Content Shock論争再び!コンテンツマーケティングの本質を2大著名人が激論

「コンテンツマーケティングは、今後効果が薄れるのではないか?」。アメリカのソーシャルメディアコンサルタントであるMark Schaefer氏は2014年1月、このように主張する記事を自身のブログに投稿した。Schaefer氏は大手のニュース番組への出演歴もある著名なマーケターで、コンテンツマーケティング業界でも影響力のある人物なだけに、この議論は米国のみならず日本でも大きな話題を呼んだ。

彼自身がContent Shock論と名付けた主張の概要はこうだ。記事やSNSをはじめとするコンテンツの量が急激に増加しているため、今後さらなるコンテンツ間の競争激化が予想される。その結果自社のコンテンツをターゲットに届けることがより難しくなるため、コンテンツマーケティングの費用対効果が悪化するのだという。「競争を勝ち抜けるだけの質の高いコンテンツの作成や広告の出稿に対して、より多くのお金を投じる必要が出てくる。資金力のある企業にますます有利な環境になってしまう」(Schaefer氏)。

Content Shock論を巡る当時の議論の詳しい様子については、コンテンツマーケティングラボでも紹介してきた。

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この主張に対して当初から疑問を唱えていた人物の一人が、コンテンツマーケティングの実践者として著名なMarcus Sheridan氏。同氏は実際にコンテンツマーケティングの取り組みによって、経営危機に陥っていたプール施工会社River Pools and Spas社の業績を立て直したことで有名な人物だ。Sheridan氏は、見込み客が抱える疑問を解決することが自社の売上増につながると考え、プールの設置を検討している見込み客向けのコンテンツを自社ブログで発信。「地中に埋めるタイプのプールを作るにはいくらかかる?」「良いファイバーグラス製プールの見分け方は?」といった疑問解決コンテンツによって、「プールを設置したい」と漠然と考えている見込み客が、より具体的に検討できるための道筋を作ったのだ。

River Pools and Spas社による疑問解決コンテンツの例

ちなみにRiver Pools and Spas社による取り組みの詳細は、過去にコンテンツマーケティングラボでも紹介している。

2014年9月、この2人がこれからの時代におけるコンテンツマーケティングのあり方について論争を戦わせた。Sheridan氏は、River Pools and Spas社での成功に裏打ちされた、疑問解決コンテンツの重要性を強調した。一方競合コンテンツの増加によって、施策の費用対効果が悪化することを懸念するSchaefer氏は、それだけでは不十分だと主張。ニッチな分野に大量のコンテンツを投入することで、競合が参入できない状態を作ることこそが必須だとした。

今回はコンテンツマーケティングのカンファレンスとして世界最大規模を誇るContent Marketing World 2014で開かれたこの論争の模様をお伝えする。

コンテンツマーケティングを実施する難易度は上がる!2人の認識が概ね一致した今後の変化

まずコンテンツマーケティングを取り巻く環境の変化については、施策を実施する難易度が今後ますます上がる、ということで2人の認識は概ね一致した。しかし難易度が上がる要因については、意見が分かれた。

Schaefer氏は、コンテンツ量が急激に増えることによって、人々の限られた消費時間を巡るコンテンツ間の競争が激化することを懸念した。同氏が見せたあるデータによると、2020年までの間にインターネット上のコンテンツ量は約600%以上も増えるという。一方でモバイル端末の普及などにより、人々による一日当たりのコンテンツ消費時間も、過去3年間で約2時間増えている。ただ一日の時間に限りがある以上、いつかはコンテンツ量の増加ペースが人々の消費能力の伸びを上回る時が来るとSchaefer氏は指摘する。

しかしSheridan氏は「物事を単純化しすぎではないか」と疑問を呈した。「仮に一日のコンテンツ消費時間が10時間といっても、その大半はFacebookのタイムラインやバズニュースのような、どうでもいい記事が占めている時間だ。いざ購買検討や重要な調べものをする必要性が出てくれば、そのための時間はまだまだ捻出できる」。

「コンテンツマーケティングを実施する難易度が上がる要因」としてSheridan氏が強調した点は、競争への後発者が先行者を追い抜くことがますます難しくなるということだった。同氏は「SEOやソーシャルメディアでの競争は今後数年でさらに激しくなる。後から参入した者にとってますます不利な状況になるはずだ。たとえばScott Strattenは素晴らしいが、もし彼がTwitterを始めたのが2009年ではなく今日だったら、今ほどの影響力は持てなかっただろう。これが現実だ」と話す。ちなみにScott Stratten氏は、カナダ出身の著名なソーシャルマーケター。Forbes誌によって、ソーシャルメディアにおける世界のインフルエンサートップ5に選ばれている。

Content Marketing World 2014で討論するSchaefer氏(左)とSheridan氏。

コンテンツマーケティングの未来はどうなる?

