを取り上げるか、それはCMSの活用がコンテンツマーケティングを実現する上で重要な「安定したコンテンツ供給」につながるからだ。CMSを上手く活用して安定性のあるマネジメントを行うことは、コンテンツ品質向上に費やす時間や労力を確保することにもつながり、ビジネスゴール達成にもつながる。当コンテンツマーケティングラボでも、アドコード社のCMSを導入済みだ。

しかし、CMSは「導入さえすればコンテンツ配信・管理がグッと楽に」なるような魔法のシステムではない。マーケティング施策などを考慮して事前設計をしておかないと、余計なコストがかかってしまう危険性もある。

ぜひ、コンテンツマーケティングを検討中もしくは実施中のマーケッターの方には、当連載でCMSへの知識を深めて、CMSを用いたより効果的なコンテンツマーケティング施策に役立てていただきたい。

執筆:こもりまさあき編集:奥田あゆみ(日本SPセンター)

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