ラグビーワールドカップ日本代表、史上初の8強入り!:儲かる人と儲けない人

2019年のスポーツシーンと言えば、「ラグビーワールドカップ」。テレビドラマが話題になり、日本代表は史上初のベスト8進出。市場でのラグビーの存在感は高まった。その一方で、毎月発行の専門誌『ラグビーマガジン』はバカ売れしたのか。雑誌という媒体の特性以上に、ラグビーは「金にならない」コンテンツなのか。ラグビーのコンテンツ価値について成見氏に語っていただきました。

冒頭、成見氏は会場に『ラグビーをプレーしたことがありますか?』『ラグビーワールドカップ2019をテレビでみましたか?』と問いかけ、ラグビーの歴史や日本ラグビーのこれまでについて熱く話し始めました。

株式会社ベースボール・マガジン社 ラグビーマガジン編集次長(ラグビーリパブリック編集長) 成見宏樹 氏

日本のラグビーはメジャースポーツ入りを果たしたのか?

ラグビーの歴史は「アンチメジャー」や「アマチュアリズム」で、閉鎖性と独自性の中で広がっていった。一方、日本のラグビーは昭和に黄金期があり、平成は低迷期だったと成見氏はラグビーの歴史を説明。

転換期は2015年のラグビーワールドカップ。 強豪南アフリカに勝利した「ブライトンの奇跡」(日本34-32南アフリカ)は、日本だけでなく世界中に衝撃と感動を与えたのは記憶に新しい。

しかし、成見氏は『日本ラグビーはプロリーグではなく、実業団のトップリーグでとどまっている。野球、サッカー、バスケットなどのメジャースポーツと比べて、ラグビーはまだまだキャズムを越えられていない』と日本のラグビーはまだまだメジャースポーツ入りしたとは言えないという。

それでも、前回の2015年のワールドカップと今回の2019年のワールドカップでは大きな違いがあった。今回のチケット販売率は99.3%でほぼ全試合満席。国内SNSのview数は17億、TV視聴率 53.7%(関東最高値)と、大きな反響があったことは事実である。

第1回ラグビーワールドカップが開催されたのは1987年で、まだ30年余りの歴史であり、今回のワールドカップの日本国内の反響を考えると、これからさらに人気は伸びていくと感じる。

国内を超えて世界に反響を呼んだワールドカップ2019

前回大会との違いとして、『2015年は蹴る前のルーティンが話題になった、五郎丸歩選手にフォーカスがあたりすぎて、日本チームとしての存在は薄かった』という。一方で、今回のワールドカップは選手個人だけでなく日本チーム全体にフォーカスがあたったという。(その後、流行語大賞にも選ばれた「ONE TEAM(ワンチーム)」はその象徴と言える。)

さらに印象的だったのは、北九州で行われたウェールズ代表の練習に、15,700を超える人がスタジアムに集まったことである。その時のスタジアムの様子を映した動画は、人口300万人のウェールズ国内にも拡散され世界の話題になった。

また、ニュージーランド代表選手の練習後や試合後の「Ojigi」(おじぎ)は日本文化への敬意として話題になったり、台風19号の影響で3試合が中止になった時は、カナダ代表選手が現地でボランティア活動を行うなど、世界各国の代表チームや選手たちが注目される大会となった。

ここまでの紹介をした上で、成見氏は『2015年のワールドカップを「消費」の大会、2019年を「体感」の大会だった』と振り返った。盛り上がりをみせた両大会であったが、コンテンツが消費された2015年と体感を得た2019年では大きな違いがあったという。

応援してくれた事前キャンプ地・北九州市の市民に対して、ウェールズラグビー協会が感謝の思いを伝える全面広告が毎日新聞の朝刊に掲載された。参照:https://mainichi.jp/articles/20191103/k00/00m/040/040000c

