Content Marketing Day 2020 参加レポート 第二回

もくじ

  • カンファレンス2日目の概要
  • セッションレポート~デジタル戦略編
  • セッションレポート~コンテンツ制作編
  • セッションレポート~データドリブン編
  • セッションレポート~プロモーション編
  • 直観と理性のマーケティングを確かなものにするために

カンファレンス2日目の概要

2日目となる11月19日公開コンテンツは16セッション。1日目がコンテンツマーケティングの「基礎編」とすれば、2日目は「応用編」。キーワードは「データドリブン×テクノロジー」です。コンテンツマーケティングにおけるデータの捉え方、使い方、展開のしかたをここまで過不足なく学べる機会ははっきり言って、稀(まれ)です。「デジタル戦略」「コンテンツ制作」「データドリブン」「プロモーション」の4つに分けてご紹介します。

Content Marketing Day 2020 イベントページ

セッションレポート~デジタル戦略編

コンテンツ策定に欠かせないアプローチが「センスメイキング」

デジタル戦略を立案する際、ファクトに基づいてマーケターは考えます。しかし、ふと思うことはありませんか。「この戦略を実践する意味はどこにあるのか」と。そんなとき、知っていると支えになるのが、浦山氏がお話しされた「センスメイキング」を紐解く背景です。

お話はContent Marketing Academy Principalの浦川隆行氏です。氏が説くのは、哲学や人文科学のモノの見方や思考法には、コンテンツマーケティングの現場で必要とされる“意味の場”の発見や“意味づけ”のヒントがあるという点です。

クリスチャン・マスビアウ著の『センスメイキング』から、これだけの発想を自分のモノにすることができると言います

やや乱暴かもしれませんが、集約すると、哲学的な世界観でありながら実質的な役割を引き出すための知識と教養があるかないかで、データや戦略を語る際の“引き出し”の数が変わるということです。

たとえば、バイク好きなユーザーがいた場合、「バイク好き」であることの裏には別のニーズがあり、結果「バイク好き」であるとも考えられます。

バイク好きの行動を紐解くときに考えたいのは、ユーザーにとっての因果的な意味。ユーザーは何らかの意味のある場としてその場におり、意味の場の違いによって心理や行動は変わります。それゆえ対象人物が影響を受けている外環境を見ることで、その意味がわかるというわけです。

ゆえにマーケターに必要なのは、人間が周りの環境や経験から意味やセンスを形作る背景を読み解き、意味付けしていく力。それこそが「センスメイキング(意味を与える)」です。

データドリブンで戦略立案する際にデータを読み解く力が欠かせませんが、人の行動はデータだけでは測れません。行動心理を洞察する感性も身につけることこそが、これからのコンテンツマーケティングに必要なことではないでしょうか。

カンファレンス全体に通じるこの考え方は、渡辺一男氏の基調講演と併せて、しっかりかみ砕いて身につけたい考え方です。

セッション視聴『いつか役に立つセンスメイキング「人文科学とマーケティング・コンテンツ」試論 もしくは「センスメイキング 深読みブックガイド」』

セッションレポート~ストーリーを描く編

マーケターが知っておきたい“DXの始め方”

さて、コロナ禍でビジネス自体が大きく変わった今、必要とされているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です(画像参照)。

必要性は理解していてもDXに対する具体策がピントこない方に向けてヒントとなるのが、本セッション。お話は日本オラクル株式会社 ソリューションエンジニアリングマネージャーの小野俊隆氏。「DX実現に向けてどこから始めればよいか」のポイントはこの3つです。

  • 自社の強みを知る
  • 顧客を知る
  • テクノロジーと掛け合わせる

小野氏は製品開発から優良顧客の手に届くまでの一般的なB2Bビジネスのファネルを提示しながら、どの段階でどんなデータを取得し活用するかというデータの考え方を解説。

とくに重要視したいのは「intelligence=人の行動を決定づけるような価値を持つ情報」です。“価値のある情報”を自社がもっているデータから引き出し、テクノロジーと掛け合わせて何を生み出せるか考えることが、まさにDXの目指すところ。データが集約されるだけでレスポンス率が25%上がるというエビデンスも。