それでは施策を実施する難易度がますます上がることで、コンテンツマーケティングは今後どうなるのか?Schaefer氏は次のように語る。「コンテンツマーケティングを実施する上での費用対効果が悪化する。競合が増えれば、検索流入を獲得するための良質なコンテンツの作成や、広告費にますますお金を投じなくてはならなくなる。資金力のある大手企業に有利な状況になる」。

これに対してSheridan氏は、「コンテンツマーケティングの定義は、その人のバックグラウンドによって異なる。コンテンツマーケティングの未来はどうなる?という問い方では正確に答えることは難しい」と述べた。「コンテンツマーケティングには、チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)向け、ビジネスオーナー向けの2種類がある。私の場合は後者だ。この違いによってSchaefer氏が考えるコンテンツマーケティングの定義は私とは異なるので、正確には答えられない」と語り、未来のコンテンツマーケティングについての議論はかみ合わずに終わった。

2人が持論を熱弁!見込み客の疑問解決と競合コンテンツ締め出しの重要性

次に2人は、自身が考えるコンテンツマーケティングのあり方について議論した。Sheridan氏は「私が考えるコンテンツマーケティングとは、見込み客の疑問を解決する取り組みを指す。コンテンツマーケティングは20年後でも重要か?と問われても正確に答えられないが、見込み客の疑問を解決する取り組みは20年後でも重要か?という質問であれば、答えは間違いなくイエスだ」と語った。Sheridan氏によると、見込み客の疑問を解決することは販売増に大きく貢献する。疑問解決コンテンツを使ったコンテンツマーケティングによって、経営難の企業を立て直した実績に基づく主張といえるだろう。

疑問解決コンテンツを重要視するSheridan氏に対してSchaefer氏は「それには100%賛成だ」としつつも、次のように反論した。「コンテンツマーケティングについてあまり語られない部分になるが、必ずしも優れた疑問解決コンテンツが競争に勝つために必須になるというわけではない。ニッチな分野において圧倒的な量のコンテンツを出し、競合を締め出す最初のプレイヤーになることこそが重要だ」。

競合を締め出す最初のプレイヤーになることの重要性を示す一例として、Schaefer氏は次のような取り組みを紹介した。あるコンテンツマーケターは、歯医者向けにコンテンツを制作することになった。そこで彼は、歯医者の分野で人気のある検索キーワードに基づき3本の疑問解決動画を制作。次にこの3本にそれぞれ微修正を加えることで、動画のバリエーションをさらに50本増やしたのだ。これらの動画を様々な動画サイトで公開した結果、検索結果の上位9位を彼の動画を掲載したページが独占するにいたったのだという。

検索結果上位を席巻するためにほぼ同じ内容の動画を量産したこの取り組みに対して、Schaefer氏は「ばかげた施策だ」と言及。しかし疑問解決コンテンツを作るだけでなく、それをニッチな分野に大量に投入することで、競合が入れない状態を作ることこそが最も重要なのだと強調した。

これに対してSheridan氏は、「今のGoogleは賢くなっているため、最も優れた疑問解決コンテンツを上位に表示し、不正なコンテンツは罰するようになっている。非常に良いことだ。われわれは見込み客に耳を傾け、彼らの課題を解決してあげなくてはならない」と持論を繰り返した。

Schaefer氏が昨年に発したContent Shock論を発端として、今回のセッションでは今後のコンテンツマーケティングのあり方について議論された。
見込み客の疑問を的確に解決するコンテンツの重要性を強調するSheridan氏の考えは、Schaefer氏も認めている。ただそれに加えて、大量のコンテンツを特定の分野に投入することで、競合の参入障壁を高めることが最も重要だというのがSchaefer氏の主張だった。この主張の背景には、コンテンツ量(競合)が急激に増えることが、コンテンツマーケティングの費用対効果の悪化につながるという同氏の懸念がある。

今回の議論はどちらの考えがより重要か?という観点で進められていたが、これをより実態に即して言い換えるならば、疑問解決コンテンツさえ出せば十分なのか?もしくはさらに競合を締め出す環境作りも併せて実施する必要があるのか?ということではないか。こう考えると2人の考えは二者択一ではなく、自社の商品の特徴や競合状況などの要因に合わせて選択するという性質のものではないだろうか。

一方われわれコンテンツマーケティングラボが考えるコンテンツマーケティングは、見込み客の認知をどのように獲得するかによって、「エデュケーショナル型」「コンテンツSEO型」「ネイティブ広告型」「面白コンテンツ型」の4つに大きく分類できると考えている。

Sheridan氏が唱えていた疑問解決コンテンツは、このうちのエデュケーショナル型にあたるだろう。Schaefer氏も疑問解決コンテンツの重要性を強調しているものの、同時に大量のコンテンツによる検索結果画面の席巻に言及している点で、コンテンツSEO型の要素も含んでいるといえそうだ。

それぞれの型の詳細に加えて、実際に顧客タイプごとにどのようなコンテンツを投じる必要があるのか、については以下の2本の記事を参考にしてほしい。

ちなみにSchaefer氏は2015年1月、Content Shockを乗り越えるには、コンテンツをターゲットに届けるための戦略的な試みである”Content Ignition”が必要だとするブログ記事を投稿。「質の高いコンテンツは出発点でしかない」として、コンテンツの閲覧やエンゲージメントの向上、SNSでのシェアにまでつなげることなどが必要だと主張した。さらにこれを実践するための戦略を説いた同氏の最新刊“The Content Code”が3月に出版されたばかり。今回のセッションで議論された課題の解決について、著名マーケターの同氏が示した考えに注目が集まりそうだ。

執筆:三友直樹(日本SPセンター)編集:奥田あゆみ(日本SPセンター)

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