コンテンツマーケティングの成果が変わる、読者の期待に応じたコンテンツの作り分けノウハウ

集客やコンバージョンなどを目的とした記事を書いたが、成果につながらない。コンテンツマーケティングでありがちな失敗だが、原因は何だろうか?

「記事の質が低かった」「コールトゥアクション(CTA)が不適切だった」など様々な要因が考えられるが、その前のステップである設計段階に問題があることも意外と多い。

つまりどのチャネルからの訪問者に閲覧してもらうかをあいまいにしたまま、コンテンツを作成してしまっているのだ。

たとえば検索経由での流入を増やすのか、SNSでのシェアを獲得するのかによって、記事の作り方は全く違ってくる。これは後述するように、検索経由とSNS経由でサイトを訪問する人たちでは、コンテンツへの期待が大きく異なるからだ。

だから記事を執筆する際には、主な流入元となるチャネルを決めた上で、そのチャネルから訪問してくる読者の期待に沿った方向性を事前に考える必要がある。

それでは検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツの違いとは何か?またそれぞれのコンテンツによる成果はどのように計測するべきなのか?米Content Marketing Instituteに掲載された記事を参考にしながら解説していこう。

検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツの違い

ニーズが顕在化している人が訪れる検索向けコンテンツ

検索向けコンテンツを訪れる人は、自ら検索キーワードを打ち込んでいることから、すでに疑問がある程度明確になっている状態といえる。

だからその受け皿となる検索向けコンテンツの役割は、情報の提供や教育によってこの疑問を解決してあげることだ。

検索キーワードという形で現れた疑問を的確に解決するためのポイントは、キーワードの言葉尻に振り回されるのではなく、その裏にある検索者の本質的な意図を把握することだ。

彼らの欲求は、キーワードを構成する言葉から読み取れる場合が多い。たとえば検索者の意図ごとにキーワードを整理していくと、次の3つに集約できるだろう。

  1. Informationalキーワード

    情報を集める時に使われるキーワード。1~2つ程度のキーワードで構成されることが多い。「夕飯 レシピ」「インテリア 実例」「コンテンツマーケティング 戦略」など。

  2. Navigationalキーワード

    閲覧したいサイトやブランドが決まっている場合に使われるキーワード。「Facebook」「iPhone」「Amazon」など。

  3. Transactionalキーワード

    購買や登録をはじめ、何らかの行動を起こそうとしている時に使われるキーワード。「靴 通販」「フィジー 格安航空券」「音楽 ダウンロード」など。

3つの意図ごとにキーワードを分けることで、購買プロセスにおける検索者の現在位置を把握できる。こうすることによって、購買に導くために適切なコンテンツを見極めやすくなるのだ。

たとえば仮に商品のブランド名で検索している人をターゲットにコンテンツを作る場合、購買プロセス初期で情報収集をしている段階の「Informational」、もしくは購買一歩手前の「Transactional」にいる検索者を想定する場合が多い。

「Informational」のキーワードで検索した人は、購買熟度は高まっていないものの、将来その商品を選んでくれる可能性のある人たちだ。そのためブランドイメージを向上させるようなコンテンツの提供が中心になる。

一方「Transactional」キーワードの検索者であれば、具体的に購買を検討している人である可能性が高い。そのため彼らの検討を手助けし、購買に向けて後押しできるコンテンツが望ましい。

興味本位の人たちが訪れるSNS向けコンテンツ

すでに疑問が明確になっている人の受け皿となる検索向けコンテンツに対し、SNS向けコンテンツを訪れる人たちは、必ずしも何か知りたい情報や目的を持っているわけではない。FacebookやTwitterなどのタイムラインで、偶然コンテンツを目にした結果、訪問してくるケースが主だからだ。

彼らは特定の疑問を解決するためにSNSを使っているわけではない。友だちや気になるFacebookページの情報をチェックしたり、コミュニケーションを楽しむためにログインしている。つまり何も欲しいと思っていない、もしくは自分の欲求に気づいていない状態の人たちなのだ。

そんな彼らがSNSでコンテンツをクリックする動機は、「これはなんだろう?」という程度の興味本位である場合が多いだろう。

こういった特徴を考慮すると、SNS向けコンテンツの強みとは、まだニーズが顕在化していない、もしくは検索キーワードでは表しにくい疑問を持った見込み客と接触できる点だといえる。

購買ファネルにおける役割

訪問者による期待や、求められる役割が異なる検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツ。この違いを購買ファネルに当てはめて整理すると、次の図のようになる。

まずファネルの最上部にある「Awareness(認知)」。この段階で効果を発揮するのがSNS向けコンテンツだ。先に説明したように、ニーズがまだ顕在化していない人たちと接触しやすいため、ブランドや商品の認知向上に役立つ。

