事例から戦略立案テクを学ぼう! ターゲットに届く動画コンテンツの作り方

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2月4日〜6日、JAGAT主催の『印刷メディアビジネスの総合イベント page2015』が開催された。同カンファレンスは1988年から始まり、「変わるニーズ。変わるビジネス。」とのテーマが掲げられた今年の開催で28回目となる。

コンテンツマーケティングラボでは、前々回記事に続き、JAGAT・藤井建人氏がモデレーターを務め、株式会社LOCUSの瀧良太氏、UUUM株式会社の鎌田和樹氏、株式会社資生堂の藤岡智愛氏、株式会社ニワンゴの杉本誠司氏が順に発表を行ったプログラム「動画プロモーションの価値と可能性」の模様をレポートする。

LOCUSが教える、目的ごとに異なる動画の作り方。

映像/動画の企画、制作、販売を手がける株式会社LOCUSは2010年に設立された企業だ。書類選考・面接を経て選考した外部クリエイターを400名ほど抱え、彼らにクライアントと直接やりとりしてもらいながら制作を進める、クラウドソーシング型のスタイルをとっている。現在約700社との取引実績があり、年間に制作する映像本数は1500本ほどだ。

株式会社LOCUSの事業内容について説明する瀧氏。

株式会社LOCUSを率いる瀧氏は、ターゲットの心理状況には5段階あると話す。具体的には、「知らない」「知っているが興味はない」「興味があるがまだ欲しいとは思っていない」「欲しいが買う動機がない」「商品をもっと知りたい」と分類され、顧客心理がこれらのプロセスのうちどこにあるかによって、動画の活用方法は変わってくる。

「『知らない』なら、認知してもらい、興味喚起をする。『知っているがまだ興味がない』なら、表現や構成でまず興味を引く。『興味があるがまだ欲しいと思わない』なら、導入するとどのようなメリットがあるか、実績はどうなのかを伝える。購入後も含めターゲットの心理状況に合わせて、動画の目的や配信先も変えるべきだ」(瀧氏)

また、同じターゲットであっても、目的が変わればプロモーション自体も変える必要がある。ここまでを動画制作・展開における前提条件として踏まえながら、目的別の事例を参照してみたい。

1.認知

クライアントは浦和大学。オープンキャンパスの来場者数を増やす目的で制作された動画だ。

高校3年生から20代前半の大学入学を検討する若者をターゲットに、YouTubeのTrueView広告で配信した。冒頭でカウントダウンが始まるため、見る側は「これは何だろう?」と興味喚起される。

「ターゲットの世代に親近感を持ってもらおうと、楽しさを出すためにかわいらしいアニメーションの表現を選択した。30秒という限られた尺のため、セリフは使わなかった。メッセージが伝わるような絵を意識している」(瀧氏)

「年齢を登録したユーザーはターゲティングできるが、未登録のユーザーには年代ごとのターゲティングは出来ない。そのためターゲット世代が多く含まれているであろうカテゴリの動画をよく見ているユーザーに絞り込んで広告を配信した。」(瀧氏)と振り返る。

もうひとつの事例を紹介しよう。

クライアントは仕事体験テーマパークの運営を行うカンドゥージャパン。新たに進出した子ども向け職業体験施設への来場者を増やし、カンドゥー社の名前を覚えてもらう目的で制作された動画だ。

小中学生の子どものいそうな男女をターゲットに、JALの機内広告や少し尺の長いものはYouTubeのTrueView広告で配信した。

「どのような場所なのか、雰囲気が伝わることを心がけた。TrueView広告でこだわったのはJAXAとコラボして、宇宙空間のCGを用いながら、目を引くようなCGを入れたこと」(瀧氏)

「ブランドに高い興味を示すユーザーに効果的に接触すべく、1都3県内/それ以外に分けて実際に効果を見ながら運用を行った」(瀧氏)

2.認知と理解

クライアントは事故車の買い取りを行うタウ。サービスの認知度向上や見込み客の開拓、ブランド認知の3つの目的で制作された動画だ。

クルマを持つ20代後半〜40代の男性をターゲットに、YouTubeのTrueView広告で配信した。クルマ所有の有無は判別できないため、クルマやニュース、スポーツに興味がある男性だけに絞っていたという。

「事故車を買い取ってもらえるという価値を訴求するために、実際に買い取られたクルマの写真を用いて、いくらになったかを端的にまとめる点にこだわった」(瀧氏)

