オウンドメディア開始から1年半で月間780万PV、秘訣は「素人目線のプロ」

特にオウンドメディアのコンテンツを内製する場合、執筆者は「特別な情報」「専門性の高い情報」を伝えようとしがちだ。

しかし、専門的な内容であればあるほど、読者置き去りのコンテンツとなり、結局は誰にも届かない状態となってしまう。では、どうすれば読み手に伝わる、届くコンテンツとなるのか?

Content Marketing Day 2018にて「スタートアップの『特別』なコンテンツを『当たり前』に作る方法とは」とのテーマで登壇して会場を沸かせた、ユアマイスター株式会社の取締役・高山武佐士氏のプレゼンから、そのポイントを読み解く。

CMDに登壇した高山武佐士氏

オウンドメディアは立ち上げ1年半で月間780万PVに

ユアマイスター社の主力サービスは、ハウスクリーニングや革製品の修理を手掛ける職人と消費者をつなぐプラットフォーム「あなたのマイスター」。高山氏含め楽天出身者らで立ち上げた企業らしく、「職人さんたちの技術のECモール」とも呼べる、アイデア溢れるサービスだ。

「あなたのマイスター」

同サービスのオウンドメディア「RELIVERS」(リライバーズ)は、2016年の立ち上げからわずか半年で月間100万PV(ページビュー)を突破。1年半後にはなんと月間780万PVに到達している。高山氏によると、RELIVERSのCV(コンバージョン)は、本サイトである「あなたのマイスター」に送客し、サービス購入につなげることだ。

現在では、ユアマイスター全体のコンバージョン数のうち、オウンドメディア経由のコンバージョンは10%を占めるという。なお、この数字には、オウンドメディアを一度離脱してから本体サイトで決済した分については含まれていない。

コンテンツに橋をかけることを意識

コンテンツマーケティング戦略がうまくはまっている同社であるが、運用開始してから間もないころは、思うように数字に結びつかなかったという。

原因をチームで分析したところ、「そもそもオウンドメディアに集客できていない」「本体サイトに送客できていない」という2つの課題が浮かび上がった。

そこで意識したのが「コンテンツで橋をかける」という視点だ。まず「(1)自分でやる」ためのお役立ちコンテンツ、次に「(2)プロを知る」ための職人の技術を紹介するコンテンツ、そして「(3)プロに頼む」ためのサービスや職人さんを紹介するコンテンツ。それぞれのフェーズにおけるコンテンツをバランス良く制作し、コンテンツで次のフェーズに橋をかけていくことを意識した。

RELIVERSでは、集客からコンバージョン(サービス購入)へつなげるために、3段階のコンテンツを用意している

「(1)自分でやる」コンテンツの一例。

「(1)自分でやる」コンテンツの最後には、「(2)プロを知る」ための職人技術紹介コンテンツ集への導線が貼られている

「(2)プロを知る」コンテンツの最後には、「(3)プロに頼む」ためのサービスや職人さんを紹介するコンテンツへの導線が貼られている

コンバージョンを意識しての、かつ悩み抜いた末の取り組みであったが、検索順位が上昇してPV数はうなぎのぼりに。高山氏は「ユーザーのニーズを捉えたコンテンツを充実させたことが評価されたのだろう」と分析する。

同時に高山氏は、「大きなキーワード狙いではなく、ユーザーをファネルの下部へと誘導する『橋』のようなコンテンツでも、集客を狙えることに気づいた」と振り返る。

当時はカスタマージャーニーマップという言葉すら知らなかったという高山氏だが、限りなくそれに近いマップをもがきながら独自に編み出した形だ。

プロにとっての「当たり前」はユーザーにとって「特別」なコンテンツ

戦略の重要性について、身をもって感じたという高山氏だが、コンテンツ制作は具体的にどのように進めていたのか?

プレゼンにて高山氏は、「素人目線のプロになることが重要だ」と再三訴えた。

オウンドメディア運営で大前提となるのが、ペルソナの悩みを解決するコンテンツを出し続けることだ。一方で、いわば「その道のプロ」たちが運営するオウンドメディアだからこそ、しばしば専門的すぎる内容になってしまうこともある。

しかし「RELIVERS」のペルソナはこのサービスに関して言えば「素人」な人たちだ。そうした人たちにとって、プロが専門用語を駆使した書きぶりは、面白みがなく、頭に入ってこない可能性が高い。

高山氏はこの状態を「プロにとっての『特別なコンテンツ』はユーザーにとって『興味のないコンテンツ』だ」と言い表した。

一方で、プロにとっては「当たり前のコンテンツ」でも、その内容を分かりやすく伝えれば、ユーザーにとって「特別なコンテンツ」となりうると指摘。この素人にとって一見難しいが有用な部分をコンテンツとして分かりやすく伝えることで、ユーザーに支持されるオウンドメディアになると強調した。

プロが専門用語を駆使して書いた文章の一例

同じ内容を「素人目線」で書き直した例

このようにユーザーにとっての特別なコンテンツを作り出すために必要なのものが「素人目線」というわけだ。

「SEO的に」というワードがチームから飛び出したら要注意

自らのチームを「もともとは素人集団だった」と振り返る高山氏。

チームが結果を出し続けるために必要なことについて、「明確な目標を音に出すことだ」と言い切る。新メンバーがチームに加入する際は、コンセプトやスローガンをしっかりと説明。さらに折に触れてチームでこれらを再確認する。

このように会社やブランドのメッセージへの「共感」が、メンバー全員に必要なことなのだという。

また、高山氏は、メンバーの口から「SEO的に」や「一気にすぐに簡単に」などのワードが飛び出したら要注意と指摘する。本来すぐに結果に結びつく施策など存在せず、愚直にユーザーのためにやり続けるしかない。それがエンゲージメントを高め、ファンを増やすのだと高山氏は強調する。

ユアマイスター社内での要注意ワード

一方で高山氏は「面倒くさい」はチャンスワードであると指摘する。面倒なことは同業他社が避けるため、それをやれば結果につながることが多い。したがって同社では「面倒くさい。だからやろう」を合言葉に取り組んでいるという。

素人目線のプロ、そして面倒だからやろう。コンテンツマーケティング関連のプレゼンではなかなか聞くことができないフレーズであるが、実践者の言葉は極めて重い。ある程度の戦略を立てたら、手を動かしながら考える。そして愚直に取り組む。これこそがコンテンツマーケティングの勝ち筋なのだと感じさせる高山氏のプレゼンであった。

執筆:田中森士(クマベイス)

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