単なるお役立ち記事では不十分!成果につながるコンテンツマーケティングとは?

コンテンツマーケティングによって成果を出すには、購買や認知をはじめ、自社が望む行動や反応をユーザーにとってもらう必要がある。そのためにコンテンツの役割を事前に考えることが重要だ。しかし実際は、深い検討なしに単なるお役立ちコンテンツを漠然と量産しているだけのケースも多い。

「こうした従来のコンテンツマーケティングでは、もはや効果を期待できない」。今回取り上げる記事の著者であるCarlton Hoyt氏はこう危機感を示す。同氏は、ライフサイエンス業界に特化したマーケティングコンサルティング会社BioBM Consulting社の首席コンサルタントだ。

世の中にコンテンツがあふれている中で、単なる情報提供コンテンツを量産しても、ただの「ノイズ」として埋もれやすい。こう考えるHoyt氏にとって、このような情報提供にとどまるコンテンツはマーケティングゴールを達成するには力不足な「単なるコンテンツ」(Content)に過ぎないという。

一方で課題解決を実現できるコンテンツを「リソースコンテンツ」(Resource content)と呼ぶ。「Resource」という言葉には「資源」や「資産」といった意味合いがあるが、課題解決に必要な「資源」となり得るコンテンツといったニュアンスがあるのだろう。

同じコンテンツでありながら、両者にはどのような違いがあるのか?著者が示す「リソースコンテンツ」と「単なるコンテンツ」を紹介しながらその差について明らかにしていきたい。

リソースコンテンツのポイント、それはユーザーの課題解決を起点としたコンテンツ制作

「リソースコンテンツ」とは、ユーザーの課題解決を第一に考えたコンテンツだ。一方「単なるコンテンツ」は、情報提供にとどまってしまっているため、ユーザーが抱える課題をうまく解決しきれない場合が多い。その差が販売増やリード獲得などの目的をうまく達成できるかの分かれ目になるとしている。

著者によると、課題解決を念頭に置いている「リソースコンテンツ」の優れた点とは、必要最小限のコンテンツでユーザーの課題を解決するだけでなく、目的のコンテンツを探しやすいよう、分かりやすくカテゴライズされていることだという。

「リソースコンテンツ」は、具体的にどのように展開されているのか。実例をいくつか交えてその特長を明確にしてみよう。

ユーザーの課題を最短距離で解決するHome Depot社の「リソースコンテンツ」

Home Depotはアメリカを中心に各国で店舗を展開しているホームセンターだ。住まいのリフォーム・メンテナンス関連の商品を幅広く扱っている。

Home Depotのコンテンツが「リソースコンテンツ」として優れている点は、課題解決に必要なすべての情報を単一のコンテンツ内に収めていること。さらに目的のコンテンツを探しやすいよう、それぞれが適切にカテゴライズされていることだ。この2点が迅速な課題解決を可能にしているというのだ。

まずは一つ目の「課題解決に必要な情報を一ページ内に収めている」という点をみてみよう。一例となるのは、壁の塗装に関するハウツーページだ。

どのようなコンテンツになっているのか?参照記事では詳しく触れられていなかったこの点について、具体的に紹介していこう。

Home Depotによる塗装に関するハウツーページの全体構成。「壁を塗装する」という課題について、作業前の下準備や必要な道具・材料、具体的な作業手順といった必須情報がすべて収められている。

最初の工夫の一つが、冒頭に掲載されている動画だ。用途に応じた塗料や道具の選び方といった内容が3分で端的にまとめられている。ボリュームの大きいコンテンツに目を通してもらう前に、まずは動画で作業のイメージを伝えるという狙いだろう。

