Content Marketing World 2019 レポート3
コンテンツマーケティングの原点

Marcusは、コンテンツマーケティングを成功させるために一番重要なのは、「They Ask. You Answer. (顧客の質問に企業が答える)」という心構えだと主張する。それは言い換えるならば、顧客の声に耳を傾け、顧客が抱える疑問に答えてあげるという企業文化を作ることを意味する。こうしたコンテンツマーケティングを成功させる企業文化を作り上げるためには、7つの要素が必須だという。では、その7つの要素について紹介していこう。

要素1:上層部の同意を得る

Marcusが最初に取り上げたのは、上層部を巻き込み、賛同を得るというポイントだ。上層部の関与についてはJoe Pulizziのキーノートでも同じことが言われていたが、コンテンツマーケティングを成功させるために重要な要素となる。上層部の意識が変わらなければコンテツマーケティングが成功する確率は低くなってしまう。

だからまず、上層部に対してコンテンツマーケティングを完全に理解してもらう必要がある。その際に有効なのがワークショップの開催だ。上層部にも参加してもらい、コンテンツマーケティングとは何なのか、どのように実施していくのか、なぜコンテンツマーケティングが必要なのかについて納得してもらう必要がある。

要素2:コンテンツマネージャーを決める

二つ目に重要となるのが、コンテンツマーケティングを実施するためのマネージャーを決めることだ。コンテンツマーケティングは片手間にできることではない。どっぷりと浸かり24時間体制で臨む必要がある。そのためにはコンテンツマーケティングにコミットしたリーダーが必要だ。またコンテンツマネージャーの役割は自分が目立つことではない。裏方として営業パーソンを立て、「営業パーソンをいかにデキる奴に見せるか」に情熱を注げる人である必要があるとMarcusはいう。

要素3:内製する

三つ目の要素となるのが、コンテンツを誰が作るのかということになるが、理想的なのは内製することだとMarcusはいう。商品やサービスのことを熟知しており、さらに顧客の声にも触れている人物以上に適切なコンテンツを作れるタレントはいない。この時に重要になるのが、内製する従業員の特性の見極めになる。書くことが得意なタイプ、演じるのが得意なタイプ、話し上手なタイプ、質問を投げかけるのが得意なタイプの4つのタイプ別に、適切なコンテンツ、つまり記事なのか動画なのかなど適切なフォーマットを使い分けることが重要だとMarcusは補足する。

要素4:ファネルの下層から始める

4つ目の要素となるのが、ファネルの下層からコンテンツを整備していくという考え方だ。コンテンツマーケティングが失敗するのは、ファネルの上からコンテンツを作り始めるケースが多いとMarcusは指摘する。

ファネルの上層から始める、つまり集客用のコンテンツから手をつけることは、効果が見えやすく、やった気になるが、それ以降の段階で機能するコンテンツが用意されていなければ、せっかく集客できた顧客が逃げていってしまう。

一方、ファネルの下、つまり購入に近い顧客の疑問に答えることからコンテンツを用意していけば、躊躇していた顧客が購入に至る確率が高まる。さらにファネルの下からコンテンツを整備していけば、ファネルの途中から離脱する顧客の割合を、段階的に少なくすることができるというメリットもある。

ファネルの下層のコンテンツとして備えるべき要素は5つある。検索ワードでいうと、「価格」、「問題点」、「比較」、「レビュー」、「ベスト」になる。特にこの中でも「価格」について言及することが重要になるが、ほとんどの企業はこの疑問に答えていない。もちろん、「詳しい仕様が決まらないといい加減なことは言えない」、「他社に価格を知られたくない」という背景があると思うが、それでもやはり価格については答えるべきだとMarcusは強調する。

実は顧客が知りたいのは、正確な価格というよりも、だいたいどれくらいになるかという費用感であることが多い。だから幅をもたせても良いので価格帯を示すことが重要になる。ちなみにRiver Pools and Spasのウェブサイトでは、価格について説明したページのアクセス数が最も多く、このページが生み出した売り上げは、約7億円に上るという。価格について明かすことは、リスクをはるかに上回るリターンを得られる上策なのだ。

購買に近いファネルの下からコンテンツを整備すべきであり、そうすることでコンテンツマーケティングの成功率が高まる。

要素5:コンテンツを営業ツールとして活用する

5つ目の要素は、コンテンツの活用方法になる。Marcusは、営業パーソンがウェブサイトのコンテンツをほとんど活用していない事実に気づいたという。せっかく引き合いがあって訪問しても、営業パーソンが、顧客が既に知っている内容を一から話し始めては興ざめしてしまう。営業パーソンもウェブサイトのコンテンツを熟知し、顧客がどんなコンテンツを読んでいるのかについては知っておくべきだ。

要素6:動画の内製

コンテンツマーケティングに成功している企業では動画を内製しているケースが多いとMarcusはいう。動画コンテンツが簡単に見られるようになった今、テキストだけでなく動画コンテンツを充実させることは重要だ。理想的には、約8割を内製化できるようになると良いという。

要素7:計測し、ROIを共有する

最後のポイントが成果の共有になる。コンテンツマーケティングを成功させるためには、途中経過や得られた成果を関与者全員が共有する必要がある。リードジェネレーションの状況、売上に対するコンテンツの貢献度、売上、顧客からの声などをまとめたニュースレターを関与者に配信することが有効であるとMarcusは締めくくった。(プレゼンの途中ではあったがここで時間切れで終了となった。)

当サイトでも何度か取り上げてきたが、マーケティングコンサルタントとして活躍するMarcus Sheridanはコンテンツマーケティングの発展に多大な貢献をした人物の一人だ。Marcusが経営していたプール設置会社River Pools and Spasの危機をコンテンツマーケティングで立て直した逸話は、何度聞いても感動する。感情が入りすぎていつも時間オーバーとなり、尻切れとんぼになってしまうのが玉に瑕ではあるが、コンテンツマーケティングとは何かを知るのに彼ほど適切な人物はいないだろう。興味があればRiver Pools and Spasのコンテンツマーケティングについてまとめた、下記の記事も読んでいただきたい。

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執筆:渡辺一男

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