BtoB向け記事でリードを獲得!72種類ものブログを運営する企業が語るコツとは?

BtoB向けブログ運営で重要な考え方とは?

9月にオハイオ州で開かれたContent Marketing World 2014のセッションで、BtoB向けブログで成功した代表事例を聞くことができた。スピーカーは米Indium Corporation社のRick Short氏。同社は、電子部品向けの原材料や部品の販売をグローバルに展開している。主な顧客はメーカー企業のエンジニアだ。

Short氏は、同社でマーケティングディレクターを務めている。リード獲得や売上拡大を念頭に、BtoB向けブログやソーシャルメディアの企画・運営などに携わってきた。これまでに取り組んできたコンテンツマーケティング施策は数多くのメディアに取り上げられ、BtoB向けブログ運営の分野では著名なマーケターの一人だ。

9月に開催されたContent Marketing World 2014でのセッションに登壇するShort氏。30年以上にわたりIndium Corporation社でマーケティングや海外営業などに携わってきた。

そのShort氏は、BtoB向けブログの運営に際して重要だという2つの考え方を挙げた。1つ目は、ターゲティングを明確にした上で、ブログの専門分野を絞ること。マーケティング業界の著名な著作家であるSeth Gordin氏による言葉を引用しながらこの点を強調した。

“ It’s no longer possible to become important to everyone, but it is possible to become important to a very-small everyone, to a connected tribe that cares about this voice or that story or this particular point of view.”

全ての人にとって重要な情報を発信することはもはや不可能だ。しかしごく限られた領域の中の「全ての人」に重要に感じてもらえる情報やストーリー、視点を提供することは可能だ。

また2つ目の重要項目として、専門領域を定めるだけでなく、その中で質の高いコンテンツを発信する点も強調した。Indium Corporation社はBtoB向けブログによってリードを獲得し、売上増につなげることを狙いとしているが、その中でも「コンテンツこそが非常に重要な役割を果たす」とShort氏は話す。ここでもGordin氏による言葉を引用しながら、コンテンツの重要性を強調した。

“If it’s not worth subscribing to a particular voice or feature or idea, if it’s not worth looking forward to and not worth trusting, I’m not sure it’s worth writing, not if your goal is to become meaningful.”

購読する価値がない上に、楽しみに待ってくれる、もしくは信頼してくれる読者もいない。そのようなコンテンツによってあなたの存在意義を確立することはできないだろう。

ブログ開設で問い合わせ数が600%増!Indium Corporation社の取り組み

このように特定の専門領域の中でのコンテンツ発信を重視しているIndium Corporation社だが、具体的にどのようにBtoB向けブログを運営しているのか?

同社が見込み客獲得のためにBtoB向けブログを開設したのは2009年。「From One Engineer to Another」というブログで、エンジニアの技術的な疑問に応える記事や動画の配信を始めたのだ。社内のエンジニアを中心とする複数のスタッフによる記事を発信することで、見込み客の獲得を狙った。

Indium Corporation社のBtoB向けブログ「From One Engineer to Another」。記事の読者がスムーズに問合せできるよう、画面右上には「CONTACT US」ボタンが目立つ形で表示されている。

効果はブログを始めて間もなくあらわれたという。この施策によって、関連するキーワードによる検索結果画面において、自社ブログを上位に表示させることに成功し、検索流入を取り込んだ。ブログを始めて数カ月後には、四半期当たりの問い合わせ数が約600%増えたという。

また同社のブログは、ソーシャルメディアやコンテンツマーケティング関連のメディアにも注目されるようになった。Content Marketing Instituteをはじめ数多くのメディア・機関が、「BtoB向けブログの代表的な成功事例」として、同社の施策を取り上げたのだ。

問合せ増の要因は専門ブログ運営で読者の信頼を勝ち得たこと

このように同社はコンテンツマーケティングによって、見込み客を大幅に増やすことに成功した。成功の要因は何だったのか?施策を主導したShort氏は「読者の信頼を勝ち取ることが最も重要」と話す。

そのためには、ブログのカバー範囲を特定のジャンルに絞ることと、そのジャンルにおいて「先駆者・オピニオンリーダー」(Thought leader)的な地位を確立する必要があるとした。同社の場合、現在72種類もの異なるブログを運営している。見込み客による検索キーワードごとに、それぞれのブログを最適化させることで、ニッチな専門分野での検索流入を取り込もうとしたのだ。当初リストアップしたキーワードの数は11個ほどだったが、すぐにそれは500個までに膨れ上がったという。ただ500種類のブログを運営することはさすがに難しいため、最終的に72種類まで絞り込んだ。これらを現在20人ほどの執筆者で運営している。ただ72種類全てのブログで独立した記事を発信しているわけではない。執筆した記事が複数のキーワードに対応しているようであれば、該当する複数のブログで共有する形で運営している。

ブログの執筆者一覧。彼らによる記事を72種類のブログに掲載している。

同社による試みは、細かくターゲティングされたブログの運営だけではない。読み手からの信頼獲得をより確実なものとするために、執筆者に関する情報を積極的に開示することで、読者とのコミュニケーションを促進しているのだ。「読み手に影響を与えるには、信頼を得ることが重要だが、そのためには、運営の裏側を見せることが効果的だ」とShort氏は語る。具体的には、社内のエンジニアや各ブログの運営者の顔写真や電話番号、メールアドレスを掲載することで、執筆者に関する情報を透明化した。また普段着の社員たちがブログについての考えを語った動画もアップし、スタッフの人柄も伝わるようにした。これによって読者が執筆者に直接問い合わせしやすい環境を整えたのだ。

