Content Marketing World 2019レポート2
ペルソナ2.0

コンテンツマーケティングにおいてペルソナを作成する目的はただ一つであり、それは「バイヤー(購入者)が何を期待しているのかを知り、彼らあるいは彼女らが期待する情報を送り届けることである」とAdeleは話を始めた。色々な業界や分野でペルソナという言葉が使われているが、コンテンツマーケティングにおけるペルソナは、正確にいうとバイヤー(購入者)ペルソナということになるという。

バイヤーペルソナ2.0とは?

さて、「ペルソナ」というキーワードで検索してみるとよくわかるが、ペルソナが年齢や性別、職業といったデモグラ情報や、趣味、人生の目的といった属性情報で構成されていることが多いことがわかる。(日本の場合はペルソナというキーワードで検索するとビデオゲームばかり出てくるので、「ペルソナ マーケティング」と検索してみると同様の結果になる。)

例えは悪いが、こういったマッチングサイトのプロフィール欄のようなペルソナは、ひょっとしたら商品開発等では有用なのかもしれないが、コンテンツマーケティングにおいては使えない。コンテンツマーケティングにおけるペルソナでは、少なくともカスタマージャーニーの各段階でどのような情報ニーズを持っているかがわかる必要があるとAdeleはいう。

情報ニーズを把握する必要性についてAdeleはさらに話を続けた。Adeleが行った調査によると、「質問した情報に適切な回答が得られなかった」という理由で、ベンダーを候補から外したという購入者が81%に上るらしい。現代の購入者は、必要な情報収集に長けている賢い購入者であり、こういったスマートな購入者の情報ニーズに適切にレスポンスすることが必要になってくる。そのためにも適切なペルソナ設定がますます必要になってくるのだ。

世にあふれている使えないペルソナと区別するために、コンテンツマーケティングにおけるペルソナをペルソナ2.0と呼ぶ。ペルソナ2.0は現代のスマートなバイヤーの情報ニーズに対応するためのペルソナともいえる。

ペルソナ2.0を構成する要素

では、ペルソナ2.0はどんな情報で構成されているのであろうか?Adeleによると、ペルソナ2.0においては、カスタマージャーニーの各段階で抱いている情報ニーズが構成要素として含まれている必要があるという。商品やペルソナによって購入にいたるまでのフェーズは多少異なるが、今回は「認知」、「情報収集」、「評価」、「購入」の4つのフェーズで説明がなされた。

各段階における情報ニーズを聞き出すための質問技術

ペルソナ2.0の構成要素で肝となる、カスタマージャーニーの各フェーズにおける情報ニーズを知るためには、セールスから得られる情報や購入者アンケートだけでは不十分だ。購入者及び購入しなかった人にまで対象を広げて直接インタビューを行う必要があるという。

もちろん必要な情報を得るためには、適切なインタビュー技術、適切な質問が鍵を握る。B to Bでの例だが、各フェーズでの質問は以下のようになる。ポイントは、各フェーズでペルソナがどんな経験をし、どんな判断をしたかを知ることにある。

1)認知段階の質問例

「あなたが商品Xの必要性を感じたその日のことを思い出してください。どんなことがありましたか?」

「それが必要性を感じた理由なら、常日頃から感じていたはずですよね?なぜその日に限って行動したのですか?なにか特別なことがありましたか?」

「それが理由だとしたら面白いですね。もっと聞かせてください。」

2)情報収集段階の質問例

「解決策を探すために最初どうしましたか?」

「探して得られた情報から、どんなことがわかりましたか?」

「他にどんなことをしましたか?」

3)評価段階の質問例

「どうやって候補を絞りましたか?」

「その比較ポイントは面白いですね。なぜそのポイントで比較したのですか?」

「そのポイントは最終決定にどれくらい影響しましたか?」

4)購入段階の質問例

「最終的にどうやって関与者の同意を得たのですか?」

「最終的に合意するまでにどれくらいの期間、あるいは承認プロセスがありましたか?」

このセッションでは完成したペルソナシートについては示されなかったが、Buyer Persona Institute のウェブサイトでサンプルを見ることができる。今回の作業で作成できるのはPDFの2ページ目にある下記のシートになる。

ペルソナは何人必要なのか?

ペルソナに関する質問で一番多いのは、ペルソナを何人作れば良いのかという質問だとAdeleはいう。実はこれには答えが無く、何人作れば良いと決まっているわけではない。しかし、一般的にペルソナを作りすぎているケースが多いとAdeleは指摘した。基本的にはカスタマージャーニーにおける各フェーズにおける情報ニーズが同じであるならば、ペルソナを一つにまとめるべきである。コンテンツマーケティングにおいては、ペルソナはあくまで情報ニーズ把握のための手段であるから、ペルソナ作成自体に夢中になりすぎることなく、時には数を減らすという思い切りも必要なようだ。

これまでにも何度かAdeleのセミナーを受講してきたが、彼女の主張には一貫性がありブレがない。但し以前はペルソナ2.0とは呼ばずに、単にペルソナと呼んでいたことから、アメリカにおいても色々なペルソナメソッドが乱立し、適切でないペルソナメソッドを利用するケースが増えてきているのではないかと想像する。その意味で今一度ペルソナを再定義し、コンテンツマーケティングに使えるペルソナメソッドを啓蒙し続けるAdeleのような人物は貴重な存在だ。Adeleの提唱するペルソナ2.0ほど精緻なものではないが、当ラボでもコンテンツマーケティングにおけるペルソナの作り方について説明している。興味のある方には下記の記事を一読願いたい。

関連する過去記事

新規CTA

執筆:渡辺一男

NEWS LETTERをお届けします!

コンテンツマーケティングラボの最新情報を、
定期的にEメールでまとめて、お知らせします

当月の更新情報を翌月初にお届けします。

(購読すると弊社の書籍発売イベントの特典資料をダウンロードできます)

関連する記事