下図をご覧ください。自社サービスの点在したデータの整理整頓をし、テクノロジーと掛け合わせたときにできることを図解化したものです。カギはセグメントとデータアウトです。この掛け合わせ如何(いかん)によって、新たなマネタイズの方法やボリュームが見込めるようになるのです。

とはいえ、データにだけ寄りすぎると“自社のもちもの”に縛られますし、テクノロジーだけあっても夢物語に。ゆえに、データとテクノロジーを掛け合わせて何が生み出せるかを仕組みで考えることで、何をやるかがわかりやすくなり、DXが目指すゴールになりうるのです。

ANA、渋谷区スクランブル交差点、Disney+などの事例も交えながらの解説はイメージも湧きやすく、DXの全体感がつかみやすいです。コンテンツマーケティングの考え方に通ずるところが多い本セッション、一見の価値ありです。オンデマンド視聴も可能ですので、ぜひ。

セッション視聴ページ『CXにおけるDXはどの様にはじめるべきか — 企業の成長を加速させるためマーケターに必要なこととは —』

セッションレポート~コンテンツ制作編

これからのコンテンツマーケティングにおける成功の法則

コンテンツを作成し、最新のテクノロジーと掛け合わせることでBtoB企業は成長します。そのために考えておくことって何だと思いますか?株式会社LEAPT 代表取締役社長 戸栗頌平氏のお話がまさにこの話題です。

マーケティングゴールや目的達成を促進するソフトウェアをマーケティングテクノロジー、略して「マーテック」と呼ばれています。チームで複数のツールを使用する際は、「マーケティングスタック」と表現されることも。

コンテンツマーケティングは、目的を達成するためにメディア運営を通じてユーザーとデジタルコミュニケーションを行い、収益を上げていく活動ですが、その過程で多くのテクノロジーが投入されています。

とくに2020年はコロナ禍によって6年分のデジタルコミュニケーションが進んだと言われ、EC市場においては今年3か月の間に過去10年分に相当する市場拡大の勢いを見せました。背景にあるのは、マーテックです。

これまで企業は「Function Out」型の企業のアイディアを起点にサービスの開発や提供を行ってきました。ところが、マーテックの発展によりユーザー行動が可視化され、「Custmer In」の顧客ニーズ起点でのサービスの開発や提供が行われる流れに変化。顧客中心の企業活動にしないままでいると顧客に振り向いてもらえなくなっています。

マーテック発展に伴い、マーケターがどの領域を目指して行くかを解説されています

コンテンツマーケティングの世界でも同様です。顧客のために価値を作り、提供することがこれからのマーケターに必要な視点と言えます。コンテンツとテクノロジーを掛け合わせた上で、クリエイティブな価値を生み出すことにますます重きが置かれていくでしょう。

本セッションでは、そのために必要なテクノロジーの最新情報や向き合い方を示唆し、コンテンツマーケティングの成功法則を紹介した貴重なセッションと言えます。

セッション視聴ページ『海外動向に学ぶ、B2B企業のコンテンツ×テクノロジー戦略 — 今私たちはどこへ向かうべきか —』

セッションレポート~データドリブン編

Google Analyticsの“今”がつぶさにわかる

コンテンツマーケティングに欠かせないのがGoogle Analytics(以下、GA)によるアクセス解析です。お話はand,a(アンドエー)株式会社 取締役 CAOの中田吉彦氏。

セッションは「KPI⇒遷移⇒コンテンツの内容」を軸に展開。ユーザーの認知段階によって集客からコンバージョン(以下、CV)までのKPIを段階的に立て、ストーリーを組み立てる方法を事例をもとに解説。対象ユーザーにとってCVへと導く“自然な”コンテンツ配置がつまびらかに。

ほかにも、ユーザーがサイト上でどんな行動をどんな順番で行ったか絞り込んで分析できる「シーケンス」機能を使って、ユーザー行動を把握し、ひとり一人の仮説がぐんぐん見える化する方法も。

GAとサーチコンソールでユーザー行動を徹底的に洗い出した結果、中田氏のチームでは毎月10本以上の仮説を立てる「仮説会議」を行い、会議で施策を選定し、A/Bテスト等行うそう。この積み重ねが圧倒的結果を出し続ける力になるそうです。運用PDCAの方法などもありますので、詳しくはオンデマンド視聴でぜひご覧いただきたいです。

