【インタビュー】「コンテンツマーケティングの可能性を広げる紙メディア」~Joe Pulizzi氏語る

企業がPublisherに…コンテンツマーケティングの定義

まず1つ目の質問ですが、“コンテンツマーケティング”の定義を改めてお聞かせください。

コンテンツマーケティングとは、簡単に説明すると「企業がPublisherになれる」という考え方です。ここでいう「Publisherになる」とは、適切で説得力と価値のあるストーリーを語れるようになることを意味しています。その結果、見込み客が購入にいたるまでの意思決定を後押したり、信頼関係を築いたり、個別に直接コミュニケートできるようになるのです。そしてそれは「メディアを借りる」(=従来メディアの広告枠を買う)のではなく、自らの所有するメディアでコンテンツを配信し、見込み客と直接的な関係を結ぶ、という考え方ともいえるでしょう。

最も重要なのは、目的によってメディアを使い分けること

では、2つ目の質問です。コンテンツマーケティングに関する様々な戦略がある中、我々は紙メディアとデジタルメディアのバランスをどう取っていけばいいでしょうか?

マーケティング担当者の多くが犯しがちな最大のミスは、紙メディアかデジタルメディア、どちらか一つに的を絞ることです。私は“両方”を使い分けることが重要だと考えています。たとえば、紙メディアの活用意図を明確にした上で、デジタルメディアと紙メディアを融合するような仕掛けを作り出せれば、紙メディアは素晴らしい効果を発揮するでしょう。多くのマーケティング担当者が「雑誌はやめてデジタルメディア一本で行きます」だとか「ブログで展開します」などと言うのを見てきましたが、非常に短絡的だと思います。ウェブ上でリードジェネレーションするためにホワイトペーパーや電子書籍を利用する発想で、紙メディアを考えてはいけません。

メディアを選ぶ前に、まずキャンペーンの目的を明確にしなければいけません。見込み客が抱えている問題点を見つけた後にその解決法を伝達するために最適なメディアを選ぶのです。この時にデジタルメディアと紙メディアの両方を活用することを考えると効率的な伝達を実現できると思います。

減少する紙メディアの効果を侮るな。使い方一つで紙メディアは大きな力を発揮する

2008年に出版された「Get Content,Get Customers」に比べ、2011年に出版されたロバート・ローズ氏との共著「Managing Content Marketing」では、紙メディアに対する言及が減ったように感じたのですが、その辺はどうお考えですか?

実際、北米では紙メディアの利用率は減少しています。数年前は45~50%のマーケティング担当者が、会報や雑誌など何らかの紙媒体を利用していましたが、今では30%程度にまで減少し、現在も減り続けています。今後も、紙メディアの利用率は横ばい、もしくは減少し続けるでしょう。今日、我々はiPadやスマートフォンといったデジタルデバイスを通じ、いつでもお客様とコミュニケーションを取れるようになりました。これはこれで素晴らしいことです。しかしながら、多くのマーケティング担当者が、デジタルデバイス経由でコミュニケーションを取ろうとしている中、デジタルメディアを使って見込み客の興味をひきつけるのは簡単なことではありません。ですから、いかに独自のアプローチで差別化を図り、興味喚起するかを考えるべきなのです。

そして、その答えのひとつが“紙メディア”です。当社は「Chief Content Officer」という雑誌を発行しており、書籍も出版しています。我々はこれらの経験から、紙メディアが使い方によっては大きな効果を発揮するのを実感しています。要は、ブランドで何を伝えようとしているかをまず決めることです。それを伝達するためには、紙とデジタルのインテグレーションがベストだと考えますが、正直なところ多くのマーケティング担当者は、デジタルメディアのみに注力しています。

つまり紙メディアには、利用率減少という統計だけでは推し量れない価値がある、ということでしょうか?

紙メディアが減少しているのは事実です。当社がコンタクトしているほとんどのブランドが、紙メディアのことは頭にありませんからね。紙メディアを表面的に知っているだけで、その機能を理解していないのです。なぜなら、紙メディアの効果測定が難しいからです。しかし、効果測定できないからといって紙メディアが効果を発揮していないとは言えません。ですから、紙とデジタル、両方の効果について検証するべきです。スマートにやれば、紙メディアの費用対効果を上げることも可能です。そして、紙メディアにおいては製品やサービスの押し売りをするのではなく、ストーリーをしっかり伝える、人々に注目されるものを作ることが重要です。しかしながら残念なことに、企業誌の多くは非常にひとりよがりな内容です。メディア企業のように、どうすれば読者のニーズに応えられるかを考えて雑誌を作れば、自ずと目的は達せられるでしょう。

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以下はアメリカでコンテンツマーケティングが盛り上がり始めた2012年に行ったインタビューの記事です。コンテンツマーケティング初期の記事なのでこれからコンテンツマーケティングについて勉強したい方に分かりやすい内容になっています。

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