コンテンツマーケティングとコンテンツストラテジーの“違い”とは?

「コンテンツマーケティングに関するバズワードがここ2,3年で増えており、SEOやオンラインマーケティングにおいて無視できない要素となっている」と主張するのは、SEOのプロフェッショナルであるSelena Waite氏だ。しかし一方で、頻出するバズワードの中には同じ用語であっても発信者によって微妙に使い方が異なるケースも多く見られ、本来の意味をはき違えているのではないかという懸念もあるという。Waite氏が挙げている代表的な例が、“コンテンツマーケティング”と“コンテンツストラテジー”の2語だ。

では具体的に、両者はそれぞれどう定義されるべきなのだろうか?そしてコンテンツの力を最大化するために考えておくことは何なのだろうか?著者の主張を踏まえて、2つの用語の違いを今一度整理し、自社のコンテンツマーケティングにおける今後の“あるべき姿”を考えてみよう。

2つの用語の違い。それは「コンテンツ」単体を考えるのか、「マーケティング」をマクロで考えるのか。

著者によると“コンテンツマーケティング”とは、「既に公開されたコンテンツをいかに拡散し、多くの人にとどけるか考える行為」だとしている。この場合のコンテンツとは、自社チャネルの外部へ拡散・閲覧されることを想定して作られたわけではない上に、達成するべき目的も十分に設定されていないという。そのようなコンテンツを自社チャネルの外部にいるターゲットにどのように届けるかを考えることが、コンテンツマーケティングの役割というわけだ。

一方で“コンテンツストラテジー”とは、「マーケティングの基盤となる考え方・戦略」であり、コンテンツを送り届けることにより、マーケティングのゴールを達成するための戦略を考えることだと解説している。

つまり”コンテンツマーケティング”が既存のコンテンツの拡散という限定的な役割にとどまるのに対して、“コンテンツストラテジー”とは設定したゴールを達成するための戦略作りのことなのだという。コンテンツとストラテジーの関係性を車で例えるとするならば、それぞれのコンテンツが“車体のパーツ”であり、ストラテジーがそれらを動かす“エンジン”ということになる。

ちなみに“コンテンツマーケティング”の意味の捉え方に関しては、われわれコンテンツマーケティングラボの考え方とは若干異なっているが、マーケティングの成果を挙げるために取り組むべきなのは、コンテンツを送り届けるための戦略、つまり“コンテンツストラテジー”だという著者の主張とは共通する部分が多い。むしろ、Waite氏の主張するコンテンツストラテジーこそが、当コンテンツマーケティングラボが唱えるコンテンツマーケティングに近いといえる。この意味から、Waite氏の主張する“コンテンツストラテジー”を実践するための具体的なメソッドについて紹介したい。

コンテンツストラテジーを生み出すポイント。Who,What, Where,When,Why。5つの「W」を基点に考えよう。

1. Who ~誰に発信するのか~

ターゲットのペルソナを理解することが重要だ。ペルソナを分析することで、どのような人物をターゲットに設定し、どのチャネルを狙うのかを考えることができる。特にネット社会となった現代では「オンラインペルソナ」を描き出すことが必要だ。

「オンラインペルソナ」とは、従来のペルソナ設定をさらに拡張したものだ。インターネットの普及により、情報の提供の仕方が「プッシュ型」から「プル型」になった今、どのように集客し、どのように顧客の滞在時間を長引かせるのかを考えるために、ターゲットの行動パターンや接触するメディアも考慮したペルソナ設定が必要だ。また、メッセージをどう拡散させていくかを検討するためにも、彼らがどういったソーシャルチャネルに触れているのかを考慮しておく必要もあるだろう。

2. What ~何を伝えるか~

コンテンツを伝える時は、「点」ではなく、「面」で考えよう。“コンテンツ単位”で考えるのではなく、ターゲットがコンテンツに触れる前後の流れも踏まえて、戦略をプランニングしよう。それぞれのコンテンツを自由に回遊でき、相互に参照できるような構造を考えるのだ。

コンテンツを作る時は、理想的なアウトプット形式を見極めること。コンテンツとはブログ記事だけでなく、ホワイトペーパー、調査資料、PDF、e-Book、参加型コンテンツ、サイト上の販促物など、様々な形式が考えられる。狙ったターゲットとチャネル、発信したいメッセージなどから、最適なフォーマットが何なのかを考えよう。

また過去のコンテンツを掘り起こして整理することも大事だ。過去何年かのコンテンツを振り返り、それらがいかにソーシャルチャネルでシェアされているか、どのようなページがターゲットを惹きつけているか、多くリンクされているのかを分析してみよう。その結果から、反響の大きいものやターゲットにより強くアプローチしているコンテンツタイプを見つけるのだ。

