コンテンツマーケティングで役立つペルソナ設定のコツとは?

企業によるメッセージやコンテンツを受け取った消費者が、あたかも自分のために用意されたのではないかと感じてしまう。それほど消費者のニーズに刺さるコンテンツを作るには、彼らを深く理解することが不可欠だ。

マーケティングにおいてターゲットとなるユーザー像を明確にするために、不可欠な手法がペルソナだ。

ペルソナとは、「ターゲットとなるユーザーを代表するひとりの人物を詳細に記述したもの」と定義できる。「20代の独身男性」「趣味が旅行」といったユーザー群ではなく、特定のひとりにまで人物像を絞り込むことがポイントだ。

ペルソナを用意することで、見込み客像が無味乾燥なデータの塊ではなく、人格を持った人物として具体的に把握しやすくなる。それによって彼らが抱えている問題や解決策をイメージしやすくなるだろう。

一方でペルソナについては、疑問や懸念もつきまとう。たとえば「どんな情報を盛り込むべきか分からない」「特定のひとりに絞り込んでしまうことで、ターゲットを極端に狭めてしまうのではないか」といった声をよく聞く。

こういった点も踏まえつつ、今回はContent Marketing Instituteに掲載されていたこちらの記事を参照しながら、コンテンツマーケティングで役立つペルソナの作成方法について解説していきたい。

ペルソナ設定のコツは「共通点」を見つけること

ペルソナに盛り込む人物情報と一言でいっても、性別や職業、家族構成、趣味、居住地など多岐にわたる。その気になればいくらでも書き込めてしまうため、的確に情報を絞りこむにはコツが必要だ。

BtoBマーケティングの専門家として著名なAldath Albee氏の主張を紹介した今回の記事によると、ポイントは「ターゲット層にみられる共通点」。これをうまく盛り込むことで、彼らの特徴を適切に表したペルソナが出来上がるというのだ。

反対に一部の人にしか見られない特徴を強調したペルソナにしてしまうと、極端に絞られた人を表してしまう恐れがあるという。

この点について、Albee氏は次のように例えている。

「ターゲット層の中にユニークな特徴が見つかると、ついそれを強調したペルソナを作りたくなってしまう。しかし問題は、(目立つ)赤い靴を履いた人に注目してしまうと、残りの大多数の白い靴を見落としてしまうということだ」。

Albee氏による主張のイメージ図。ワントゥワンマーケティングのように、一人ひとりに合わせた施策を打てる場合を除いて、あくまで共通点(白い靴)に着目することが重要だという。

「共通点」として盛り込むべきターゲット情報

それではターゲット層にみられる「共通点」とは、具体的にどういった要素を指すのか?同記事では触れられていなかったので、補足したい。

先にも述べたように、ターゲット層の共通点を盛り込む目的は、彼らの特徴を適切に表したペルソナにするためだ。

ターゲットの特徴というと、性・年代や職業といった属性情報に目が行きがちになる。しかし属性情報だけのペルソナは、コンテンツマーケティングでは役に立たない。なぜなら作成するコンテンツを洗い出すために必要な要素、すなわちターゲット層の情報ニーズが入っていないからだ。

ターゲットが商品を認知し、購入にいたるまでに必要な情報が何かを知ることによって、作るべきコンテンツを見極める。これがコンテンツマーケティングにおけるペルソナの最も大きな役割だ。

情報ニーズがペルソナの骨格であり、性・年代などの属性情報は、あくまでその人物をイメージしやすくするための肉付けに過ぎない。

使えるペルソナの9要素

この場合の情報ニーズとは何かを説明するにあたっては、Albee氏がリストアップした、ペルソナに盛り込むべき9つのポイントが参考になりそうだ。情報ニーズを洗い出すために必要な項目がいくつか含まれている。

  1. 日常生活のシナリオ

    ターゲットの日常生活を記述することで、彼らの視点で物を考えることが容易になるだろう。ペルソナが今にも語りかけてくると思えるほどに、人物像をイメージしやすくすることが重要だという。

    ただしペルソナの日常生活を毎回記述する必要があるというわけではないだろう。たとえばBtoB向けのペルソナであれば、企業の担当者の日常生活を描く必要は必ずしもなさそうだ。

