【インタビュー】Robert Rose氏に聞く(4)「ZMOTとコンテンツマーケティング」

“ZMOT”時代におけるコンテンツはどうあるべきか

Googleが提唱している新しい消費行動の概念“ZMOT(Zero Moment of Truth)=購買前の決定的瞬間”が注目されています。このZMOTとコンテンツマーケティングに関連性はあるとお考えですか?

ええ、もちろんあると考えています。

では、コンテンツマーケティングにおけるZMOTの考え方を教えて下さい。

正確な数字は忘れましたが、現代の消費者は購買前に約10の接点を必要とすると言われています。これがいわゆる「購買前の決定的瞬間」です。ここで重要なのが、その瞬間に顧客の興味をいかに引きつけるか。ウェブサイトやSNS、YouTube…何であれ、人々が注意を払うのはわずか5秒と言われています。その極めて短い間に、商品を印象付けなければいけないのです。そのためには、まずコンテンツが他に類を見ないような、素晴らしいものであることが重要です。顧客が購買前に接する10の接点すべてで優れたコンテンツを用意すれば、顧客を引き込む可能性は高まります。さらに、コンテンツ一つ一つのクオリティを向上させることで、次の購買プロセスへ進むための接点を、10個から9個、8個、7個…と減らすことができれば、より理想的です。

しかしながらZMOTは、検索偏重の概念という印象があるのですが、この点についてはいかがでしょうか?

確かに多少そういう傾向はあるでしょうね。しかし、過度のSEO対策によるノイズの多い検索結果や、リスティング広告が増えたことで、今日の検索はあらゆる意味において破綻しています。また人々はソーシャルネットワークで得た情報を利用して、検索ワードを絞るようになりました。この傾向に気づいたGoogleは、自らのアルゴリズムを変更しはじめたのです。このような状況の中で今、必要とされているのは、説得力があり、人の心をつかんで離さないクオリティの高いコンテンツなのです。
では、ZMOTにおけるコンテンツとはどうあるべきか。とにかくコンテンツの量で勝負という従来のSEO対策的な考え方もありますが、これは間違っています。それよりもコンテンツの質を重視し、どうすれば創造的かつ説得力のある伝え方ができるのかに注力すべきなのです。人々を引きつけることに成功したコンテンツは、間違いなく人々の購買行動を促進するからです。

例を挙げましょう。とある企業が、SEOのキーワードとして、業界内で既に人気のあるものではなく、その企業が将来性を感じ、今後力を入れてこうと考えているものをキーワードに選びました。そしてそれに合わせたコンテンツも豊富に用意したのです。どうなったと思いますか?人気ワードを無視したことで、オーガニック検索からのアクセス数は30%程度減少しました。しかし新しく選定したキーワードをもとに作成したコンテンツは、その検索結果で非常に高くランクされるようになりました。そして、コンテンツから流入した顧客は、その企業への理解も深く、非常に質の高い顧客だったので、結果的には売上が上昇したのです。

コンテンツマーケティングにおける紙とデジタルのバランス

ZMOTにおいても、コンテンツの力が大きいことがよくわかりました。ZMOTはデジタルメディアに焦点を当てた概念ですが、コンテンツマーケティングではデジタルだけでなく、紙メディアなど様々な媒体を取り入れています。コンテンツマーケティングにおける紙とデジタルのバランスについて、意見をお聞かせください。

よく言われる「紙メディアの時代は終わった」というのは間違いだと思います。それよりも今後一層、貴重なものとなるでしょう。私事で恐縮ですが、私が加入している保険会社から送られてくる月刊誌が素晴らしいんですよ。美しい写真と興味深い記事が手触りの良い紙に印刷されていて、毎月読むのを楽しみにしています。この雑誌の存在が、私をこの保険会社に対して一層忠実にさせているのは間違いありません。このように、紙メディアならではの効果というのがあるのです。今日では紙メディアのみならず、ラジオの評価も低くなりつつありますが、ラジオが効果的な場合もありますし、テレビだって同様です。要はコンテンツに即した適切なメディアを選ぶことが一番大事なのです。

皆さんに気をつけていただきたいのは、コストを抑えられる、という理由だけでデジタルメディアを選ぶのは間違いだ、ということです。コストをかけず、コンテンツを戦略的に展開することなく終わるケースをよく見かけますが、それは結果として、コストを下げているのではなく、クオリティを下げているだけにすぎないのです。

“ファネルの下半分”を育てるコンテンツマーケティングの成功例

それは日本の企業も考慮すべきことかもしれません。日本のマーケティングは、認知と売上に重点を置いていることが多く、“購買ファネルの下半分“では何も起こってないことが多いのです。

購買ファネルの下半分に注力してもらうための、好例を挙げましょう。私の担当するあるソフトウェア会社は、購買ファネルの一番上、つまり認知に焦点を当てました。そのため、検索エンジン最適化を利用して多くの人を引き込んで取引をまとめたい、ということで購買ファネルの下の部分には重点を置きませんでした。コンテンツマーケティングは、検索を使って認知度を上げる手法に比べて倍のコスト、倍の時間がかかるからです。

Robert Rose氏の考える購買ファネル

しかし、部分的にコンテンツマーケティングを実践し、この会社が顧客のライフサイクル全体を評価し始めた時に驚くべきことが判明しました。コンテンツマーケティングで育成した顧客は、その他の顧客に比べて倍の金額を使い、倍の期間を顧客として過ごし、5倍の確率で情報を共有する、ということがわかったのです。つまり、時間とともに、彼らは会社にとって一層価値のある顧客になったのです。一方、検索で得た顧客は、すぐに去って行きました。

このことからわかるように、“購買ファネルの下半分”の部分に時間とコストをかけることで、時間と共により価値のある顧客基盤を築いていくことができるのです。

小さな成功体験を繰り返すことで、コンテンツマーケターとして成長する

ありがとうございます。では最後に、日本の皆さんに対してメッセージをお願いします。

皆さんに理解していただきたいのは、コンテンツマーケティングを導入すれば、あらゆる施策の効果を高めることができる、ということなのです。広告、ダイレクトメール、インターネットマーケティング、テレビ広告、販売…、様々な施策のすべてを改善する手立てとなりうるのです。

ではどのように始めればいいか?まずは小さなことから始めることをおすすめします。既に取り組んでいることから手を付けるといいでしょう。小さなことから始めて、効率が上がってきたら余力で次のステップに挑戦してみてください。そして次へ、次へと進むのです。ここで注意したいのは、一気にやらないこと。小さステップを積み重ね、繰り返すことで次第にコンテンツマーケターとして成長できるのです。だまされたと思ってやってみてください。きっとその成果に驚くと思いますよ。大企業であるかのように振舞いたい中小企業、他の大企業に差を付けたい大企業…コンテンツマーケティングは競合他社との差別化に役立ちます。根気がいる作業ではありますが、長い目で見れば必ず成果がでるでしょう。アメリカから、皆さんの成功をお祈りしています。

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以下はアメリカでコンテンツマーケティングが盛り上がり始めた2012年に行ったインタビューの記事です。コンテンツマーケティング初期の記事なのでこれからコンテンツマーケティングについて勉強したい方に分かりやすい内容になっています。

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