さらに、既存サイトの「サイト内検索」の結果から、どのようなキーワードにニーズが高いかを分析してみよう。Google Analyticsを活用することによって、ユーザーがサイト内でどういった情報を探しているのかを把握し、今後のコンテンツの企画やトピックの選出の参考にしよう。

既存サイトだけでなく、様々なツールを使うことで、外部サイトの情報も分析できる。ソーシャルチャネルのための検索エンジンであるBottlenoseBuzzsumoSocial Mention Meshfireなどのツールを活用することでウェブ上のトレンドを把握し、インスピレーションを得ることも重要だ。特定のトピックに関して、どのように話題に上っているのかをリサーチできるだけでなく、どのチャネルで誰がフォーカスしているのかまでも明らかにすることができるのだ。また、どのような検索用語が頻繁に使われているのかをチェックできるGoogle Trendsの利用も有効だ。

Bottlenose。FacebookやTwitterなどの主要なSNSに掲載されたコンテンツを検索できる

同じくウェブ上のトレンドを把握するためのツールとして、コミュニティーもチェックしてみよう。ユーザーコミュニティでやりとりを行うQuoraRedditGoodなどをチェックすれば、今現在、世間ではどういったことが話題に上っているのかを知ることができる。

コミュニティーによるQ&AサイトのQuora。

さらにもしニッチなターゲットや商材を扱うコンテンツを展開したいと考えているなら、クローズドなコミュニティーも良いかもしれない。特定の企業やグループが属するフォーラムをリサーチしてみることもおススメだ。

外部のコミュニティーだけではなく、カスタマーサポートに集まったデータのように、自社が抱える情報も活用してみよう。どのような問合せがあるのか、どのような顧客がいるのかなど、カスタマーサポート部門のデータを分析することで今後のコンテンツ戦略のヒントが得られるだろう。

3. Where ~どこでコンテンツを提供するか~

自社メディアだけでなく、外部メディアの活用も検討することも重要だ。コンテンツを掲載する場所と、そこで発信するメッセージについても深く考慮しておく必要がある。もっとも効果的なのは、自社メディアと外部メディアの両方を活用し、発信するメッセージの住み分けを行うことだ。例えば、外部メディアではブランド色や商品訴求を控えめにしたユーザーにとって関心の高いコンテンツを供給し、自社メディアではブランドバリューをしっかり伝えるなどコンバージョンを意識したコンテンツを発信する――そういった、複数のメディアを組み合わせた展開を考えることが重要だ。

外部メディアを検討するする際は、そのメディア自体が持つ「文脈」を考慮したアプローチも同時に考えよう。発信したいコンテンツのトピックと、そのメディアが取り扱うテーマとの間に強い関連性があるかどうかが大きなポイントとなる。

4. When ~いつコンテンツを提供すべきか~

戦略のスケジュールは、半年スパンで考えよう。戦略を緻密に考えすぎたり、コンテンツ制作に時間をかけすぎるのはNGだ。時間の経過とともに、ペルソナも、ターゲットも、企業メッセージも、発売される製品も変化する。ポイントは、プランを“ゆるめに”立てることと、スケジュールを“短く”設定することだ。

その際に、狙った時期に合わせて適切なコンテンツを適切なタイミングで発信するためにも、エディトリアルカレンダーを用意しておこう。これは、同時に制作を行う外部の代理店や社内メンバーとの情報共有に役立つツールとなるだろう。

5. Why ~なぜコンテンツを提供するのか~

コンテンツを提供する際は、ゴールを設定しよう。どのペルソナを対象とした施策にも目的があり、さらにそれはマーケティング“全体”のゴールを達成するためのものであるはずだ。例えば外部メディアによる拡散や、インフルエンサーへのリーチ、見込み客の獲得、コンバージョンなど、最終的にどのような結果を期待するのかを明確にしよう。

その際に、ターゲット層を以下の3つのグループに分けて考えることが重要だ。

  • すでに自社との接点があり、コンバージョンしてくれる確率が高いグループ
  • 自社との接点はまだないが、好意を持ってくれているグループ
  • ニュートラルな視点で、ソーシャルチャネルで自社の情報を拡散してくれるようなグループ

コンテンツ単位で拡散することに注力するのではなく、コンテンツ群を使ってどのようなターゲットを対象に、どのような結果を導き出すのか――それこそがWaite氏が語るコンテンツストラテジーであり、当コンテンツマーケティングラボが重視していることでもある。戦略的にコンテンツを考えることで、自社メディアと外部メディア両方をうまく活用し、ターゲットに対して最も有効的なアプローチを模索していくことができるだろう。

執筆:隠岐由起子

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