「CONTENT MATKETING DAY 2021」開催レポート vol.2

2021年12月15日(水)~17日(金)にかけて開催された「CONTENT MATKETING DAY 2021(以下、CM-Day2021)」。2本目の本稿では「コンテンツマーケティングを通じた潜在顧客の顧客化(ナーチャリング)」をテーマに、CM-Day2021を振り返ります。

1本目はこちらから https://contentmarketinglab.jp/application-method/cmd2021-report-1/

作ったコンテンツは間違いなくオーディエンスに届いています

データを通して世界を理解する方法を解説してくださったのは、データドリブン文化醸成を目指す方のためのDATA Saber認定制度の創設者でもあるKT氏。

KTさんは、「データを素っ気ないものだと思っている人が多いですが、データは人のアクションの結果で、“こんなものが欲しい”“こんな人とお話ししたよ”という血の通った人間のアクティビティや人のつながりが見えるもの。私たちはそれを理解しながら、データと向き合うことが重要」とおっしゃいます。

作ったコンテンツのほとんどはインターネットの海に消えていきますが、それを消えさせないようにするのがデータです。コンテンツの先、その向こうに座っている人の顔や言葉が想像できる素材になり、オーディエンスを唯一理解できる根拠になります。

コンテンツマーケティングにおけるDXをどうドライブさせるか、理解するポイントは次のふたつです。

  • データビジュアライゼーション
  • データストーリーテリング

苦手な方は数字の羅列を見た瞬間立ち止まってしまいますが、棒グラフや線グラフなど、視覚属性をうまく使って表現すれば、データは無限の広がりをもてるもの。数値が表す最もわかりやすい表現方法を選び、時間・場所・顧客・商品ごとに区切れば、オーディエンスが何に興味をもち、ページを開き、購入や問い合わせなど、どんな行動をしたかグラフや表などのビジュアライゼーションを通じて表せます。

視覚的に見て理解できる形になると、見た方の思考はさらに広がり、開花させていくことでストーリを作ることができる。それがデータの力です。

GA4移行前に知っておきたいGoogleの戦略転換の方向性

Google Analytics4(以下、GA4)がローンチされて1年以上経過した今、Google 広告の流れから今知っておきたいGoogleの戦略転換の方向性とコンテンツマーケティングにおける効果測定の重要性について、木田和廣 氏(株式会社プリンシプル チーフエヴァンジェリスト)がお話ししてくださいました。

検索連動型広告を使ってお客様から認知を得て感心を高め、最後にアクションを促すモデルは、ファネルのボトムにいるユーザーをターゲットとしてサイトに訪問してもらい、同一セッションで間を置かずにコンバージョンしてもらうもの。その戦略を「ロワーファネル刈り取り戦略」と呼ぶとすれば、検索連動型広告はまさにその形と言えます。

昨今、広告主の殺到により検索連動型広告のCPCが高騰し、その戦略でコンバージョン(以下、CV)してもらうこと自体、難易度が上がってしまいました。そこでGoogleが提案するようになったのは、「ディスプレイ広告」「動画広告」「スマート自動入札」レスポンシブディスプレイ広告」など、機械学習系のサービスです。

テクノロジーで打破できることに自信を深めているGoogleは、機械学習を使えば、ファネルの認知層・関心層からCVを獲得できる予測値を出し、CVの可能性が高いユーザーを取ってこられると考えています。

この戦略はLTVを加味したもので、「選択的ユーザー獲得戦略」でもあります。ファネル上の位置に関わらず、自社に“フィット”したユーザーをターゲットとしてサイトに訪問してもらうことでビジネスを成長させます。そのため「ロワ―ファネル刈り取り戦略」と違って、CVまで時間がかかります。必要になるのは顧客の育成(ナーチャリング)で、その助けとなるのがコンテンツマーケティングです。

ユーザーに向き合う戦略が変われば、必要なツールも変わります。そこで登場したのがGA4。GA4の導入にこういった背景があるとわかると、GA4は単にツールを切り替えるのではなく、ユーザーとの向き合い方そのものを変える必要があることを促しているとも言えます。

BtoB企業が生き残るための仕組みづくり3つのコツ

差別化しにくい製品やサービスであっても、サブスクリプションモデルにサービスを転換したり、顧客との関係性を変えていくことで事業の成長の余地があること、その準備が今からでもしっかりできることを解説されたのは、戸栗頌平 氏(株式会社LEAPT代表取締役社長)。

セッション前半ではBtoB企業が生き残るための仕組みづくりとマーケティングの手法を解説、後半は実際にその手法を行っている株式会社OKANNのCMOである今村様をお迎えした対談形式。

こちらが仕組みづくりの3つのコツです。

  • カスタマー・インからファンクション・アウトへ
  • 従来型のツリー型組織からからアジャイル型組織へ
  • 使用するツールも最適化する

コロナ禍において、ビジネスの転換を迫られた企業は多いですが、OKAN社も例外ではありませんでした。OKAN社では法人向け置き型社食サービスを行っており、首都圏のIT企業が主とした顧客です。しかし、コロナ禍で出社制限が起こると、契約プランの縮小や解約が増え、対象顧客の見直しを迫られたそう。そこで取り入れたのが上記のコツ3点です。