セッション視聴ページ『コンテンツマーケティングのウェブ解析』

セッションレポート~プロモーション編

“顧客となり得る生活者”に対する適切な広告の取り扱い方

デジタル広告は範囲が多岐に渡り、アドテクノロジーの進化もとりわけ速い分野。ディーテラー株式会社 広瀬信輔氏のセッションは、コンテンツマーケティングに照準を絞り、マーケターが知っておきたいデジタル広告の概要・概念・基本がわかる充実の1時間です。

まず、コンテンツマーケティングにおけるコンテンツとは、「顧客となり得る生活者にとって価値ある情報または体験」と定義。加えてプロモーションの際に使う広告の役割を「表示方式」と「課金方式」の2つに分けてわかりやすく解説した上で、広瀬氏が日頃実践している「デジタル広告8つのルール」を詳説されています。

「あくまで僕のルール」と謙遜されていますが、顧客となり得る生活者に対して適切な広告を適切なタイミングで表示するための考え方と設定を、しっかりと把握できるのが魅力。

具体的には、記事コンテンツに対する広告運用上のKPI案、GTM(Google Tag Manager)の変数・トリガー・タグ作成のデモ、アクセス解析における課題の見つけ方、効果測定運用負荷を下げるためのコツのほか、注目のアドテクノロジーの紹介も。

「コンテンツマーケティングは万全なのに集客がうまくできない」方にぜひご覧いただきたいセッションです。非対象者を排除する広告例やリターゲティング広告の効果についての実験解説が、個人的には大変ツボでした。

セッション視聴ページ『コンテンツプロモーションのためのデジタル広告「8つのルール」』

直観と理性のマーケティングを確かなものにするために

「応用編」と称して2日目のセッションを振り返ってまいりました。本稿ではB2Bの話題を中心にご紹介していますが、B2C向けのマーケティング戦略や、定性・定量情報の扱い方、AIや機械学習、シニアマーケティングにおけるコンテンツ制作など多岐に渡ります。

「ユーザーの一時情報を得る」という状況下でも、マーケ―ターにはこれだけの選択肢があります。株式会社メディックス 米山 大介 氏『B2Bマーケティングの定性と定量』より

コンテンツマーケティングは対象範囲が広く、取り扱うツールや技術も日々新しいものがリリースされ、開発速度が高速化しています。登壇者の多くがおっしゃっていたのは、「効果を出すなら、絞り込んで結果を積み上げる」点。自社の強みと運営の目的を踏まえた上で顧客となり得るユーザーの文脈を汲み取り、価値を届けられるか。いかに戦力を集中させて目に見える結果を出していけるかがカギであると。

「直観と理性のマーケティング」と題された本カンファレンスは、そのマーケターの思いと学びの指針を示す良セッション揃い。専門家の知見を学びながら最適な手段と方法を意志をもって選び取り、自社サービスやコンテンツマーケティング市場において成長し続けたい。そんな思いを新たにしましたし、やはりコンテンツマーケティングは面白く、興味が尽きません。今もなお、わくわくしています。

執筆:川俣 沙織

株式会社Rdesign factory(アール・デザイン・ファクトリー)代表取締役

出版業界で実用書・タレント本・インタビュー雑誌などの編集者として働いた後、WEBディレクターへ転身。2020年にデジタルマーケティングプロデューサーとして独立。
出版社における雑誌のWEBメディア・EC・CRM・システム構築のほか、他社メディア受託制作等を経験。コンテンツマーケティングを軸に、事業に最適化したコンテンツ制作のほか、メディアのブランディングや全体のグロース設計や戦略設計、運用オペレーションの設計や再構築を得意とする。
「必要な情報が、必要な人に、必要なタイミングで伝わる」メディアづくりが信条。

関連リンク:Content Marketing Academyによるセッション紹介記事(note記事)

NEWS LETTERをお届けします!

コンテンツマーケティングラボの最新情報を、
定期的にEメールでまとめて、お知らせします

当月の更新情報を翌月初にお届けします。

(購読すると弊社の書籍発売イベントの特典資料をダウンロードできます)

関連する記事