3.理解

クライアントは人材サービスの運営を行うビズリーチ。サービス利用を検討する人の申し込み率を上げること、安心して導入してもらうことを目的に制作された動画だ。広告ではなく、自社サイトを活用した点に特徴がある。

「YouTubeの公式チャンネルもしくはランディングページ、営業ツールとして使っていただいている。同社サービスを活用するさまざまな業種の人事担当者に、実際に導入してどうだったのか語っていただき、最後は代表の言葉で締めた」(瀧氏)

広告目的として配信されていないが、WEBサイトやYouTubeオフィシャルチャンネルに掲載され、10万回以上の再生を記録している。

4.購入

クライアントはオフィス用品の取り扱いを行うプラス。オフィス用品の使い方や提供価値が写真ではわかりづらく、どのように使うものか、わかりやすく伝える目的で制作された動画だ。

「最初にオペレーションを決めて、撮影から編集まですべてテンプレート化して制作を行うことで、1本あたりの制作費を2〜3万円台に収め、昨年一昨年で700本以上制作した」(瀧氏)

動画コンテンツであっても他のコンテンツと同様、戦略策定が重要であり、狙ったターゲットに届くよう企画・制作を進めることが重要なポイントとなるようだ。

UUUM株式会社が教える、YouTuberを活用した動画の作り方。

UUUM株式会社は、2013年に業界初の動画クリエイターのマネジメント企業として設立された会社だ。HIKAKIN、瀬戸弘司、佐々木あさひ、はじめしゃちょーなどの動画クリエイターのマネジメントを行っている。

「一般的なバナー広告やテレビCMよりも、YouTuberとのタイアップ動画は能動的に観られやすいと考えている。なので、商材の魅力や特徴を適切に伝えるだけでなく、認知以上の態度変容につなげることができるのではないか。」と話すUUUM鎌田氏。

そんなUUUM株式会社は動画コンテンツを制作する上で、何をKPIとして動画を制作するか、クライアントと丁寧に話し合うことを大切にしている。認知を上げたいのか、興味喚起したいのか、ユーザーを獲得したいのか、売上を獲得したいのかなどを、具体化することから始まる。

「YouTuberは、自らの目線で商品の良いところも悪いところも紹介したり、コンテンツとして面白い動画を作成したりすることを意識している。企業とのタイアップ動画であっても、テレビCMのように与えられた脚本に基づいて動画を作るわけではない。こうした姿勢が、視聴者にリアリティを感じたり、商品に親近感を感じたりするきっかけになっているのではないか」(鎌田氏)

YouTuberを使ったタイアップ動画はテレビ等のマス広告ほどの情報のリーチ力はないものの、既存のマス広告ではリーチが難しくなりつつある若年層へ届きやすい。その上「商品への親近感はコンバージョンへの大きなきっかけにもなるし、SNSとの相性もいいので拡散にも寄与しやすい」と鎌田氏は述べる。

「米国ではYouTuberを活用したコンテンツ作りも盛んに行われているが、企業自身が制作会社を買収するなど、コンテンツ制作機能を取り込む動きも出てきている。今後もこうした動きは加速していくだろう」 と鎌田氏は指摘して締めた。

資生堂が教える、コーポレートを意識した動画の作り方。

美を支える確かな技術を豊富に持ち、研究・開発を行う株式会社資生堂。それらの注目すべき機能や品質、安全性をわかりやすく、かつ面白く伝える動画は現在25本配信されている。

「コーポレートのスタンスで、また、エンターテインメント性を持たせることを意識して動画を制作している。」と話す、資生堂藤岡氏。

藤岡氏は動画制作時のルールについて、「動画(YouTube)内で技術を長々と説明しない代わりに、動画下のWebページで丁寧に解説する構成にしている」と語る。それほど技術に詳しくないユーザーにも見てもらいたいことから、インフォグラフィックやイラストを多用して、できるだけわかりやすく親しみやすく伝えることを心がけているのだ。

必要に応じて関連商品のリンクを貼ることもある。ただし、あくまで技術を知ってもらうことを目的にしているため、リンクは興味を持ったユーザーが商品の詳しい情報を閲覧しやすいよう、ユーザビリティをよくする目的で貼っている。

「もちろん、科学的事実に基づくことは忘れていない。また、閲覧対象は日本だけではないため、グローバルに向けた対応も行っている。ドイツ語、フランス語、中国語、ギリシャ語版などを制作したこともある」(藤岡氏)

