Content Marketing World2014 キーノート速報レポート

”ゴッドファーザー”が語る、コンテンツマーケティングを「成功」させるには?

クリーブランドコンベンションセンターに、世界50カ国から2500人以上が集まったContent Marketing World 2014。そのメインイベント初日最初のプレゼンテーションは、例年通り、このイベントを主催するコンテンツマーケティングのゴッドファーザーJoe Pulizzi氏からスタートした。

Joe Pulizzi氏が「クリーブランドに初めて来た人は?」と会場に問いかけると、会場の半数以上の人が挙手で応えた。このことからも、コンテンツマーケティングに興味を持つ人が世界的にも増えているということが伺える。

Joe Pulizzi氏はまずキーノートの冒頭でナポレオン・ヒル氏の「思考は現実化する」やスティーブン・R・コヴィー氏の「7つの習慣」などの書物を引き合いに出しながら、「夢をちゃんと書き記し、継続的に努力した結果、いまのContent Marketing InstituteやContent Marketing Worldの成長に繋がったのだ」と語りだした。いったい何の話が始まるんだ、と思ったが、その次に語られる内容からこの成功哲学セミナーのような話がつかみであることが判明する。

Joe Pulizzi氏は、2015年のコンテンツマーケティングに向け、例年発表している調査レポートから、重要な事実を紹介した。それは「成功」しているコンテンツマーケターが実践している2つのポイントについてである。まず「ドキュメント化されたストラテジーを書き残すこと」、そして「それを継続的に続け、見直すこと」である(このレポートの詳細は10月頃に紹介される予定だ)。

「太陽系の中心」は企業?ユーザー?異色のコンテンツマーケターが指摘する「買いたい気持ちの作り方」

最初のキーノートとして登場したのは、テレビ業界に長く勤めるという、コンテンツマーケターとしては異色の経歴を持つAndrew M. Davis氏。

1日に何杯もコーヒーを飲むらしく、今日もハイテンションで登壇した。

「マーケターはすぐにファネルを基準に考えがちだが、100年以上前に考案されたファネルモデルが今も通用するわけがない。なぜなら100年前とはユーザーを取り巻く環境が大きく変わっているからだ」と語るAndrew M. Davis氏。現代においては、ユーザーを取り巻く環境が激変しているので、マーケターにはプトレマイオスの天動説からガリレオの地動説に切り替えるくらいの発想の転換が求められているという。言い換えるならば、現代は企業を中心とした太陽系にユーザーが存在するのではない。ユーザーを中心とする太陽系のはるか彼方に、企業が存在しているようなものなのだ。

その遠い存在からユーザーに関心を持ってもらうためのキーワードは”Create Moment of Inspiration”(ユーザーに、欲しいと思うきっかけとなる閃きを与えること)だ。

たとえばディスニー映画「ファインディング・ニモ」のヒットにより、世界中のカクレクマノミはもちろん、その飼育セットなどの関連商品が売れ莫大な需要を生み出した。しかし、これはエンターテイメント業界だけの専売特許ではない。もしも企業が”Create Moment of Inspiration”に取り組む場合は次の4つの手法を使うと良い。

”Build Suspense”(「この先どうなるのだろう」というドキドキ感をあたえること)

オーストラリアのキッチン器具メーカーBreville社はジューサーを欲しいと思ってもらうために、「太りすぎて今にも死ぬかもしれない男性がアメリカ横断をし、その先々でジューサーでジュースをつくって飲むことで減量に挑戦する」という番組を作った。痩せるのか、死ぬのかというハラハラドキドキ感はユーザーの関心を惹きつけ、ユーザーは、結果的には男性が減量に成功することを知ることになる。この結果同社のジューサーは売り切れとなった。

“Foster Aspiration”(魅力をつくり出すこと)

B to Bの企業でも「魅力をつくり出す」ことは効果的だ。ロジスティックス業界のメディアであるDC Velocityは配送という一見地味な作業に光をあて、その高度な技術をわかりやすく紹介することで魅力をつくり出した。

”Drive Empathy”(共感を生み出すこと)

これは有名な話だが、IBMは人工知能であるWATSONをクイズ番組に出演させた。WATSONがクイズに果敢にチャレンジする姿勢をみせることで、コンピューターという無機質なものに人的な温かみを付加し共感を生み出すことに成功した事例だ。

”Harness Emotion”(感情を利用する)

遺言を残さず死んだ男性の遺産相続を巡る争いを描いた番組が放送された翌日には、弁護士に遺言の相談が殺到した。これは企業がつくった番組ではなかったのだが、論理的に遺言の必要性を伝えるよりも、感情に訴えたほうが効果的なこともあると示唆した事例だ。

このキーノート「Inspired Content: How Brilliant Storytellers Create a Sudden Urge to Act」の内容をその場でまとめたもの

「データをどう活用するか…」クラフトフーズ社が実践する、コンテンツマーケティングの最前線

二人目のキーノートスピーカーを、クラフトフーズ社のJulie Fleischer氏が務めた。

Julie Fleischer氏はContent Marketing Worldのキーノート登壇の常連だ。

これまでのキーノートと重なる点も多かったが、深化した点はデータの活用だ。クラフトフーズ社はデータの活用において、ミクロとマクロの視点を持っている。それは言い換えるならばセグメンテーションではなく、より小さな個に注目することと、その一方で世の中の大きなトレンドもつかまえるということだ。たとえばクラフトフーズ社はユーザーの行動履歴を追って個に応じた最適なコンテンツを表示させたり、その一方「アナと雪の女王」の人気が高いことから、雪をモチーフとしたパーティメニューを新たに開発し提案した。

Julie Fleischer氏は、結局データ活用の肝は「データに対して素早く反応し、革新的なコンテンツとしてユーザーに提供すること」だと語る。つまりコンテンツをつくってデータをとり、そのデータを活用しまた新たなコンテンツを生み出すことを素早く繰り返すことが重要なのだ。

これほど著名なコンテンツマーケターが、「コンテンツマーケティング自体は昔からあるが、日々進化している。だから毎年Content Marketing Worldに参加しても常に新たな視点が発見できるのだ。」と語っていたのが、印象的だった。

確かに、この午後から2日間で16ものテーマで分化セミナーが開催された。このカテゴリー数をみても、コンテンツマーケティングの進化が伺える。私たちも、その中から印象に残っていたものをさらにレポートしていく予定だ。

このキーノート「The ROI on Content: How Kraft Learned the True Value of Their Content and Rebuilt Their Marketing Around It」の内容をその場でまとめたもの

構成・編集:渡辺一男

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