DX時代のマーケターがテクノロジーを使って顧客の理解・体験を考えるにはどうすればいい?

ビジネスモデルそのものが変化する今だからこそ

ここ数年、タイトルに挙げた「DX時代のマーケターがテクノロジーを使って顧客の理解・体験を考えるにはどうすればいい?」というテーマを課題として個人的にもっています。DXは「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略、企業がデータやテクノロジーを使って、自社の製品やサービス、あるいはビジネスモデルそのものをを根底から変化させることをここでは意味します。

結論を先に申し上げると、小規模予算からCRMやMAを導入しやすい環境が整い、実施・検証を通じた顧客データの取得が可能になった今、積極的に知って、使って、実践して、DXを謳歌できるのがマーケター。ざっと概要を学んで取り入れ、むしろ楽しんでしまうことこそが、マーケティングに携わる面々の役どころではないかと思っています。

現在日本国内では1200種、アメリカも含めると9000種以上のツールが存在しているそうですが、一方で「マーケターのキャリアについて調査」(2020年、株式会社ベーシック調べ)によると、「BIツールやマーケツールを業務の中で使いこなせていない」と回答したマーケターが全体の5割に上ります。その気持ち、よくわかります。

やってみないと始まらないのがDX

例を挙げてみます。

かつて自社のECサイトを運営していたのですが、紙のカタログの発行サイクルがベースにあり、ECはサブ的な存在として運営をするスタイルでした。まずは3か月、既存フローでのデータを見て、次の3か月でフローの見直しと必要なデータのピックアップ、それに伴うシステム改修をしました。

ちょうど同じ事業部で同じユーザーを対象とするWebサイトのリニューアル時期と重なっていたため、メディアを統合した上でCRMを導入。恥ずかしながら、当時はCRMもBIツールもよくわかりませんでしたし、システム関連の知識をほとんどもっていなかったため、非常に苦労しました。苦手意識をもつ多くのマーケターの方と同じ土俵に、当時の私は立っていたと思います。

CRM導入によって変化の波が起こった

CRMであらゆるデータが可視化された結果、立てていた仮説が証明されていくと同時に、予想外の事実がいくつかわかりました。

たとえば、

  • 紙のカタログでの人気商品はECでは不人気
  • 1人あたりの年間合計購入金額はECのほうが高い
  • ECユーザーの初回購入には決まったパターンがいくつかある

とか。

まあ……あまり具体的なことは書けないのですが、仮説と全く異なる行動を取るユーザーが「定型パターン」然として存在していることは、CRMを入れないとわかりませんでした。それがわかったのでシナリオを分けてパターン別の販促施策を立て、コンテンツ制作に反映することもできましたし、結果、売上も過去最高を更新し続けました。

また、売り伸ばしや売り逃し防止を考えた際、ECにおける商品の取り扱いフローそのものにボトルネックがあることも、データで判明しました。全体に働きかけて見直してもらい、その後バイイングやカタログの作り方にも改善の波は広がっていきました。

CRMを入れた後は、当然ながら「仮説立案→データ取得→データ検証→施策立案→実行→データ検証→最初に戻る」の繰り返し。全体サイクルのスピードはどんどん上がり、データの精度も使えば使うほど上がっていきます。私にとってマーケターとして目が覚めるような気づきと深い学びを得た経験だったと言っていいと思います。

コンテンツマーケターがDX時代に実は強い理由

システムやツール先行で実施されたDXが頓挫する話はよく耳にしますが、ここで強みを発揮できるのが実はコンテンツマーケターです。ペルソナ作成、カスタマージャーニーマップを通じて顧客が求める情報や体験を必要な形で提供できるよう情報発信を行い、データをもとに集客や販促施策を行う。かつ、企業文化や経営方針、組織のルールを踏まえた上で、社内調整にも通じているからです。

手前味噌ながら、例に挙げた私の話がわかりやすいと思います。私はただデータを見たかっただけなのですが(笑)、多種多様のデータが見られるようになると“いいデータ”を結果として出したくなって、社内調整にも手を出し、ECを取り巻く当該事業のDXを結果的に推進していたわけです。

月数千円の小予算タイプでまずはスタート!?

もともとコンテンツマーケターは自社サービス全般や顧客に関する情報を見渡す役割をもっているため、社内のありかたも含めて俯瞰して見る視点をもっています。そのため、コンテンツマーケターのやりたいこと、知りたいことを突き詰めていくと、DXに行き着いてしまうのだと思います。しかしながら、過去の私のようにデータの取り扱いやシステム構築が未知の領域の場合、そこに足を踏み入れるには、壁が高すぎます。

そんなときに考えていただきたいのが、小予算から始めるMAやCRMです。今は1アカウントあたり月数千円で導入できるサービスもありますので、ご自身の課題を解決できそうなツールを探し出し、まずは試してみる。出したデータをもとに施策をあれこれ打ち始めて、データを追い始めてみる。

結果的にシステム改修や全体の見直しに行き着いてしまうかもしれませんが(笑)、そうなったとき、自社サービスにとって最も良い選択ができる道標を示せるのが、コンテンツマーケターだと思うのです。勘ではなく、データを見てもらいながら事実を根拠に話ができますしね。

ちなみに、コンテンツマーケティングにおけるデータの読み解き方を知るためにおすすめなのが、こちらの動画。データから意味のある情報を効率的に引き出す方法、読み解き方を解説しています。

本サイト、コンテンツマーケティング・ラボのファウンダー、渡辺氏の動画です。2020年11月のコンテンツマーケティングイベント(CMD2020)の基調講演です。

もっと早く読みたかった概略を知るための本

実践する前に概略をざっと頭に入れたいという方に、書籍『DX時代のコンテンツマーケテイング』をおすすめしたいです。

コンテンツマーケターにとってのDXの本質的な内容が体系的に書かれています。少し難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、本質中の本質ですので、ざっと読んでいただいた上で小予算のMAやCRMに取り組んでいただき、実施後に再読をおすすめしたいです。実感を伴うことでなお、肌感覚で理解できるようになると思います。

私自身がDX実践の渦中にいるとき、この概念を知りたかったです。知っていたらもう少し楽だったな~と思いながら、繰り返し読んでいます(笑)。コンテンツマーケティングにおけるDX・CXについて書かれた第2章が、現在全文無料公開中です。ぜひ。強く推します。

また、自社のオウンドメディアの運営方法や「コンテンツマーケティング」を行う意味を改めて問い直したいときには、こちらの動画をおすすめします。実例を交えながら、コンテンツマーケティングの手法や実践方法を、国内外の話題を交えながら解説しています。

執筆:川俣 沙織

株式会社Rdesign factory(アール・デザイン・ファクトリー)代表取締役

出版業界で実用書・タレント本・インタビュー雑誌などの編集者として働いた後、WEBディレクターへ転身。2020年にデジタルマーケティングプロデューサーとして独立。
出版社における雑誌のWEBメディア・EC・CRM・システム構築のほか、他社メディア受託制作等を経験。コンテンツマーケティングを軸に、事業に最適化したコンテンツ制作のほか、メディアのブランディングや全体のグロース設計や戦略設計、運用オペレーションの設計や再構築を得意とする。
「必要な情報が、必要な人に、必要なタイミングで伝わる」メディアづくりが信条。

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