【中小BtoB企業向けコンテンツマーケティング講座vol.2】そもそもペルソナ設定はなぜ必要なのか?

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ペルソナがなければ戦略設計は困難

具体的なターゲットの人物像を指すペルソナ。マーケティングの本場・米国では、ペルソナのみをテーマにした書籍が何冊も出版されているほか、「ペルソナ設定一筋◯◯年」という専門家も存在する。それだけ、マーケティングにおいてペルソナが重視されているのだ。それに比べると、日本はどうもペルソナが軽視されているように感じてならない。

そもそも、ペルソナ設定はなぜ必要なのか。筆者は明快な答えを持ち合わせている。すなわち、PDCAサイクルを回し、マーケティング施策を結果へと導くためだ。

消費者の嗜好・思考が多様化している現代社会において、消費者が何を求めているのか、本当のところは誰にも分からない。また、マーケティングテクノロジーツールは次々と新しいものが登場し、定番ツールですら機能やUIが恐ろしいスピードで進化していく。

だからこそ、ある程度のマーケティング戦略を立てたら、すぐに実行に移してみるしかないのだ。そして集めたデータを解析し、戦略のチューニングを経て、再度実行に移す。このようなPDCAサイクルを「超高速」で回していく。さもないと、結果を出すことは難しい。

ペルソナを設定して初めて、戦略設計に入ることができる。ペルソナがどういった状況下にあり、どういった思考で、どういった行動を取るのか。それをカスタマージャーニーマップと呼ばれる戦略マップに落とし込み、マーケティング施策を実行に移す。つまり、コンテンツマーケティングにおいて、ペルソナは入り口かつ必須のものなのだ。

※筆者注:カスタマージャーニーマップについては、本連載の別の回で詳しく解説する。

ペルソナはどこまで細かく設定すべきか

ペルソナはどこまで細かく設定すべきか。

国内では「20〜40代の男性サラリーマン」などと、ペルソナが曖昧(あいまい)なケースが多く見られる。しかしながら、経験則から筆者は、ある程度細かく設定する必要があると考える。以下に、その理由を述べる。

第一に、ペルソナがはっきりしていれば、関係者間でのイメージ共有が可能となる。「20〜40代の男性サラリーマン」などと、ざっくりしたペルソナであれば、頭の中に浮かぶイメージは人によって異なるだろう。

一方で、「属性」「ライフスタイル」「悩み」が細かく設定されたペルソナで、かつ顔写真まであれば、チームでイメージを共有することは難しくない。

現代のコンテンツマーケティングにおいては、コンテンツ制作会社やフリーランスなど、外部と連携して進めていくケースも多い。むしろ、完全なインハウス(いわゆる内製)は稀なケースであろう。社内外で協力体制を築く上で、コミュニケーションの問題は避けては通れない。その際、細かく設定されたペルソナは、チームが同じ方向に進むためのエンジンとなるのだ。

第二に、マーケティング戦略が正しかったのかどうか、振り返りが可能となる。打った施策について、効果が確認できなかったとしよう。その際、ペルソナがはっきりしていれば、思考なり行動なりが間違っていたのかもしれない、との仮説を立てることができる。そして、KPI(重要業績評価指数)や既存顧客へのヒアリングなども加味し、再度仮説を立てる。そうすれば、戦略のチューニングもスムーズに進む。

結果いかんによっては、ペルソナ自体をチューニングする必要も出てくるかもしれない。それでもいい。繰り返しになるが、現代マーケティングは、とにかくまず取り組んでみることが重要なのだ。

第三に、決定権者の鶴の一声で、戦略自体をひっくり返されるリスクを減らすことができる。現場レベルでどれだけ努力していても、社長や部長などの意向(往往にして単なる思いつき)で、施策が中断してしまうことは、東西を問わず本当によくある。その際、ペルソナ設定がしっかりしていれば、ある程度ロジカルな反論が可能となる。

ペルソナはこんな性格で、こういったライフスタイルを送っている。そしてこんな悩みを抱えている。だから、こういった施策が有効なんですーー。

ここまで説明できれば(上司が常識的な人物であれば)、よほどの外的要因がない限り、施策は継続できるであろう。

ペルソナ設定の落とし穴

ペルソナ設定には、いくつかの注意点が存在する。

第一に、ペルソナの人数だ。ペルソナは1人にすべきか、それとも2人以上にすべきか。筆者が講師を務めるセミナーで本当によく出る質問であり、マーケティング担当者にとって極めて関心の高い問いだ。

ケースバイケースではあるが、中小B2B企業に向けた本連載では、まず1人を設定することを強くお勧めしたい。なぜならペルソナを2人以上設定した場合、それぞれに対して戦略を立てる必要があるため、担当者の負担があまりにも大きく、かつ混乱が予想されるからだ。

ペルソナ1人について戦略を立て、施策を実行に移す。それだけで相当の体力が必要である。また、あまりに属性のかけ離れたペルソナを2人以上設定した場合、オウンドメディアにおけるビジュアルやコンテンツがちぐはぐな印象を与えかねない。統一感のないオウンドメディアは、媒体過多、情報過多な現代において、支持を集めることは困難だ。

第二に、チューニングのタイミングだ。ペルソナのチューニングの必要性については先述したが、場合によっては触れない方が良い場合もある。例えば、マーケティング戦略を実行に移し、結果が出ている場合が考えられる。

施策を打ったところ、売り上げが伸びた。しかし、購入者の属性を見ると、ペルソナからかけ離れている。これはまずい。一刻も早く実際の購入者にペルソナを寄せなければ…。

このタイミングにおけるチューニングは、明らかに時期尚早と言える。確かに、戦略と売り上げ増の「因果関係」は説明できないかもしれない。しかし、「相関関係」があることは間違いない。結果が出ている以上、少し様子を見るべきである。

焦らずに分析を続けつつ、ペルソナのチューニングと戦略変更の準備だけは、水面下で進めておく。そして、売り上げに陰りが見えたタイミングですぐさま切り替える。これで遅きに失するということはないと断言できる。

消費者の行動というものは、説明できない部分が多い。時には不合理な行動をとる場合もある。これは筆者が修士論文で消費者行動を研究した際も、苦しんだ部分だ。

とはいえ、的外れなペルソナ設定は危険である。例えば赤ちゃん用品のB2Cメーカーが、小学生をペルソナに設定するのは、明らかに間違いだ。ここは幼い子を持つ母親を設定するのが当然であろう(そもそも結果も見込めない)。

※筆者注:またこの場合、プロモーションやキャンペーン単位であれば、父親や祖父母をペルソナに設定することも十分考えられる。

つまり、合理的なペルソナ設定があって初めて、メインのペルソナに触れないという判断が可能となるのである。

次回はペルソナ設定の方法について、具体的に解説していく。

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