  2. 具体的な目的

    ペルソナが何を達成したいかを明らかにすることで、彼らを手助けするために必要なコンテンツを洗い出せるだろう。

    彼らの目的を記述する際は、「売上を増やす」といった漠然としたものではなく、「商品化までの期間を短縮したい」といった具体的なものに落とし込むべきだ。

  3. 主な課題

    課題を記述する際も、同じく具体的に書き出すことが重要だ。たとえば「商品化までの期間を短縮したい」というゴールでの課題を具体的に書くならば、「作業の自動化が不十分なことによって、商品化が1ヶ月遅れている」という具合になるだろう。

  4. 仕事への姿勢

    「“結婚していて2人の子供と犬がいて郊外に在住。年収は1000万円”といった月並みなペルソナがあまりにも多すぎる」とAlbee氏は嘆く。こういった情報は住宅や自動車を販売する時であれば役立つかもしれないが、多くの場合役には立たないという。

    それよりもペルソナの職業や仕事への姿勢を盛り込むほうがより人物像が明らかになるため、作るべきコンテンツや、彼らとの関係を深めるためのコミュニケーションを洗い出すのに役立つとしている。

  5. 購入障壁

    一般的に購入障壁というと価格がよく挙げられる。しかしAlbee氏によると、購買を妨げている要因を購買ステップごとに細かく洗い出す必要があるという。たとえば「配偶者を説得するには?」「もし従業員が新しいワークフローを受け入れてくれなかったらどうしよう?」といった具合だ。

  6. 購入までに生じる疑問

    「購買ステップごとに生じる疑問を書き出す必要がある」とAlbee氏は語る。「なぜこの商品が私にとって重要なのか?」「目的を達成するために、この課題をどう解決するべきか?」といった疑問を適切につないでいくと、一つの購買ストーリーが出来上がるはずだ。

  7. コンテンツの好み

    ターゲットによるコンテンツの好みを明らかにする。ここでは次の6つが含まれる。

    • チャネル
    • SNSの使い方
    • コンテンツのトーンやスタイル
    • コンテンツのフォーマット(テキストや動画、もしくは文章の長さなど)
    • 双方向性(ROI計算ツールやクイズ、ウェビナー、Q&Aセッションなど)
    • 情報収集方法
  8. よく使う検索キーワード

    商品やブランドを表す直接的なキーワードだけでなく、一般的な疑問に関するキーワードも含まれる。一般的に人々は会話の中でよく使う言葉を検索キーワードとして入力する傾向がある。そのため顧客や見込み客との会話で、有効なキーワードのヒントを探ることも重要だという。

  9. 購買に至るまでのシナリオ

    ターゲットが購買に至るまでのシナリオを具体的にすることで、コンテンツをより有効に活用できるようになる。つまり登場人物(ペルソナ)が購買に至るまでにどんな疑問を持ってどのように行動したかという一連のストーリーを洗い出すと、必要なコンテンツとその組み合わせ方が明確になるのだ。

上記のようなターゲット情報をより整理するために、弊社は以下のようなシートを使っている。情報ニーズとして「購入動機」「初期の不安」「検索キーワード」「情報収集時の障壁」「比較検討時の障壁」「購入を決めた理由」の6つを入れているほか、彼らの購買行動を表す項目やKPIなども加えている。

スロージューサー購入者のペルソナ設定例

昨年に出版した書籍「Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書」では、さらに詳細を解説しているのでぜひ参考にしてほしい。

また今回の記事の元となった主張を展開しているAlbee氏は、BtoBマーケティングの専門家で、Twitterで2万人以上のフォロワー数を誇るインフルエンサーだ。コンテンツマーケティングラボでは、2015年のContent Marketing Worldで開かれた彼女によるセッションの取材記事を出している。

関連する過去記事

コンテンツマーケティングはチームで進めることが一般的なので、作るべきコンテンツや運用方法などについてメンバー間の意見が分かれることがある。

そういった事態が起きても、ファクトに基づいて適切に作ったペルソナがあることでメンバー間の認識を合わせることができるだろう。施策をスムーズに適切に進めるためにも、ペルソナは欠かせない手法なのだ。

またペルソナを一度作ったら、それで終わりではなく、結果に合わせてペルソナを改良していくなど、使っていくという姿勢が重要だ。

一度作って後で振り返ることもないという使えないペルソナではなく、使えるペルソナを作って活用してほしい。

執筆:三友直樹(日本SPセンター)

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