ECサイトのコンテンツマーケティングで成果を出す、海外企業がこぞって取り組む汎用ノウハウ

今回は海外のECサイトにおけるコンテンツマーケティングの成功事例を紹介する。

ここで紹介する企業は、ハウツーコンテンツによって特定のキーワードで検索上位表示を達成することで、疑問や課題を抱えた人々を集客。そこで解決につなげるために必要な自社商品を提示することで、販売増へつなげている。

ハウツーコンテンツとは、やり方や手順、解決方法などを説明したコンテンツを指す。ただし、そのテーマが自社商品に直接あるいは間接的に関連している点がミソだ。たとえば家電向けの部品を販売しているECサイトによるコンテンツであれば、「水漏れした冷蔵庫の直し方」といった具合だ。

具体的な事例に入る前に、まずはコンテンツマーケティングにおけるハウツーコンテンツの重要性に触れてみたい。

集客と販売に貢献するハウツーコンテンツ

ECサイトにハウツーコンテンツを掲載することで、どのような効果を期待できるのか?今回の記事によると、大きくは集客増と販売増だという。細かく分けると以下になる。

  1. 見込み客の課題を解決できる

    見込み客が抱える課題を解決してあげることで、サイトへの印象を良くすることができる。たとえ初回の訪問で購入に至らなくても、その後の購入につなげやすくなる。

  2. 検索結果画面で上位に表示することができる

    購入につながり得る検索キーワードで、上位に表示することができる。これらのキーワードは、ロングテール寄りで競争が激しくないことも多い。

  3. 目的意識の高い見込み客を集客できる

    検索経由で流入してくるユーザーは、何らかの疑問や課題を持っているはず。そのニーズを解決する手段として自然に商品を紹介すれば、購買につながる可能性が高くなる。

  4. 継続的な流入を見込むことができる

    検索上位に表示されるコンテンツを作るには手間がかかるかもしれない。しかし一度上位表示されてしまえば、ある程度の間は自動的にユーザーを引き寄せてくれる。

  5. 専門家としての地位を確立できる

    ユーザーの役に立つ専門知識を提供していくことで、商品やブランドへの信頼が増すだろう。

  6. ユーザーによるシェアを期待できる

    役立つコンテンツであれば、ユーザーにシェアされる可能性が高い。そうすればさらなる拡散を期待できるだろう。

  7. 動画であれば、検索結果におけるより高いクリック率を期待できる

    ハウツーコンテンツは、テキストだけでなく動画で作られることも多い。検索結果画面において、動画はテキストよりクリックされやすい傾向にある。

  8. 販売につながる

    ハウツーコンテンツによって、購買に導くことができる。例えば、ジーンズを検討しているものの、自分に合ったサイズが分からない見込み客がいたとする。体のどこを測ればぴったりのサイズを見つけることができるかなどのハウツーコンテンツを提供できれば、ジーンズの購入につながる可能性は高まるだろう。

疑問解決から販売につなげる、ハウツーコンテンツの実践例

RepairClinic.com

ハウツーコンテンツが重要だとはいえ、ただ発信するだけでは集客できても効果的に販売につなげることは難しい。訪問してきた人をうまく販売まで導くために、サイト内の導線も工夫する必要があるだろう。そのような事例を一つ紹介する。

RepairClinic.comは、家電や電気器具の部品を販売しているアメリカのECサイト。このサイトから学ぶべきは、ハウツーコンテンツの掲載だけでなく、疑問を抱える見込み客を販売まで導くためのナビゲーションだ。

同サイトはハウツーコンテンツによって集客しているため、商品そのものを探すというより、まずは疑問の解決を求めて訪れる人も多い。そんな訪問者がサイト内を迷わず進めるよう、同サイトのナビゲーションは商品別だけでなく、課題別にも対応している。

主な機能の一つがサイト内検索だ。例えばサイト内の検索ボックスに「Pressure washer leaks water」(高圧洗浄機の水漏れ)と入力しようとする。すると「Pressure washer runs poorly」(高圧洗浄機がうまく稼働しない)、「Pressure washer has no pressure」(高圧洗浄機の圧力が弱い)など、関連する「Problems」(課題)が候補として表示されるのだ。

RepairClinicのサイト内検索入力例

またその先にあるハウツーコンテンツ上にも工夫がみられる。先ほど紹介した、「高圧洗浄機の水漏れ」に関するハウツーコンテンツを見てみよう。

このページでは、水漏れの原因を3つ紹介。さらにそれぞれの原因を紹介したスペースには、故障した機材のモデルナンバーを入力する欄が設けられている。ここに入力すると、修理に必要な部品が表示される仕組みになっているのだ。

このように、ハウツーコンテンツによって課題を抱えた人々を集客した後に、課題解決に必要な商品を提示するというやり方は、非常に参考になりそうだ。

RepairClinicのハウツーコンテンツページ。

eSpares

イギリスで家電のスペアパーツ販売業を手掛けるeSparesも、RepairClinic.comと非常によく似た試みを行っている。一つ異なるのは、動画コンテンツに注力している点だ。

2016年9月現在、彼らのYouTubeチャンネルの登録者は4万4000人以上。最も人気のある動画の再生回数が約180万回(2016年9月現在)に上るなど、一定の人気を集めている。

家電の修理方法は、テキストだけで説明するには複雑すぎる場合も多い。eSparesは、ビジュアルで説明できる動画という手法をとることで、見込み客の課題を効果的に解決。検索結果での上位表示という成果にもつながっているようだ。

キーワード「how to fix a leaking fridge」(冷蔵庫の水漏れ修理方法)で検索すると、同社の動画が1位に表示される(9月14日現在)

Home Depot

ハウツーコンテンツによる集客から販売につなげる例としては、アメリカのホームセンター大手Home Depotも参考になる。

例えば「Weatherproofing Windows」(窓の補強)というハウツーページを見てみよう。RepairClinicなどと同じく、ハウツーの説明に加えて、必要な器具や材料の一覧を表示。クリックすると各商品の販売ページへ飛ぶ仕組みだ。

また細かい点としては、記事の冒頭に作業にかかる時間や難易度が示してある点も非常に気が利いている。自分にできるのか、どれくらいの時間がかかるのかが分かるから、自分でやってみようどうかを判断できる。

Home Depotによるハウツーコンテンツの一例。タイトルの下に目をやると、「Beginner」(初心者向け)、「1-2 hours」(所要時間1~2時間)とある。

サイト内検索ボックスも工夫している。キーワードを入力すると、予測変換キーワードの一覧に加えて、該当の商品画像がユーザー評価と共に表示。さらに「Buying Guides」(購入ガイド)といった関連ページへのリンクも出てくる。

Home Depotのサイト内検索入力例

Home Depotがいかにコンテンツによって集客と販売増を達成しているかについては、別の記事で詳しく紹介している。ぜひ参考にしてほしい。

関連する過去記事

コンテンツによって集客した後に、いかに販売につなげるか?今回紹介した事例は、そのやり方を示す一例といえるだろう。

彼らはハウツーコンテンツによって疑問を解消した上で、解決に必要な商品に導いている。最終的に商品を売り込んでいることになるが、見込み客が本当に必要とするタイミングで行っているため、嫌がられることはないだろう。

商品を売り込んでも喜ばれるシチュエーションをいかに作るか。早すぎず遅すぎず。これが成果につながるコンテンツマーケティングのポイントといえそうだ。

執筆:三友直樹(日本SPセンター)

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