ブログに掲載されている執筆者の情報。問合せ情報に加え、これまでにIndium Corporation社で携わった業務や実績などが詳細に記されている。

「From One Engineer to Another」とはどのようなブログなのか、それぞれの執筆者たちが語った動画

72種類のブログ運営者が語る…BtoB向けブログの10か条

「BtoB向けブログで売上につなげるために必要な読み手の信頼を獲得するには、特定の専門領域で先駆者・オピニオンリーダー的な地位を確立することが必要になる」。Short氏はこのような考えのもとブログを運営してきた。さらに同氏は一歩踏み込んで、ブログ運営にあたり必要な細かなノウハウも披露した。ここではそこで語られた10のノウハウを順番に紹介していく。

1.ゴールから逆算する

Short氏は、「あらかじめゴールを設定しなければ、そこにたどり着くことはできない」と述べ、ゴールから逆算した上で施策を考えることの重要性を強調した。ちなみに同社が設定しているゴールは売上拡大とマーケットシェアの引き上げだ。

2.適切な項目を計測する

ゴールを設定した上で、それを適切に計測できる指標を決める必要があるとした。計測し得る項目としては、問合せの数やホワイトペーパーのダウンロード数、イベントへの参加者数など様々だが、ポイントは計測とレポーティングが容易であることに加え、メンバーが計測の重要性について納得できるものであることだという。

3.施策のプロセスを確立する

ゴールを設定できたとしても、個々の施策がそれとどう紐づいているのかあいまいになるという事態は起こり得る。そこでShort氏は、ゴールに至るまでのプロセスを明確にすることを提案する。たとえば同社の場合、「コンテンツの発信」「問い合わせの獲得」「売上の増加」の3つのステップを基本導線としてメンバー間で共有している。そのため読み手が問い合せをしたくなるようなコンテンツとは何か?サイトに掲載する情報やユーザビリティはどのようにすべきか?など課題も明確になるという。

4.社内から特定ジャンルのオピニオンリーダー(Thought Leader)を輩出する

「専門領域でオピニオンリーダーがいることが、読み手の信頼獲得につながる。特にわれわれのようなサイエンスの分野では、彼らによる率直で透明性の高い情報を発信していくことが重要になる」と語った。しかし誰もがオピニオンリーダーになれるわけではないため、適切な人材を採用することが重要になるという。

5.施策を現実的に評価する

ブログを運営するにあたり、自社のリソースや顧客像などについて正確に把握するよう務めることが重要だという。見込み客の人物像や彼らが価値を置いている事柄、彼らの需要を満たすために自社に出来ることやリソースなどについて、希望的観測を排して現実的に評価する必要があるのだという。

6.信頼される情報を発信する

Short氏は、信頼の向上につながるコンテンツの条件として、透明性の高さを挙げた。一例としてDove社による下着の広告を紹介した。Dove社は下着の広告モデルとして、一般にありがちな完璧な体型のスーパーモデルではなく、一般人を起用した。「スーパーモデルはどんなに美しくてもリアルではない。消費者はそこに嘘があると感じてしまう」(Short氏)。

7.自分のキャラクターを確立する

読者に対して、どのように問いかけるかが重要になる。企業のようにかしこまった形ではなく、個人同士で話すような雰囲気でのコミュニケーションが望ましいという。「記事を執筆するエンジニアたちには、自分自身のペルソナを確立しろとアドバイスしている」をShort氏は話す。

8.ターゲットを設定する

Short氏は前述のように、顧客像を明確に把握することの重要性を強調した。「見込み客について、会社名や役職などのビジネス上の属性だけでなく、家族構成や休日のアクティビティーなど、個人的な属性も考慮しなくてはならない」とShort氏は話す。

9.顧客の疑問に先回りして答える

Short氏は「顧客が今後疑問に感じると思われる点を予想する。そこにコンテンツのヒントはある。適切に疑問に答えれば、スターになれる」と話した。

10.自社について語ってくれる人をリスペクトする

「自社について語ってくれる人を見分けるだけでなく、リスペクトしなければならない。彼らは企業に成功をもたらしてくれる金の卵だ。そのためIndium Corporation社では、外部向けのトレーニングなどを実施し、彼らの間でわれわれの話題が上る機会を増やしている」(Short氏)。

今回の記事で触れている考え方や読者の信頼を獲得するノウハウには、BtoB企業の方にとってはあまり目新しくないものも含まれていたかもしれない。少なくともContent Marketing Lab編集部も、セッションでこの話を聞いた時にそう感じた。しかしながら、大事なのは600%もの問合せ増を達成したIndium Corporation社がこのように述べている、という重みだ。72種類ものブログを運営しているIndiumCorporation社が、これらの読者の信頼を獲得するノウハウを自社の成功要因として挙げているということをしっかりと受け止め、私たち編集部も実践してゆかねばと感じた。

執筆:三友直樹(日本SPセンター)編集:野口聖晃 奥田あゆみ(日本SPセンター)

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