冒頭に掲載されている動画。商品購入を具体的に考えているターゲットにとって全体像がイメージしやすい内容となっている。

動画で概要を伝えた後には、作業前に必要な情報や準備を紹介している。

塗装のメリットや作業前の下準備などを記載したテキスト情報。壁を塗装することで生まれるメリット、塗料を選ぶときに考慮したいポイントなど、充実したテキスト情報が続く。「事前に準備すること」「安全確保のためのポイント」「DIYでの節約のコツ」など項目を立てることで、飛ばし読みがしやすいように構成されているのもポイントだ。

次に紹介されているのは、準備する道具や材料。塗装に必要なツールが一覧で紹介されており、何を購入しなければいけないかが一目瞭然だ。

一つ一つの項目をクリックすると該当する商品ページにリンクし、Home DepotのECサイトで簡単に購入できるようになっている。この部分がHome Depot社の売上の要となるわけだが、道具や材料を揃えてDIYを行うことのメリットをここまででしっかりと語っているため、商品ページでの購入率も高まることが予想される。

最後はハウツーをわかりやすく説明した動画だ。

塗装前の下準備から塗装のコツまで、9つの各ステップを動画とテキストで説明している。

ここでのポイントは2点。

一つは、動画をいくつかのプロセスに分割していること。一本にまとめてしまうと、ターゲットが確認したいプロセスにたどり着くのが非常に困難になる。動画を短く切り分けることで、ターゲットが確認したいプロセスをすぐに見つけられ、何度も繰り返し見ながら作業をすることができるようになる。

もう一つは、動画の内容を文字情報でも掲載していること。環境によっては動画を確認しながら作業することが難しいケースもあるため、印刷して確認できるように、との心配りが感じられる。

このようにHome Depotではターゲットの課題を解決する情報が1ページ内にきっちりまとめられているため、ユーザーは必要な情報を求めて複数のページを探し回る必要がない。

次にサイト設計。同サイトでは、「キッチン」や「照明」などといったカテゴリーの中に、「DIY」や「購入ガイド」などといった目的別にコンテンツが収まっている。ユーザーニーズに沿った構造になっていることで、探している情報にストレスなくたどり着けるようになっている。

DIYのハウツーとアイデアをまとめたDIYカテゴリーのトップページ。より情報ニーズが高くアクセス数の多いカテゴリーはトップに画像とともに表示。その他のカテゴリーについてもページ左部のナビゲーションから簡単にたどり着けるようになっている。

ちなみに課題解決に向けたHome Depotのサイト作りについては、過去に詳しく紹介しているため、ぜひこちらも参考にしてほしい。

関連する過去記事

課題解決の視点が欠けたLow’s社のコンテンツ

次に課題解決を念頭に置いていないために、「単なるコンテンツ」にとどまってしまっている例を紹介する。

ここで説明するLow’sは、アメリカとカナダで店舗展開しているホームセンター。住まいのリフォーム・メンテナンス関連商材や家電を扱っている。

一見してHome Depotと同様、Low’sのホームページにも商品情報だけでなくハウツーやアイデアが充実しているように見える。

たとえばハウツー関連のコンテンツがまとめられた「Low’s How-to Library」には、収納計画の立て方、トイレの修理方法、芝生の管理方法、家具の塗り替えテクニック、星条旗の飾り方など、さまざまなターゲットニーズを満たすためのコンテンツが豊富に用意されている。

「Low’s How-to Library」のコンテンツトップページ

しかし著者によると、ユーザーの課題をうまく解決できていないため「単なるコンテンツ」になってしまっているというのだ。

まず著者は、必要な情報にスムーズにたどり着くことが難しい点を指摘。コンテンツがある程度カテゴライズされているとはいえ、その分類方法がユーザー視点ではないためだという。

たとえば「ブログ」「クリスマス」といったあいまいな分類名からは、自身の課題を解決できるコンテンツの有無を判断することが難しい。

Low’s How-to Libraryトップにあるカテゴリー表示(画像左端)。

コンテンツが多すぎる点も問題だという。たとえば庭に関するコンテンツだけでも1,000本以上の記事がある。これではターゲットが探している課題解決方法にスムーズにたどり着くのは至難の技だ。