新しいファンを獲得する上で大切なこと

前回と今回のワールドカップの反響を振り返った上で、成見氏は『スポーツコンテンツとスポーツ出版社の生き方は、大切なことはファンになってくれそうな人に「体感と経験」をしてもらうことである』と説明した。成見氏は、体感を「自分が身をもって感じること」、経験を「体感+行為によって得た知識」と定義した。

そして、雑誌として読者に「体感と経験」を促すにはどうするべきか?という問いに対して、『競技の本質からブレずにいること。なぜなら、競技の本質はそれぞれの競技が独自のカタルシスとつながっているから。』と答えた。

『それは、「ボールを持った時の感覚」「スタジアムの芝の匂い」「ケガをした瞬間の関節の音」「負けた時、会場で流れていた音楽など、人間の五感に、身体性に本質を近づけていくことである』という。さらに、『その身体性はニッチであるほど呼び起こされていく』と成見氏は説明した。

「ラグビーのルールがわからなくても応援した、拍手した身体的な経験は忘れない」と成見氏は競技の本質について語っていた。

ラグビーマガジンが伝えたいこと

『読者に「体感と経験」を促していくことを大切にしていくラグビーマガジンは「ニッチ」であり、「マニアック」であることが価値と考えている』と成見氏はラグビーマガジンのポジションを説明した。

例えば、一人のファンを取材して片ページまるごとインタビューするコンテンツを載せたり、編集長のワールドカップぶらり旅としてピッチ以外の各地の情報を載せたり、小中学校の試合記録を載せたり、高校や大学の選手が載っている名鑑を作ったり・・。

『それは、最後までラグビーが好きな人のために本を作るという想いがあるから』と読者のことを常に大切にする重要性を説いた。

ベースボールマガジン社は1946年創立で、現在24の定期誌を運営している。社のモットーは、「一隅を照らす」。与えられた場所で咲く、という意があるという。

時期によって当然「旬」があるから、24ある雑誌全体で収益を上げることが会社の強みであるという。1972年に創刊したラグビーマガジンは、これまで一貫してコアファンや現役・現場の人たちに向けてニッチなマニアックなコンテンツを提供してきた。2011年には観戦初心者ら全方向に向けてWEBサイトを立ち上げて情報を届けている。

最後に、成見氏は『雑誌は毎年売れなくなっている。それでも、伝える側はニッチでいる価値を忘れてはいけない』とラグビーマガジンがこれからも伝えていく価値を会場全体に投げかけてセッションは終了した。

セッション全体を通して、

  1. 雑誌という紙媒体でも読者にきちんと熱量を届けられること
  2. そのために、自分たちにしかできないことを突き詰めること

の2点の重要性を感じました。

web媒体やSNSが中心となっている現在、雑誌は生き残りが非常に難しい環境に置かれています。ただ、ラグビーワールドカップのお話がまさにそうですが、現場で起こったことや体感したことは媒体関係なしに伝えることができます。成見さんがおっしゃった「体感」や「経験」は、伝え方や見せ方一つで十分に価値あるものとして読者の心に伝わるのだと思いました。

自分たちが向き合っているテーマ、読者の本質や求めていることを明確にすること。それは自分たちにしかない独自性あるものとなり、その想いがより強く、より身体的に感じるものであればあるほど、読者の心を掴むコンテンツとして届けることができるのだと感じる貴重なセッションでした。

執筆:萬里小路 忠昭

思考設計士 | CONTENT MARKETING ACADEMY 特任講師
デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツ研究科修了(デジタルコンテンツマネジメント修士)

2010年ゼビオ株式会社に新卒入社し、店舗・ECサイトの運営やデジタルマーケティングのディレクションを担当。
2018年GMOアドマーケティングに転職し、約200社にマーケティング戦略に関するワークショップセミナーを実施。
2020年独立し、「マーケティングが機能する組織」をテーマに、チームビルディング支援やリーダーシップ研修を行っている。

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※リンク先は、CMD2019メディアスポンサー「エムタメ!」によるレポート記事です。

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