国内コンテンツマーケターが語る!戦略・企画、合意形成のポイント

1月22日、Ginzamarkets主催の『FOUND Conference in Tokyo』が開催された。同カンファレンスは「コンテンツマーケティングの現在と今後について考える」をコンセプトに、シリコンバレーやニューヨークなどで開催されており、今回アメリカ以外では初めて東京で開催されたカンファレンスだ。

第一部では「コンテンツを活用するマーケティング活動を実施すること」と題し、Expediaマーケティングディレクターの木村奈津子氏、リクルートジョブズグループマネージャーの板澤一樹氏、楽天市場サーチエンジンマーケティンググループの近谷康氏、そしてモデレーターにGinzamarketsヴァイス・プレジデントの清水昌浩氏が登壇した。

第一部セッションの模様(左から木村氏、板澤氏、近谷氏、清水氏)

マーケティング戦略とコンテンツマーケティング実施の理由の関係性

実際に、コンテンツマーケティングを実践してきた3社のマーケターの方々は、なぜコンテンツマーケティング実施へと至ったのだろうか。

Expediaは、400社のエアラインと24万件のホテル情報を提供しているオンライン旅行サイトだ。そのなかでコンテンツマーケティングを担当する木村氏は「旅行会社としては後発で、限られた予算でROIを最大化するための施策を考えなければいけない。SEM(サーチエンジンマーケティング)だけではなく、ブランド認知と信頼性を高めることで将来旅行する人達に対してリーチしていく方法を模索していかなければいけない」と語る。いかに他社との差別化を図るか。そのために、エッジの効いた企画を意識しており、特にブロガーに向けたバイラルしやすいコンテンツづくりを通じて、自社の認知獲得や海外旅行に関するコンテンツを発信していくことが重要だという。

ネット上で話題となる企画づくりを日々考えなければならないと語るExpediaマーケティングディレクターの木村奈津子氏

誰もが憧れる海外旅行は、人生において回数も限られている。だからこそ期待感を高めて納得のいく選択をユーザーにしてもらったり、もっと旅行に行く回数を増やしてもらったりすることが、旅行会社にとって重要な価値提供となる。PRやソーシャルメディアを活用するだけでなく、海外旅行というコンテンツを、ユーザーに楽しんでもらうために独自の企画を行っている。

「海外のショッピング事情など、旅行というコンテンツが活きる情報を届けている。他にも、ホテル予約で全額キャッシュバックが抽選で当たる企画や、世界のイケメンコンシェルジュコンテスト、為替を参考にしてどこの国でブランド商品を買うとお得になるかといった価格比較など、海外旅行の楽しさを感じてもらう企画を通じたコンテンツがマーケティングとして効果は高い」(木村氏)

一方リクルートジョブズの板澤氏はこう語る。

「ユーザーに届く情報すべてがコンテンツ。サイトに何度も訪れる人は少ないからこそ、訪れた時に最適な情報と最適な求人情報を提供できる環境を充実させている。コンテンツの中身に関しても、ターゲットを絞った媒体構成を行いユーザーに共感が得られるものを制作している」

就職や転職など、求人情報は人の人生に大きな影響を与えるもの。だからこそ、ユーザーに届ける情報に対して敏感にならなくてはいけない、という考え方が根底にあるという。また、スマートフォンの普及によって、スマホファーストのコンテンツづくりへの意識も口にしていた。

楽天の近谷氏は、ものを購入する環境は整っている中で、どうやってECへの流れを作るか、について考えるにあたり、購入までのプロセスを楽しんでもらうことが大切ではないかという考えに至りコンテンツマーケティングに着目したと語る。

「ただ商品を売るのではなく、季節に合わせた商品を提案したりしている。店舗独自の特色をだし、個性豊かなショッピング環境をつくるために運営者と日々コミュニケーションをとっている。楽天にとってコンテンツは店舗そのものであり、買い物をいかに楽しくするかを心がけている」(近谷氏)

年間流通総額約4兆円、ユーザー数約8740万人と国内ネットユーザーの90%以上を抱える楽天市場では、楽天というブランド認知が高い市場において、どのようにしてユーザーアプローチを図っていくかが課題だという。新規顧客獲得のみならず、既存顧客の中でもライトユーザーとヘビーユーザーといったグループを分け、いかにしてリピートの多いヘビーユーザーとなってもらうかといったエンゲージメント施策に取り組んでいる。