また苦労してコンテンツにたどり着いた後にも問題がある。著者によると、画像や動画も駆使して分かりやすいコンテンツを手掛けたHome Depotと異なり、テキストのみのコンテンツが多いのだ。

元の記事では具体例が挙げられていなかったが、たとえば以下のコンテンツがその一例といえるだろう。

赤ちゃんのいる家を快適にする10のヒント」が記載されたコンテンツ。

このコンテンツでは、ベビー服の収納法や、適切なフローリング、ペットの扱い方まで、幅広い情報が並ぶ。

しかし単なるテキストでの説明のみにとどまっている。画像や動画などを活用してわかりやすく伝えることも、効果的な課題解決を実現する大切なファクターとなることを覚えておきたい。

さらにそのテキストでの説明も不十分であるようにみえる。「快適な家」とは何で、それぞれの項目がどう貢献するのかといったつながりが説明されていないため、断片的な情報の羅列にとどまっているからだ。根本的な課題解決につながっているかという点においては、力不足だと言わざるを得ない。

「リソースコンテンツ」は記事だけではない、ランニング体験を充実させるNike+

Home DepotとLow’sの実例比較では、ターゲットの課題解決を念頭に置いているかどうかが、「リソースコンテンツ」と「単なるコンテンツ」の違いだと解説した。

だからユーザーの課題解決を実現できていれば、形式はWeb上の記事に限らない。そこで著者は、Home Depotとは違う形の優れた「リソースコンテンツ」の実例として、「Nike+」の例も紹介している。

Nike+は、ランニングしたルート・距離・時間・ペース・消費カロリーなどを表示・記録できるソーシャルプラットフォームだ。

スマートフォンなどで個人データを管理するだけでなく、コーチからのアドバイスを受けたり、SNSで自身のアクティビティをシェアしたりと、さまざまな楽しみ方ができる。

Nike+の操作画面

幅広いコンテンツのベースになっているのは、ユーザーの課題解決にフォーカスした姿勢。この場合のユーザーが抱える課題とは、「ランニングを続けるためのモチベーションの維持が難しい」ということ。

そこでNike+が掲げる課題解決のテーマが、「ランニングのプロセスを記録・共有することで、モチベーションを維持し、よりよいトレーニングを行う」だ。

もしこのような明確なゴールがなければ、課題の一部分を断片的に解決するコンテンツにとどまり、今のようにユーザーの課題に対して根本的に応えるサービスにはなっていなかっただろう。

またこのサービスは、エンゲージメントから購入までをスムーズにつなげることができる点でも優れている。

Nike+を愛用していくうちに、よりそのサービスを追求したいという思いが生まれ、ランニング時間を記録できるSportWatchなど、有料のNike Fuel商品の購入につながることが期待できるのだ。

ランニング距離や消費カロリーなどを記録・表示できるNike+ SportWatch GPS

Home DepotやNike+による「リソースコンテンツ」の成功要因とは、ユーザー視点での課題解決策の提供と、企業視点での販売戦略をうまく融合させている点ではないだろうか。

ユーザー視点になりすぎても感謝はされるが、販売に結びつかないことがある。また企業視点になりすぎると、コンテンツ自体が読まれなくなる。このバランスを取ることが重要だ。

こうしたバランスを思いつきで作ったコンテンツやサイトで取ることは難しい。あらかじめ綿密にシナリオを練る必要がある。それが、このサイトで繰り返し触れてきたコンテンツ戦略の重要性だといえるだろう。

執筆:隠岐由起子編集:三友直樹(日本SPセンター)

NEWS LETTERをお届けします!

コンテンツマーケティングラボの最新情報を、
定期的にEメールでまとめて、お知らせします

当月の更新情報を翌月初にお届けします。

(購読すると弊社の書籍発売イベントの特典資料をダウンロードできます)

関連する記事