ただ一方で、商品によっては直接売上につなげにくいコンテンツでもある。たとえば耐久消費財のように購買に至るまでにある程度の検討が必要な商材の場合、SNS向けコンテンツによる認知だけでは足りないだろう。

すでに認知している人による検討の促進や、特定の疑問の解決は、検索向けコンテンツの得意領域だ。ファネルでいうと、下部の「Discovery(自分ごと化)」や「Conversion(コンバージョン)」をカバーしている。

認知前の見込み客に効果を発揮するSNS向けコンテンツと、認知後に使える検索向けコンテンツ。どちらがより重要だということではない。コンバージョンの達成に向けて、適切に組み合わせて使うことがポイントだ。

次からは、2つのコンテンツの具体例をみていきたい。

検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツの具体例

検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツの違いを知るために、ちょうど良い事例がある。2015年のはじめに英語圏でバズった、クアッカワラビーに関する記事だ。クアッカワラビーは、別名クオッカとも呼ばれる有袋類の動物で、オーストラリアに棲息している。

事の始まりはBuzzfeedなどのバイラルメディアによる記事。複数のメディアが、クオッカと一緒に写った観光客たちの自撮り写真をまとめて掲載したのだ。

笑っているように見える愛らしいクオッカの姿が人気を呼び、一連の記事は瞬く間にソーシャルメディア上でシェアされた。最も人気だった記事のシェア数は、約14万にも上ったという。

Buzzfeedの記事に掲載された、クオッカとの自撮り写真のうちの一枚

ここからが本題だ。

「クオッカとの自撮り」というトピックがここまで人気を博したにもかかわらず、バズから数か月経っても、キーワード「Quokka」の検索結果上位にこの話題に関するページが現れなかったのだ(2015年11月現在)。

今回参照した記事の著者によると、検索結果の8ページ目にようやく1本見つかった程度だったという。

キーワード「Quokka」での検索結果画面

これは何を意味するのか?

まず言えることは、ソーシャルメディア上でバズったからといって、必ずしもGoogleでの検索順位が大幅に上がるとは限らないということだ。

ここに検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツの違いを垣間見ることができる。

SNS向けコンテンツは、人々の興味を引くようなユニークなトピックであればシェアされるが、検索順位の基準はそうではない、もしくはそれだけではない。すでに疑問が顕在化しているユーザーを相手にしているため、その疑問に対して適切な内容であるかが重視されるのだ。

実際に当時の検索結果の1ページ目に表示されていたコンテンツは、次のようなページだった。

  • クオッカに関する基本的な説明(Informational)
  • クオッカに関するニュース(Informational)
  • クオッカと関連するビジネス・観光地情報(Transactional)

こうした結果から、検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツでは、求められるコンテンツの役割が大きく異なるといえる。だから1本の記事によって、検索結果の上位表示とSNSでのシェアの両方を達成することは、簡単ではないだろう。

そのため冒頭で説明したように、記事を書く前にどちらの方向で作るか決めることが重要なのだ。

検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツの評価指標

それぞれのコンテンツを作成・発信した後は、具体的な指標によって成果を評価する必要がある。評価指標というと、売上やリードの獲得数といった最終コンバージョンを思い浮かべがちだ。

しかしこのような指標だけでは、コンテンツマーケティングの取り組みを正確に測ることはできない。コンテンツマーケティングの役割とは、潜在顧客を段階的に購買に導いていくことであるため、認知獲得や自分事化といった中間コンバージョンも併せてみていく必要があるのだ。

今回参照した記事では、検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツの評価指標の一例が紹介されていたので、参考にしてほしい。

検索向けコンテンツとSNS向けコンテンツの評価指標例

このように最終コンバージョンに加え、中間コンバージョンも明確にすることで、取り組みをより包括的に評価することができる。各ステップでの現状を数値で把握できるため、ボトルネックも発見しやすい。改善に向けたPDCAをより効果的にまわすことができるようになるはずだ。

一つのコンテンツに対して、検索とSNSの両方からの集客を期待してしまう、もしくはどちらのチャネルから集客するのかあいまいにしたまま制作してしまう、という失敗は少なくないだろう。

しかしこの記事で説明したように、受動的に情報を受け取るSNSユーザーと、能動的に情報を求める検索ユーザーでは、求めているコンテンツが異なる。

そのため思い切って2つを作り分けられるか考えてみてはどうだろうか。たとえばある商材をSNSと検索の両方で訴求するならば、思わずクリックしたくなるキャッチーなトピックのSNS向けコンテンツと、特定の検索キーワードと関連している疑問を解決する検索向けコンテンツといった具合だ。

こうした異なる役割のコンテンツを組み合わせることで、見込み客を段階的に購買に導くことが重要だ。

執筆:三友直樹(日本SPセンター)

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