マーケティング施策として効果的なコンテンツを作成するためには、その前段階の企画が重要になる。

Expediaの木村氏は、定例会議で議論するのではなく、カフェなどでスタッフとブレストしながらアイディアをだすほうがいい企画が生まれるという。ネット上を中心に話題となるコンテンツのためには、創造性と斬新さを重視した企画にしなければいけない。リラックスした状態で、普段のコミュニケーションの中で生まれたアイディアや気になった話題をメモしながら膨らませることが大切だと語る。

リクルートジョブズの板澤氏は、コンテンツ作りを他分野の知識や経験を持つ外部のライターと一緒に、社会情勢や今話題になっている事柄と結びつけてネタ作りに取り組んでいる。求人サイトという特性を踏まえながら、どういったコンテンツがユーザーにとって価値があるのかを考えることが大事だという。過去コンテンツの再発掘による利活用も含めて、自社メディアには編集長を据えて編集長の権限のもとに効果的な企画作りを継続的に取り組んでいる。

過去コンテンツの発掘などをもとに、求人情報を求めるユーザーに価値のあるコンテンツを提供することが大事、と語る板澤氏

店舗コミュニケーションを重視している楽天は、店舗に対して売上向上に寄与する取り組みを行っているという。季節に応じた商品軸の売上トレンドや、膨大なショッピングデータを通じたデータ分析のレポートを作成し、各店舗に情報を提供しながら企画づくりを支援している。楽天市場という巨大なネットワークをうまく活かすために、店舗コミュニケーションが重要だと語る。

社内での合意形成には欠かせない中長期的視点の存在

コンテンツマーケティング施策を行う中で、社内調整や効果測定をどのように設定するのかは重要な指標となる。限られた予算の中、効果的なマーケティングの実施に関して、3社はどのようにやりとりしているのか。

楽天の近谷氏は、ソーシャルメディアを一つのKPIとして重視していると語る。Facebookのいいね!数や、Facebookページのファンが実際に楽天会員としてショッピングで購入をしたか、といったコンバージョン率を日々測定しているという。

「絶対的な企画や施策はない。数を重ねながら、仮説検証を行うことが一番だ。社内では短期的な指標を求められるが、長期的な視点も持ちながら取り組むことを忘れてはいけない」と語る楽天の近谷氏

板澤氏は、KPIとして被リンク数やソーシャルメディアの投稿数を設定しているが、コンテンツだけでは最終的な求人情報へのコンバージョンへの影響に対して明確な数字は現れにくいという課題があるという。その中で、コンバージョンという短期的な視点だけではなく、長期的な視点を重視していくことが大切だと語る。

「求人業界は景気に左右されやすい。だからこそ、短期的な数字だけではなく長期的なブランド構築を軸にしていくことが重要だと、社内では説明している。コンテンツマーケティングという説明よりも、良質なコンテンツによるSEO効果と言うと理解してくれやすい」(板澤氏)

予算確保は、企画毎に調整しているとExpedia木村氏は語る。PR狙いならPR予算をもとにし、オンラインでアテンションを集めるものはSEOの予算から確保する、といった形だ。KPIに応じて予算調整を行わなければいけない現状の中で、社内調整を進めやすいように部署間横断を通じた連携体制でマーケティングに取り組むように調整することが大切だという。

「コンテンツマーケティングをどこか一つの部署で説明するのは難しい。SEOとメールチームが互いの部署を理解して一緒にマーケティングに取り組むような部署間連携を行うことで、コンテンツマーケティングに関する理解も広がりより柔軟な動きができる」(木村氏)

コンテンツマーケティングは、短期的視点よりも長期的な視点を持って部署連携や社内外のさまざまな分野の人たちと協働できるかどうかで、提供できる価値も変化する。自社の強みを理解しつつ、いかにユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供できるかを日々考えることが大切だ。

コンテンツマーケティングを駆使し、既存の課題を解決しようとする現場の担当者によるディスカッションであったため実に具体的な議論であった。とくに顧客になりうる読み手と自社の商品・サービスをどう結びつけていくか、この観点で腐心している様子をうかがい知ることのできた内容であった。そして3社とも社内を説得するにあたっては「中長期的視点」の必要性を説いているのも興味深い点といえよう。

執筆:江口晋太朗編集:野口聖晃(日本SPセンター)

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