ここからは、具体的な事例を紹介する。

上だけを向いて歩こう

株式会社資生堂が、女性の気にするほうれい線を研究していることを簡潔に伝えた動画。「ほうれい線がたるみだと証明するために、寝るときと起きているときとでは、その状態が違うと説明している。ロケ地を資生堂のリサーチセンターにして、私を含めた関係者がエキストラで登場したりするなど、制作費を下げる工夫も」(藤岡氏)

世界は数式でできている

自然科学を数式で表す数理モデルという概念をベースに、肌細胞も数理モデルで表せることを伝える動画。「クリエイターと『数式は難しいが、それ自体はアートではないか』と話していたところ、このような仕上がりになった」(藤岡氏)

工場はワンダーランド!

埼玉県久喜市にあるTSUBAKIの工場を見せるための動画。「食品関係の工場はテレビでよく紹介されることもあるので、一味違う撮り方をすることで新鮮な画にしたいと考えた。カメラを実際にラインに乗せて製品と一緒に流して撮影をすることで、働いている社員でも見ることがない視点からの映像に仕上げた。また、本物のラインを使うため生産が行われないわずかな時間を狙って撮影せねばならない上に、衛生管理が徹底しているため撮影機材の搬入に細心の注意を払うなど、制作には多々苦労があった。」(藤岡氏)

ニコニコ動画から紐解く、皆がハマるコンテンツ。

今どんなコンテンツが注目を集めており、人を熱中させられるのかを知ることは、コンテンツ戦略を立てる上で非常に役立つ。その事例として株式会社ニワンゴが手がけるニコニコ動画を見てみよう。

現在、ニコニコ動画のユーザー数は4300万人(男性約66%、女性約33%)で、日本国民の3分の1が登録していることになる。うち課金ユーザーは236万人だ。

「インターネットに没頭する人々は今、コミュニケーションサービスを最もよく使っている。私たちの生活において、ネットでコミュニケーションへの時間を割くことは、非常に優先順位として高い」と話すニワンゴ杉本氏。

どんな人にも平等に与えられた生活時間は1日24時間。ときには睡眠や食事の時間を惜しんで、コミュニケーションの時間を捻出するほど、何よりも大切なひとときになっている。

では、そこでどのようなコンテンツが選ばれるのか考えると、やはり自分たちが面白いと感じるもの、興味があるもの、自分たちに近いものなどだろう。

「ニコニコ動画では、ユーザーの日常的な会話空間を作ることを強く意識している。運営サイトが前面に出て、ユーザーとともに“場作り”を行う。それに対して、ユーザーを巻き込んでいくスタイルのコンテンツも、多数出てきている(杉本氏)

ライブストリーミング(生中継)や静止画、電子書籍の機能も実装し、コンテンツがさまざまな人々をつなげ、会話を成立させることを大事にしているという。「動画そのものはほかのコンテンツと比べて群を抜いて情報量が多く、ユーザーに理解してもらえるパワーが強いなどの意味では、非常に有利なコンテンツだ」と杉本氏は指摘する。

「ただし、必ずしも動画=強いコンテンツとは限らない。動画をきっかけにした会話軸を作り、それによって各自が会話をしていることを、きちんとモニタリングできる環境を作ってあげることが大切だ。どんなに良質なコンテンツを作っても、それが結局ユーザーに受け取られず、あるいは会話の軸に入っていかなければ、まったく無駄なものになってしまう」と忠告して、杉本氏は締めた。

この数年、日本の動画広告市場は急速に伸びている。2014年の日本の動画広告市場は前年対比約2倍の311億円に到達、2017年には880億円に達するとの調査結果もあるように、動画コンテンツに取り組む企業は日々増えている。

今後、動画コンテンツが一般的になればなるほど、「あらかじめ戦略を立てることの重要性」は増すと考えられる。動画コンテンツが増えれば、コンテンツ間の競争は激しくなることが予想されるからだ。

まずは動画が自社の課題解決に適切な手段なのか、確認する必要がある。その上で、自社が動画を通じて伝えたいこと、最終ゴールを正しく設定し、その上で現状の課題解決につながる制作・運用を行い、見込み客に適切なアプローチをすることが重要だろう。

YouTubeによる、動画戦略策定フレームワークを紹介した記事も、是非に参考にしていただきたい。

執筆:池田園子編集:奥田あゆみ(日本SPセンター)

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