疑問に答えてリードを増やす、啓蒙コンテンツ活用のポイント

ユーザーのすべての疑問に答えるコンテンツを用意することで「先生」としての信頼を獲得し、業界の「Thought Leader」になることの重要性を提唱してきたMarcus Sheridan氏。以前、当サイトで紹介したRiver Pools and Spa社の事例)では、啓蒙コンテンツによる顧客獲得の強化を指揮し、経営不振に陥っていた同社の売上を大幅に回復させた実績を持つ。

River Pools and Spa社の啓蒙コンテンツの中心だったのはブログ記事だが、いまや啓蒙コンテンツは多様な広がりを見せており、多くの企業やブランドにおいて、さまざまな形式で展開されている。Sheridan氏も、もはやブログというスタイルにこだわるのではなく、次の段階に発展することを考える時期に来ていると主張。そこで啓蒙コンテンツの新たな姿として同氏が推奨するのが、「ラーニングセンター」だ。

コンテンツ形式は、ユーザーが選ぶ。学びに特化した新プラットフォーム

「ラーニングセンター」とは、企業が用意する啓蒙コンテンツすべての入り口となる場所だ。ユーザーの疑問に答えることで信頼獲得と顧客育成を実現してきた従来のブログ記事からさらに発展した概念であり、多様な形式のコンテンツが一つのプラットフォームで展開されたものだと言える。とはいえ、単にさまざまなコンテンツへのリンクの寄せ集めではない。ユーザーがどんな方法でコンテンツを学びたいかを自由に選べるように設計されていることが、大きなポイントだ。ページ内で要点をスピーディに理解したいのか、e-Bookなど活字でじっくり読みたいのか、動画でプレゼンテーションを視聴したいのか――ユーザーが望む形式で“学び”を得られるようになっている。

ひとつのコンテンツを、多様なスタイルで展開。「Health Catalyst」の事例に見る“おもてなし”設計

記事の中ですぐれた事例として取り上げられているのが、ヘルスケア業界のデータウェアハウスとして台頭している「Health Catalyst」社のラーニングセンターである。企業サイトのトップページから「Knowledge Center」をクリックするとラーニングセンターである以下のページが表示される。

Health Catalystのラーニングセンター。コンテンツが、プレゼン資料やホワイトペーパー、事例集など形式ごとに区分けして掲載されている。

コンテンツマーケティングを始めてからわずか1年で、同社は既存顧客や優良見込み客、一般のサイト訪問者それぞれの情報ニーズに応えるコンテンツを展開し、驚くべき利益を生み出した。

1. 学びのスタイル別にコンテンツをカテゴライズ

Health Catalyst社のラーニングセンターには、多くのコンテンツが格納されている。コンテンツ群は形式ごとに分類されており、「ウェビナー&プレゼンテーション」「ホワイトペーパーとレポート」「導入事例」「オピニオンコラム」「ebook」「Q&A」などにカテゴライズされている。ユーザーが自身のTPOに合わせてどのソースから学びたいかを選べるように設計されているのだ。

各カテゴリ内のコンテンツページでは、さらに好みの学びスタイルを選べるようになっている。例えば、「ウェビナー&プレゼンテーション」内にあるコンテンツページでは、わかりやすく要約されたプレゼン内容に加え、①プレゼン資料②セミナーの動画③登壇者の言葉を書き起こしたドキュメントをダウンロードできるようになっているのだ。資料を見てデータ等を確認したい人、動画で気軽に視聴したい人、ドキュメントでじっくり内容を読みたい人、それぞれのユーザーの好みに合わせて、コンテンツを選べるようになっている。

①プレゼン資料ダウンロードアイコン(画面左下)。セミナーで使われたプレゼンテーションシートをダウンロードし、データの詳細を確認することができる。

②セミナーの動画。登壇者のプレゼンテーションを音声で聞きながら、①のスライドを順を追って見ることができる。登壇者の感情が伝わり、要点なども理解しやすい。

③登壇者の言葉を書き起こしたドキュメント。②をそのままテキスト化したもの。自分のペースで理解できるというメリットがあるのはもちろん、ユーザーが動画視聴の難しい環境にいる場合にも有効なコンテンツだ。

また「事例紹介」のカテゴリでは、一覧ページで概要を簡単に把握し、重要なエッセンスを読み取ることができるようにし、さらに深い情報を求めるユーザー用に“Full Story”をPDFでダウンロードできるようにしている。「ebooks」のカテゴリでは一覧でイントロ部分のみを掲載し、残りは章ごとにダウンロードできるようにするなど、一つの啓蒙コンテンツを多様な形式で展開している。注目すべきは、単に形式の種類が充実していることではなく、情報収集の仕方や求める情報の深さなどに合わせて、ユーザー自身が学びの形式を“選べる”ことだ。好みに合わせた形式を選ぶことができれば、学びの機会も増え、理解も深まりやすい。

2. 「後で見る」というオプションを与える仕掛け

ラーニングセンター内には、コンテンツ収集とそれをシェアするための機能も用意されている。気に入ったコンテンツをドラッグ&ドロップするだけで、マイフォルダに該当のコンテンツが格納され、メールアドレスの入力により、コンテンツをシェアできるという仕組みだ。「時間のあるときにじっくり目を通したい」というのも、よくあるユーザーの“学びのスタイル”の一つ。その心理にも寄り添いながら、リードリストも獲得することができる、まさに一石二鳥の仕掛けなのだ。

見込み客が持っている疑問や情報ニーズに答えることで信頼獲得や顧客育成を可能にする啓蒙コンテンツ。コンテンツマーケティングの最もベーシックな形であるが、単にブログで提供するという形から大きく発展しているようだ。学びやすさという視点で、啓蒙コンテンツの手法がさらに進化し、さまざまな形式で展開されるようになった今、「ラーニングセンター」という“学びに特化したプラットフォーム”を用意することも、コンテンツマーケティングの次なる一手だといえる。

執筆:隠岐由起子

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