ひとつめに対象顧客の見直しを実施。出社をしないと業務ができない職種の方に絞り、その方々の課題やニーズの深堀りを。ペルソナ、カスタマージャーニーを作り直し、顧客の課題に合わせてサービスの形を最適化しました。

ふたつめは、従来型のツリー型組織(トップダウンの命令形式)からからアジャイル型組織(状況に合わせて変化する組織)へ変更した点。自社で運営しているオウンドメディアはリード獲得に重きを置いたチームでしたが、顧客理解を大事にしようと変革。業種別チームをマーケティングチーム主導で発足し、セールスやカスタマーサクセスチームを巻き込んで横断的に活動するように変えたとか。

3つ目は、使用するツールの最適化です。ページを作るのはWordPress、分析はGAと役割を分けてツールを使っていますが、施策と分析と次の計画が一貫してできるツールがあればそこに乗り換えたいそう。現在ツールを選定しており、切り替えに向けて着手しています。

上記の取り組みを始めてから、OKAN社の業績はV字回復。今は限られた人数でもしっかりPDCAが回せるツールをいち早く入れて、未来に向けての施策を強化する土台作りに専念されているそうです。

この例からもわかるように、ビジネスモデルが変化し、差別化しにくい製品やサービスでも、新たな方向に舵を取るカギは「リレーション・マーケティング」。顧客との関係性の構築がこれからのマーケティングでより重視されていくのは間違いありません。

DX時代の成功のカギはコンテンツのエクスペリエンスとエンジニアリング

「コンテンツストラテジー(データの哲学)」を用いて、よりよいコンテンツ体験を届けるために企業ができることをDX時代の視点でお話しされたのは、渡辺一男 氏(CONTENT MARKETING LAB Founder)です。

従来の“編集”の考え方においては、コンテンツを人にどう読んでもらうか、どうすれば読んでもらいやすいかを考えつつ、検索エンジン対策も踏まえて対処するものでした。しかし、デジタル化がどんどん進む今、より深いレベルでコンテンツを“機械”に読んでもらう重要度が上がっています。

そこで知っておきたいのが、ユーザーの状況に合わせて適切なコンテンツを届けるための、コンテンツのエクスペリエンスとエンジニアリングの考え方です。

まず、「コンテンツ エンジニアリング」ですが、コンテンツの規格化・構造化を進めることです。たとえば記事を作る際、WordPressにタイトル・サムネイル・画像・紹介文などを投稿すると、記事ページができます。同じ情報をSNSやアプリ内配信をしたいときは、WordPressに投稿した情報をそれぞれのツールに投稿し直すため、同じ作業をメディアごとに繰り返すことになりますよね。それをしなくて済むのが、コンテンツエンジニアリングの仕組みです。

コンテンツのもととなる情報(=構造化コンテンツ)を“モジュール”として扱い、各メディアで投稿や配信の表示条件を設定しておけば、ユーザーに合わせて最適なメディアを選択した上でコンテンツを配信できます。パソコンやシステムにコンテンツをより深く理解させるため、ユーザーには見えない情報も含めた記述が必要となりますが、その仕組みを実現する新しいCMSの仕組みとして「ヘッドレスCMS」が最近注目されています。

次に、「コンテンツ エクスペリエンス」です。データ活用の柔軟性が上がっても、人間に対して情感のないコンテンツになってしまうと、注目してもらえません。渡辺さんは『The New York Times』でデジタルコンテンツを再定義するために作った実験的サイト「Snow Fall」を例に挙げ、記事を読み進めると適切な図版がその横に現れる仕組みや、ストーリーテリング型のサイトをノーコードで作成できるサービス「SHORTHAND」を紹介。オンラインで深みのある体験を作る事例を見ることで、コンテンツ エクスペリエンスの“いま”を見せてくださいました。

まとめ

「潜在顧客の顧客化(ナーチャリング)」をテーマにCM-Day2021を振り返ってきましたが、いかがでしたか。

DX化が進み、デジタルデータの重要性が著しく高まる中、企業に必要なのは、顧客との関係性の構築と、その関係性を育てながら潜在顧客に“自然と”顧客になってもらえるような仕組みづくりです。今回ご紹介したセッションは、その過程で必要なテーマや事例がわかりやすいもの、いち早く理解したいものを中心にご紹介しました。

レポートでは概要を凝縮してご紹介していますが、なんと今年は、YouTubeでアーカイブ動画が閲覧できるようになりました!(一部除く)ぜひYouTubeでセッションをご覧いただき、各セッションを細部に至るまでご自身のものとし、日々のコンテンツマーケティング活動に活かしていただけたらと思います。

執筆:川俣 沙織

株式会社Rdesign factory(アール・デザイン・ファクトリー)代表取締役

出版業界で実用書・タレント本・インタビュー雑誌などの編集者として働いた後、WEBディレクターへ転身。2020年にデジタルマーケティングプロデューサーとして独立。
出版社における雑誌のWEBメディア・EC・CRM・システム構築のほか、他社メディア受託制作等を経験。コンテンツマーケティングを軸に、事業に最適化したコンテンツ制作のほか、メディアのブランディングや全体のグロース設計や戦略設計、運用オペレーションの設計や再構築を得意とする。
「必要な情報が、必要な人に、必要なタイミングで伝わる」メディアづくりが信条。

関連リンク:Content Marketing Academyによるセッション紹介記事(note記事)

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